2010年3月9日火曜日

プリンセスと魔法のキス

(The Princess and the Frog)

 ディズニーがピクサーを買収してしまい、どうなることかと思いましたが、結局のところジョン・ラセター氏がディズニー・アニメーション・スタジオの社長に就任して一件落着したようで。
 ピクサーと同じようにCGアニメを作っても上手く行くはず無いし、差別化できないじゃないか。

 で、ラセターさんがピクサーからディズニーに移って、まずやったのが手描きの2Dアニメへの復帰という方針転換。素晴らしいデスね。
 おかげでこんな傑作が誕生しました。
 今や、ジョン・ラセターはウォルト・ディズニーその人の再来であるとまで云われておるとか。
 今回はジョン・ラセターが製作総指揮を務めているので、ピクサーの『カールじいさんの空飛ぶ家』よりこちらの方が面白いと思うのですが。

 原作は……グリム童話だよな?
 基本設定以外をここまで大きく変えてしまうとは驚きデス。ディズニーはよく原作の設定を変更しますが。
 中世ヨーロッパの物語(だったよね?)が、何故か一九二〇年代のアメリカ、ニューオーリンズが舞台になったりする。ここまで変えてしまえば、いっそ清々しいと云うべきか(笑)。
 おかげでミュージカルのナンバーもジャズ。それもディキシーランド・ジャズだ。歌もゴスペルだし、気に入りました。

 そして王子様が邪悪な魔法でカエルにされてしまう……のは、その通りですが。ニューオーリンズだから、魔法もヴードゥー・マジック。これが巧い。
 悪い魔法使いと良い魔法使いが登場しますが、どちらも実にヴードゥ教ぽい描写が楽しいです。
 特に沼地に住む良い魔法使い、ママ・オーディが典型的な「南部のおばちゃん」であるのがいい。上映していたのは日本語吹替版でしたが、パンフの解説によると、南部訛り丸出しで喋っているそうな(笑)。

 ディズニーのアニメだし、当然のように動物キャラがいい感じです。
 キャラの名前が「ルイス」だったり「レイモンド」だったりするのは、やはり某有名ジャズ・ミュージシャン達へのオマージュか。

 ディズニー・アニメはキャラクターの人種的な描写がちょくちょく批判されたりしておりますが、今度はどうなんですかね。遂に主役がすべて黒人であるアニメが製作されたわけですが。
 おまけに今回はヒロインであるティアラの目標は「自分のお店を持つこと」であって「王子様との結婚」ではない。女性が結婚ではなく、キャリアの方を重要視するというのも、実に現代ぽい(物語は一九二〇年代ですが)。

 まぁ、何をどう作ろうと批判する人は批判するんでしょうねえ。
 たとえば、この物語で私が一番びっくりしたのは、ヴードゥ・マジックでもなければ、ヒロインまでカエルになってしまうことでもなく、ヒロインの親友の設定です。

 貧しい黒人家庭に育ったヒロインの親友は、ニューオーリンズ屈指の富豪の令嬢である(当然、白人)。一応、幼い頃はベビー・シッターに雇われていたヒロインの母親が、令嬢と自分の娘に絵本を読んであげている場面が冒頭にあり、成長してからも二人の交友が続いているという設定にはなっています。
 でも一九二〇年代のニューオーリンズで、黒人の娘と白人の娘がタメ口きいているのですよ。
 しかも令嬢の父親も、実にお人好しらしく描かれていて、なんとこの映画には「人種差別」の描写がない。全く欠落している。
 ものすごいファンタジー!

 楽しかるべきミュージカル・アニメにそんな社会的暗部を描いてどうする、とも思うのですが、実に有り得ないくらいハッピーなので、いいのかしらと思わないでもない……。
 黒人達の生活も、「貧しいけれど皆で助け合って生きてます」的な『三丁目の夕日』ぽく描かれていて、当然KKKなんて影も形も見当たりません。
 フツーなら、親友の令嬢の父親あたりはKKKの親玉くらいに描かれている筈なのでは。

 まぁ、楽しい冒険物語だし、野暮なことは云わない方がいいのか。

 クライマックスで、魔法を解くタイム・リミットが迫る中、ニューオーリンズの街で繰り広げられる独特なお祭り〈マルティグラ祭〉が実に南部らしくて、久しぶりに楽しい映画を観た気分なのですが。
 ニューオーリンズが舞台なので『007/死ぬのは奴らだ』を思い出してしまいました。

 ヒロインの料理が何回か登場しますが、「ガンボ・スープ」って南部の代表的な料理なんですか? なにやらタバスコがガンガン入っている真っ赤なスープなんですが、美味しいのかね(笑)。


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