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2010年3月10日水曜日

渇き

(박쥐)

 ポン・ジュノ監督作品ではお馴染みのソン・ガンホ主演です。実は私はポン・ジュノ作品はよく観るくせに、パク・チャヌク監督作品は馴染みが薄い。
 と云うか、そもそも私はパク・チャヌク監督作品を観ていないのです。かの有名な〈復讐三部作〉──『復讐者に憐れみを』(2002年)、『オールド・ボーイ』(2003年)、『親切なクムジャさん』(2005年)──を完璧にスルーしている。ちゃんとこれらをフォローしていればパク・チャヌク監督作品にもソン・ガンホはちゃんと出演していると判るのですが。

 毎年、一定の割合で必ず制作されるというバンパイア・ムービーですが、韓国産とは珍しい。邦画でも今年は『彼岸島』がありましたがね。
 あとは『ダレン・シャン』も観ておけば、とりあえずOKか(笑)。

 聖職者が吸血鬼になる、というシチュエーションは取り立てて珍しいものではない、と云うかありふれてますね。
 しかしこの「良くあるネタ」を正面から直球勝負で描いてしまう手腕がスゴイですね。さすが昨年のカンヌで審査員賞を受賞しただけのことはあります。

 吸血鬼という設定も、特に宗教的なものや伝奇的なものは省かれており、「他人の血液で生命を維持する代わりに、絶大な身体能力を得る」点と「皮膚が直射日光に極めて弱い」という点のみが採用されている。割と現代的というか、生物学的に無理のない(?)範囲ですね。
 したがって十字架も平気(そもそも神父だし)、ニンニクも平気、コウモリに変身もしません。
 焼肉文化が盛んな韓国で、バンパイアがニンニクに弱かったらさぞかし生き難かろう(笑)。

 ある種のウィルスによる突然変異、という描写がリアルです。難病治療の実験台に志願した神父が、致死率の高いウィルス投与を経て、奇跡の生還を果たしたが、もはや人間ではなくなっていた……。ある意味、これはSFか。設定だけですけど。
 まぁ、生物学的な理屈付けよりも、恋愛ドラマとしての側面こそがこの作品の真骨頂なのですが。バンパイア・ムービーだからホラーかと思っていましたが、怖いところは全然ありませんでしたね。
 あ、いや。ショッキングな恋愛ドラマだし、怖いと云えばこれ以上ないくらい怖いか。別の意味で!

 とにかく男女の愛の葛藤を描いた作品としては凄まじい出来映えです。
 もともと韓国映画って、ドロドロした情念の演出には定評ありますが、これはその中でも群を抜いているでしょう。この愛憎劇はスゴイ。
 「吸血」という行為が持つエロいイメージを、韓流で追求するとこうなるのかという感じデス。

 それにしても女は男よりたくましい。いやホント。
 とにかくヒロイン役のキム・オクビンが素晴らしい。前半の薄幸さと、後半の開き直った大胆さで別人のようです。
 バンパイア化したことをクヨクヨ悩むソン・ガンホを尻目にハジケまくってました(笑)。

 あとは脇役ですが、ラ夫人役のキム・ヘスクがいい。『冬のソナタ』にも出演しているベテラン女優らしいですが、存じませんでした。そもそも『冬ソナ』観てねーし。
 『母なる証明』のキム・ヘジャもそうですが、韓国の年配女優はスゲー(笑)。

 二時間超の映画なので、気力があるときに観賞しましょう。

 本筋とは全く関係ありませんが、背景として韓国は日本よりもキリスト教の布教率が高いらしいというのが、何となく察せられて興味深かった。社会的に神父さんが割と尊敬を集めている様子とか、祈りの際の手の組み方が独特の作法らしかったり。

● 余談
 さて、こうなると〈復讐三部作〉も観ないとイカンかのう。
 何となく、独りで観るとドッと疲れてしまいそうで避けてしまいそうなのですが……。

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