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2011年1月23日日曜日

グリーン・ホーネット (3D)

(THE GREEN HORNET)

 昔懐かしい──と云うか、コミック以前のラジオ番組で誕生したヒーローものの映画化である。過去何度かTVドラマ化されたりしてもいるが、発掘するにしても古すぎるのではないか。
 同様のラジオ番組からのヒーローものとしては、アレック・ボールドウィンの『シャドー』(1994)とかありましたが、あれはイマイチだった。
 まあ、覆面ヒーローの元祖と云えば元祖なんだが。

 例えて云うなら仮面ライダーやスーパー戦隊ものが全盛の御時世に『月光仮面』や『怪傑ハリマオ』を映画化するようなものである。大丈夫なのか。
 リニューアルするにしても、余程巧くやらないと。
 製作発表のときには大して期待はしていませんでした。

 監督がミシェル・ゴンドリーだしなあ。
 『恋愛睡眠のすすめ』とか『僕らのミライへ逆回転』とか、オムニバス映画『TOKYO!』の中で短編を撮っていましたが、基本的に「少し・不思議な」映画を撮る人というイメージで、バリバリのヒーロー・アクション映画なんて撮れるのかと心配でした。しかもフランスの人ではないか。
 フランス人監督にアメコミ的アクション映画が撮れるのか?

 結論から云うと、悪くはなかった。
 ちょっとオフビートなコメディ・タッチも健在でしたが、それ以上にちゃんとしたアクション映画になっていた。

 一言で云うと「ダメなバットマン」という映画。
 資産家で大新聞社の二代目社長で、表向きは遊び人を装い、夜は悪党退治の覆面ヒーロー……って、まんまバットマンではないか。いや、バットマンがグリーン・ホーネットを基にしているだけなのですが。
 しかし映画化作品としてはバットマンが『ダークナイト』で行くとこまで行っちゃった感じがする現在、今更『グリーン・ホーネット』でもあるまいと云われても仕方ないわな。

 そこでバットマンの逆を突く設定。
 ダメな二代目社長は本当に遊び人のダメ野郎で、ブルース・ウェインのように演技しているわけではなかった(笑)。
 必然的に助手のカトーが実に有能で、スーパーな人になってしまった。
 もうバットマンの助手ロビンが、執事のアレックスまで兼ねているようなものである。実際、カトーがいないとホーネットは活躍できない。

 しかしカトーには悪党退治をする動機がない。加えて才能はあれど資本がない。
 そこで「金はあるし、やりたい気持ちは人一倍だが、実力が伴わない」主人公とのコンビが誕生すると云う次第。コンビの間で意見が食い違ってケンカしたりもするのも現代風ですな。
 このあたりの原作としては古くさい設定をリニューアルするのに苦慮しているのが伺えます。人種的な差別表現にも通じかねないし。

 製作と脚本も兼ねたセス・ローゲンが、主演俳優が見つからないまま自分で主役まで演じてしまっておりますが、なかなかイイ感じである。ダメな主人公がそのままで終わらない物語なのも巧い。

 かつてはブルース・リーが演じたカトー役にはジェイ・チョウ。もはやカトーは中国人決定なのか。原作では日本人で空手の達人だから「加藤」だったのに、第二次大戦が始まった為に、韓国人と云う設定に変更され、戦後はブルース・リーが演じて中国人になり、そのまま固定されてしまった。
 しかし中国人俳優に演じさせながら、役名は相変わらず「カトー」と呼ばれるのでは中国の人には屈辱ではないのか。日本人に戻してくれ。

 「生まれは上海だ」
 「そうか。俺も日本は好きだぜ」

 ──と云う、ギャグな会話がありましたが、中国人にはますます国辱ものであろう。それとも本当にアメリカ人にはアジア諸国の区別が付いていないのか。

 主演コンビがあまり有名ではない反面、脇役と敵役が豪華である。

 キャメロン・ディアスがこんな映画に。しかも実に楽しそうだ(笑)。
 主役のホーネットがダメ人間になっているので、技術面でのサポートがカトー、作戦参謀がキャメロンという役割になっている。表向きは社長秘書。役割分担的には巧い分け方ではある。

 LAを牛耳る暗黒街のボスがクリストフ・ヴァルツ。『イングロリアス・バスターズ』ではナチ将校でオスカーを獲りましたが、今回はギャング役。「フツーのおじさんのような人が平気で人を殺しまくる」と云う役をやらせたら巧いですね。それだけにコミック的なインパクトに欠けるのは仕方ないが……。
 頑張ってデザート・イーグルを二丁拳銃にして撃っているが、かなり無理があるような。しかも片手に一丁ずつではなく、デザート・イーグルを二丁くっつけて「ダブル・バレル仕様」にした化け物拳銃である。ここだけマンガ的(笑)。

 ダメな社長に代わって新聞社を支える頼りになる編集長がエドワード・ジェイムズ・オルモスである。『ギャラクティカ』のアダマ艦長。頼れるオヤジを演じさせたらトップクラスであろう。
 『マイアミ・バイス』の署長役の頃から、個人的な親日派で、ドラマの中に日本刀を持ち込みたがる人でしたが、今回の編集長は日本刀を抜いてはくれなかった。是非、続編では日本刀を。

 ホーネットの愛車〈ブラック・ビューティ〉も、昔ながらのクライスラーにしているのは、オールドファンには嬉しいでしょう。バリバリのアメ車である。改造していなくても戦車のようだ(笑)。
 このあたりのデザインの匙加減が難しいですね。

 テーマ曲は昔ながらのメロディをきっちり流してくれたのが嬉しい。
 とりあえず第一作として、グリーン・ホーネットの基本設定が完成し、態勢が整うまでが描かれるという続編前提な物語ではありますが……。続編はあり得るのか。キャメロン・ディアスは続編にもちゃんと付き合ってくれるのか。
 やっぱりちょっと心配である。

 そこそこ頑張って作りました的な好印象ではありますが、個人的には『バットマン』があるから無理して作らなくても良かったような気はします(汗)。
 それと意味のない3D上映は止めた方がいいぞ。
 オープニングとエンドクレジットが一番、飛び出して見えると云うのは如何なものか。


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