2010年8月21日土曜日

カラフル

(Colorful)

 サンライズ製作のアニメです。ホンマかいな。
 ごく普通の家族のドラマであり、実写で撮影される方が手間も掛からないし、わざわざこのドラマをアニメにする意味が判りません。
 外国では間違いなく実写ドラマ化でしょう。あえてアニメにする方が手間も掛かるし、客層を間違えると誰からも観てもらえなくなるだろうに。
 そう考えるとかなり野心的な試みではあるのか。

 一度死んだ人間がセカンドチャンスを与えられ、現世に戻ったのはいいが、蘇生してみると自殺未遂の冴えない中学生としてだった──。
 何故、こんな中学生に?
 そもそも自分は誰だったのか?
 それを思い出すのが「修行」である、と天使は云う。

 基本設定が何やら『トワイライトゾーン』というか、NHK少年ドラマシリーズぽいなあ(笑)。SFの一形態ではあるのでしょうが、ここから先は限りなく『中学生日記』なドラマでした。

 アニメではフツーの日常を描く方が難しい。
 もう、見事なまでに一般的小市民の生活が完璧に描かれています。いや、ドラマ上は登場人物達の葛藤とか、色々あるのですが、学校の様子、クラブ活動、家庭環境、食事の様子、いちいち実に見事なまでにフツー。

 監督は原恵一ですね。
 『クレヨンしんちゃん』の劇場版諸作品──「オトナ帝国の逆襲」とか「アッパレ! 戦国大合戦」とか──で高い評価を得ておりますな。この監督は丁寧な日常描写が得意なのだそうで、云われてみると納得。
 そして今回は「丁寧な日常描写」のみで一本まるごと作ってみましたという感じデス。

 原作は直木賞受賞作家の森絵都。まぁ、最近は一般的作家が「少し・不思議な」SFも書くものですから(笑)。
 しかし、どうも原作にない要素まで監督はアニメに投入しているらしい。
 原作を読んでいないのですが、アニメでは背景が完全に実在の場所になっている。

 双子玉川近郊の住宅地、という設定。それも自由が丘や田園調布なんぞというオシャレな住宅地ではなく、どっちかというと用賀とか溝野口あたりでしょうか(ローカルな話題ですみませんね)。
 背景も完全に現地ロケしてきたであろう風景がリアルに登場します。あまりにもリアルで、一部はロケ地で撮影してきた写真をCGで処理しているのがはっきり判る。これは手抜きなのか? それとも手間の掛かる処理なのか?
 そしてちゃんと東急田園都市線が走っている。双子玉川駅前が工事中だった背景は、ロケしたときにはきっとそうだったからなのでしょう(笑)。

 廃止されたローカル線「玉電」まで出してくる辺り、あまりにも地域に特化したネタは監督の趣味らしい。別に登場人物に鉄道マニアがいるわけではありません。
 一般的中学生が、自分たちが住んでいた街にはかつて小さなローカル線が走っていたのだと気付いて、街の歴史に思いを馳せる──という演出ですね。
 こういうエピソードが挿入される所為で、ますますリアルになります。
 なかなか悪くないです。

 起用された声優さんも若手の俳優さんが中心。冨澤風斗はアニメにも出ていますが、宮崎あおい、南明奈、入江甚儀……。個人的には馴染みのない俳優さんが多いが、違和感はありません。
 ジブリ製作のアニメなんかでは、あまりにも有名な俳優を起用しすぎて、話題性は高いのでしょうが、肝心のドラマと声がさっぱり馴染まないという、実に哀しい現象に遭遇したりしますが、ここではそれはありません。
 主人公の両親役も高橋克実と麻生久美子。実に自然です。
 特に南明奈がいい。クラス一の美少女だが、実は精神的に不安定という役が巧い。

 唯一、違和感アリアリなのは……。
 まいける。
 「子供の役」を子役にやらせる時に特有の、なんちゅーか「やるせなさ」と云うか、台詞の棒読み感と云うか(爆)。
 まぁ、他人には見えない天使の役ですからな。完全に日常描写から浮きまくっているのも、ひとつの演出方針なのだろうとは思いますが……。

 そこんとこだけ我慢すれば(笑)、役者の演技には問題はないでしょう。
 背景もリアルだし、作画の乱れもないし、演出も巧い。

 まぁ、唯一の欠点──これは観ている客の問題なのだと思うが──は、容易くネタバレしてしまったという点ですかね。
 俺が悪いのか?
 あまりにも予想したことが、本当にヒネリなしでその通りだったのが、軽く興醒めでした。
 いや、まあ、ミステリー映画じゃないし、マニア向けに作っているドラマじゃないのは重々承知の上ですが……。

 ついでに云ってしまうと、──本筋ではありませんが──ドラマの前段になる〈魂の救済システム〉について、あまり考えられていないという印象を受けました。
 そりゃまあ、主題は「生きていることの素晴らしさ」というか、「人生、前向きに行きましょう」ということなので、蘇生する前の段取りなんかどうでもいいことなのでしょうけど。

 ドラマでも冒頭の「おめでとうございます!」という台詞に集約されているように、完全に無作為抽出で選ばれたかのような印象を受ける。が、真相は違っていて、主人公が選ばれたのには理由があるのである。
 それはそれでいいのだデスが……。

 だったら何故、他の──(自主規制)──にはセカンドチャンスが与えられないのだ?
 なんとなく「天国も不公平なことしているなあ」という印象は否めない。こんなこと気にするのは俺だけですか?
 うーむ。フツーの直木賞作家にSF的設定の緻密さを求めるのは無理なのでしょうか。




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