2010年8月14日土曜日

魔法使いの弟子

(THE SORCERER'S APPRENTICE)

 もうジェリー・ブラッカイマーはディズニー関連のネタを片っ端から映画化しているように見受けられますね。今度は『ファンタジア』の、あの有名エピソードを映画化ですか。
 もうほとんど原形を留めぬまでに換骨奪胎しておりますが(笑)。

 一応、中盤で魔法を使って部屋を掃除しようとする場面があります。ちゃんとあの音楽をかけ、モップの軍団がバケツリレーしながら部屋中を水浸しにしていく。ここを外しては「魔法使いの弟子」とは云えませんからね。
 でも本筋とはまったく、これっぽっちも関係ありませんが。

 物語はいきなり壮大な設定をナレーションで全部説明するという、実にありがちな導入部から始まってしまいます(笑)。

 西暦740年ブリタニア。善の魔法使いマーリンと、悪の魔法使いモルガナの対決から幕を開ける。アーサー王伝説とニアミスしながら、とりあえず登場するのはマーリンとモルガナだけ。
 マーリンには三人の弟子がいたが、一人が裏切った為にマーリンは倒されてしまう。もう一人の弟子の犠牲で何とかモルガナは封印され、死に際にマーリンは最後に残った弟子に〈後継者〉を探すよう云い残す。
 来るべきモルガナの復活に備え、真に敵を滅ぼせるのは選ばれし〈後継者〉のみなのだ。
 かくして最後に残った弟子──ニコラス・ケイジ──の長い長い探索の旅が始まったのであった。
 そして千年以上が経過し、現代NYで繰り広げられる魔法大戦争……。

 どこかで聞いたような設定がてんこ盛りな、凡庸な超大作ですねえ。テキトーな設定をあっちこっちからかき集めて繋ぎあわせながら、これがまたビミョーに巧くまとまっているというのが癪に障る。実はそこそこ面白かったので(汗)。
 ニコラス・ケイジとブラッカイマーの組み合わせで、しかも『ナショナル・トレジャー』のスタッフが揃っている時点で、それなりの出来は保証されたも同然ですか。

 CG特撮も見事です。
 フツーの映画ならクライマックス並のドラゴンとのバトルが前座扱い。
 しかし大都市上空に巨大な魔法陣を描く──というのは、既にアニメで何回もお目にかかったイメージなのですが……。やっぱりこういうのもジャパニメーションの影響なのかなあ。

 難を云うなら、映画には付き物の「尺の都合」と云うヤツか。壮大な物語を二時間以下に収めるのは結構、難しい。
 敵の魔法使いも数人登場するものの、ほとんどセリフ無しに使い捨て。勿体ない。特にアビゲイルちゃんにもっと出番を!

 他にも、主人公が〈後継者〉に選ばれる理由が最後まで無いまま。ただの偶然。そういうものだ、で押し通してしまう。
 他の映画でも時々お目にかかるが「選ばれし者」という設定は、どうなんですかね。この設定がある限り、主人公に努力は不要なので気に入らないのですが。ご都合主義の臭いがプンプンする。

 主人公はいきなり〈後継者〉に指名される。理由も分からぬまま魔法使い同士の戦いに巻き込まれていく。それはいい。
 途中で運命を受け入れ、魔法使いの修行を開始するのですが……。
 いかんせん修行自体のシーンが少なすぎる。
 その結果、大した努力もしないうちに最終決戦になだれ込む。

 主人公は未熟なのでニコラス師匠からもらったアイテムが無いと魔法力を発揮できない。しかし敵にアイテムを奪われてしまう。

 まぁ、いろいろあるんでしょうけど。
 「アレが無いとダメなんだ」と云いながら、ぶっつけ本番でアイテム無しで魔法力を発揮するてのは、いかにもイージーに過ぎるのでは。
 好意的に解釈すれば「火事場のバカ力」とか「やれば出来る子」だったと云えなくもないが、せめて伏線だけはしっかり張ってほしかった。

 こういうイージーな感覚が「どうせ正義が勝つに決まっている」とか「ディズニー映画なんだし、助かって当たり前ぢゃん」などという観客のダラけた態度を引き出してしまうのですよ。そしてそれがまたフィードバックされて「観客はハッピーエンドを望んでいるのだから多少強引でも構わない」という、製作側の姿勢に反映され、以下果てしなくスパイラルしていくのであると思うのですが……。

 まぁ、主人公が勝利するのは悪い話じゃないので、段取りはキチンと踏んでほしいというだけなんですがね。

 ちょっと面白いのは、主人公が物理ヲタクで、魔法も実はある種の科学なのであると察する場面が、SF者に対するくすぐりを感じます。
 未熟な魔法力を科学知識で補完する、というのが──よくあるネタではあるが──面白かったデス。
 自分には敵を倒せるほどのプラズマ球を作り出すことは出来ないが、NYの大都市電力を借りれば可能となる、というのが頭いいと云うか、それって盗電なのでは……(笑)。

 しかしニコラス師匠直伝のプラズマ技は、どう見ても〈カメハメ波〉のポーズなんですけど……。コミック好きのニコラスが『ドラゴンボール』を知らない筈ないし、やはり確信犯的オマージュなのであろうか。

 ところでブラッカイマー製作らしく、これもまた続編を臭わせるエンディングになっています。ああ、もう三部作化決定ぽいなあ。
 モニカ・ベルッチやアルフレッド・モリーナはちゃんと続編にも付き合ってくれるのだろうか。

●余談
 ディズニー・アトラクションの映画化としてはギレルモ・デル・トロ製作による『ホーンテッド・マンション』のリメイクが進行中らしいが……。エディ・マーフィはもう出ないか。
 この調子ではいずれ〈イッツ・ア・スモール・ワールド〉もスペクタクル・アドベンチャー巨編にされてしまうみたいで怖い(笑)。


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