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2010年7月16日金曜日

トイ・ストーリー3

(TOY STORY 3)

 今年公開された夏のアニメの中ではダントツ、ブッチギリでありましょう。と云うか、今年公開の中でもベストですよ。

 これは大人の方が泣く映画。
 シリーズ化され、続編の続編であるにも関わらず、これほどの作品に仕上がるとは信じられません。『1』よりも『2』、『2』よりも『3』の方が面白いという希有なシリーズですね。
 前作を知らなくてもちゃんとキャラの関係が判るように考えられているのが巧いです。特にアンディとおもちゃ達の関係を説明するのに、親が撮ったホームビデオを使う演出が素晴らしいデス。
 画像の粗いビデオ画面の中で楽しげに遊ぶアンディの姿と、大学進学を目前に控えて寮生活の為に引越の準備をしているアンディの対比がいい感じ。

 シリーズを通して観ていると、あの少年がこんなに成長したかと感慨深くなります。それを云うなら、『1』では赤ん坊だった妹のモリーが、『2』ではよちよち歩きを始め、そして『3』では遂に兄貴に憎まれ口をたたく少女にまで成長している。うわぁ。

 「なぁに、兄貴。まだこんなおもちゃ持ってたの?」
 「うるさいな。勝手に俺の部屋に入ってくるなよ」
 「へっへー。あと三日で〈アタシの部屋〉だもんねー」

 アンディがおもちゃ達の処分に悩みまくりなのに、妹の方はというと、特に悩むことなくバービー人形をあっさりゴミ袋に放り込む。決断、早ッ。

 他にも時の流れを感じさせる設定として、何人かのおもちゃ達は既にいなくなっている。アンディと恋仲だった〈羊飼い人形〉ボウは、余所のおうちにあげられたらしい(そりゃ、高校男子の部屋に〈羊飼い人形〉はアリエナイよな)。
 他にも、グリーンの兵隊人形達は人数がめっきり減ってしまっている。
 戦死したらしい(爆)。

 部隊の人数が激減し、補充兵もなく、自暴自棄になった兵隊さん達のセリフがベトナム従軍兵にだんだん似てきている。

 「ゴミ袋が送られてきたら、俺たち兵隊が真っ先に入れられるんだ」

 なんか『プラトーン』で聞いたような台詞。しかも本当に「ゴミ袋」だし。

 おもちゃ達にとっては「屋根裏部屋での待機」に最後の希望を託し、あわよくば「将来はアンディの子供達と遊ぶ」ことを夢見る絶望的な状況であります。しかしそれではドラマにならないので、おもちゃ達はママの勘違いから近所の保育園に寄付されてしまう。
 果たして、おもちゃ達に第二の人生はあり得るのだろうか──。

 映像的にもピクサーのCG表現の進歩には目を見張るものがありますな。
 特におもちゃ達の経年劣化の表現がいい。ところどころ色あせていたり、擦り切れていたりします。
 プラスチック製であるバズの透明なヘルメットには細かいひっかき傷を付けるという芸の細かさ。
 全編にこうした「中古のおもちゃ達」という表現が行き届いております。

 実は件の保育園は、おもちゃ達にとっては地獄のような場所だった(笑)。
 年少さんクラスはそうでしょう。2歳から3歳あたりですからな。おもちゃの扱いも乱暴を極める。寄付されたおもちゃなので、対象年齢とか深く考えられずに配分されているのだった。
 一方、年長さんクラスは天国。4歳から5歳なので、おもちゃの扱いも丁寧。
 保育園に格差社会を見た!

 保育園というほのぼのした場所が、絶望的なディストピアとして描かれています。
 なんせ、おもちゃ達には序列があるのデス。
 組織に貢献し、ポイントを稼ぎ、認められたものだけが「年長クラス」へとシフトアップできる。しかし実はこのシステムはまやかしで、年長クラスのおもちゃ達が保身の為に考案したシステムだったのだ。
 なんかもう近未来SFを彷彿とするような描写で笑ってしまいます。

 脱走を図ったり、システムに反抗するものは「園庭の砂場」という独房に埋められ放置される。おもちゃにとっては寒くて細かい砂が充満する砂場は地獄らしい。

 「貴様、逆らうのか。もう一晩、砂場で過ごすか」
 「やめてくれ。砂場は勘弁してくれ。砂場は嫌だ。何でも云うこと聞くから」

 うーむ。実に怖ろしい(笑)。
 おもちゃ達を主人公にしながら、やってる内容はハードであるというギャップが笑えます。まぁ、基本はコメディですから。
 でもサルが怖いッ。シンバルを叩くサルの人形は、もうここだけはホラー映画並みに怖いッ(大人には笑えるけど、小さなお子様はマジ泣きするかも知れません)。

 そして保育園を支配しているのがクマのぬいぐるみである。かつて子供に捨てられ、それ以来、心がねじ曲がってしまった、ある意味、哀れな存在。
 この手の設定は昔も観た記憶がある『ユニコ/魔法の島へ』だったかな。子供に捨てられたおもちゃが恨みをつのらせて暴走していくという。

 昨年も『ホッタラケの島』というCGアニメがありましたが、あっちはどうだったのかなあ。観てません。あんまり話題にならないところを見ると、それほどでは無いのか。

 ふと気が付きましたが、これは「人間以外のモノに魂が宿っている」という物語ではないですか。ラセターさんはかなり日本人に近い感覚を持っているようですね。

 他にも「おもちゃの設定」が、実に巧妙に物語に組み込まれています。脚本を書く前に、ピクサーの構想会議では様々なアイデアが出されたそうですが、ただのネタに終わらせていないのが素晴らしい。やはり映画は脚本が第一だよね。
 特に〈バズ・ライトイヤーの仕様〉には笑いました。

 まぁ、何を云うにしても、ラスト・シーンに勝るものはないですね。
 号泣必至の別れの場面。ウッディとアンディに遂に別れが訪れる。

 「あばよ、相棒……」

 ああ。思い出したらまた泣けてきた。
 俺はアンディのようにおもちゃを大事にしてきただろうか。うう、ごめんなさいごめんなさい。捨てちゃったおもちゃの皆さん、ごめんなさいぃぃ(泣)。

●余談
 様々なおもちゃが登場する中に、今回は「トトロのぬいぐるみ」がいました(笑)。
 ラセターさんがオマージュを捧げたそうですが。
 ジブリ作品もメジャーになったもんだ。でも最新作はなあ……。




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