邦画でこんなに出来のいいB級映画があるのかと信じられません。
原作は日本のコミックですが、監督が『火山高』(2001年)のキム・テギュンだから韓国映画か、良くても日韓合作だろうとも思いましたが、れっきとした邦画なんですね。
日本の製作会社からキム・テギュンに監督をオファーしたら引き受けてくれたそうな。
監督にセンスがあると邦画でもこんなに面白くなるのか。
石黒英雄や渡辺大といった若手俳優の出演作を観るのはこれが初めてですが、いい感じです。
これなら昨年のB級洋画にも対抗できる。『30デイズナイト』(2007年)や『ドゥームズデイ』(2008年)と比べても遜色なしでしょう(前者は未見ですが)。
ワーナーのロゴが付いてるところを見ると、海外配給も決まっているみたいです。
ネタとしては、よくある吸血鬼ムービーなのですが、間違っても「恋人がヴァンパイア」なんぞというラノベ映画ではありません。正当なB級ホラーです。
今どき「海図にも載っていない謎の島」なんて設定を臆面もなく堂々と披露する度胸が気に入りました(笑)。
そのくせ島の住民は日本語を話すし、旧日本軍の施設が島の至る所に残されて要塞化している。設定上のツッコミ処は、むしろお約束と云っていいでしょう。
細かいところはキニシナイ!
しかもくだくだしい説明は一切無し。
なんとなく「復活した吸血鬼は旧日本軍の生体実験の遺産だった」ような雰囲気はあるものの、説明はない。
とにかく吸血鬼化してしまった島民と、生き残った島民による二大勢力のバトル。それに巻き込まれてしまった高校生たち、という問答無用な展開が素敵デス。
しかも冒頭からしばらくは、主人公たちのキャラ描写に重点を置き、丁寧で判りやすい作りになっています。本筋の彼岸島に到着するまでの描写にかなり比重を置いていますが、これが後の展開を理解する伏線にもなっていて、脚本も巧い。
そして肝心の吸血鬼のボスが山本耕史!
これがまたイカス。名前が「雅(みやび)」と云うだけあって、実に優雅な美形ヴァンパイアを演じております。
あとはもう、画に描いたような少年バトル漫画の展開。B級はこうでないとイカン。
惜しむらくはCGがまだハリウッドに一歩及ばないところですが、これは贅沢すぎる望みでしょうか。日本の特撮としては水準以上です。
ホラー活劇としてのテンポを第一に考えた演出なので、色々と説明無しに突っ走っていますが、ヘタに解説されるよりこっちの方がいい。
原作コミックはかなり長大。鑑賞後、書店で大人買いして一気に読もうかとも思いましたが、映画化記念の最新刊が第三〇巻。購入断念。
今回はどのあたりまで映画化されているのでしょうか。
原作はまだまだ続いているし、映画のラストもB級のお約束──実は終わっていない──なので、続編、続々編と制作されてもおかしくはありません。
先日観た『アサルトガールズ』があんまりだったので、余計によく見えます。比較してはイカンですか。エンタテインメントとはこういう映画なのだと、押井守に教えてやりたいものです。
● 余談
……とは云え、原作コミックについて無知だった為に、あの戦闘シーンが「丸太を使ったギャグ」であるということを後日、友人からの指摘で知りました。
「丸太」と云うのがお約束のギャグであるそうな。
ええ、確かに主人公のお兄さんは、丸太で吸血鬼の頭部を潰していましたね。
そこまでしないと吸血鬼は倒せないのかと思っていましたが、あれは趣味でやっていたのですか(笑)。
云われてみると、あの丸太はどこから取り出したのかなあ。その辺にあったものを拾い上げたような演出でしたが、そんなに都合良く丸太が落ちている筈もないし……。
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