絢爛豪華なウソ時代活劇。時代考証、完全無視(笑)。
紀里谷和明監督の映像センスは素晴らしい。それは前作『CASSHERN』の頃から判っている。もう凝りに凝りまくったCG全開の背景、シェイクスピア劇調の豪華衣装は美術品かと見紛うばかりである。
特に「悪の巨大帝国要塞〈大阪城〉」が凄い。さすが太閤はん(爆)。
〈大阪城〉と対をなすのが、「正義の大聖堂〈安土城〉」。
どちらも変形して空中要塞にでもなりそうな勢いのデザイン。
もう、ホラもここまで吹けば立派である。
まさに「絶景、絶景」。
ただ……。
よくあることですが、視覚デザインが素晴らしい作品は、何故か脚本力が弱い。
これもなぁ……。
物語の焦点が定まらないと云うか、もっと短くまとめられなかったものかと残念至極であります。
謀反人明智光秀と太閤秀吉の密約を証明する連判状を巡って火花を散らすニンジャ・ウォーズ(断じて「忍者」ではない)。
もうリアルさの欠片もないが、アニメ的ノリと勢いだけはあるチャンバラ。ニンジャなんだから、数十メートルの跳躍くらい当たり前(笑)。
石川五右衛門、猿飛佐助、霧隠才蔵、服部半蔵等々の有名ニンジャが……って、あれ? 石川五右衛門は忍者だったのか?
しかも才蔵とは、少年時代から服部半蔵の元で修行した親友同士……すごい解釈だよなあ。
石川五右衛門が登場する時代劇というと『梟の城』が思い出される訳ですが、リアルさにこだわって詰まらなくなった『梟の城』なんかよりは破天荒な分、痛快ではある。
が、やっぱり長すぎる。
その上、物語の終点がさっぱり見えてこないのが困りもの。何が描きたかったのか判らないのである。
キャラの行動原理も御都合主義的で無理っぽい。一番、不自然なのは佐助である。五右衛門の相棒役ではあるが、ラストでコンビを解消する理屈が理解不能。まさに「あのラスト・シーン」を作りたいが為に、作為的にキャラを動かしているのが判る不自然さ。
一応、メインは五右衛門と茶々姫のラブストーリーぽい物語ではあるが、あのオチはないでしょう。あそこまで時代考証を無視しておきながら、ヘンなところで史実にこだわるのが理解できない。
本能寺の変から15年──と云うと1597年あたりが時代背景なんですが、まだ千利休が生きていたり、朝鮮出征がまだだったり、バテレン宣教師が追放されずにうろついていたり、茶々姫が秀吉の側室に入っていなかったり、関ヶ原の戦いが三年くらい前倒しで行われたり(笑)。
別に石田光成と徳川家康の決着なんて、どーでもいいでしょ。五右衛門と茶々姫の物語なんだから……。
いっそラストは史実完全無視のまま、五右衛門と茶々姫が手に手を取って幸せゲットだよ──という風に云い切ってしまえば良かったのに。
まあ、日本でも『300』なみのCG全開歴史スペクタクルが作れるのは判ったが、次は脚本をどうにかしてほしい。
いっそ脚本をフランク・ミラーに書いてもらえばいいのでは(爆)。
●余談
要潤の石田三成とか、広末涼子の茶々姫とか、中村橋之助の織田信長とか、キャスティングは豪華で素晴らしいのですが、やっぱり全員に関西弁で喋らせて欲しかった。特に奥田英二の豊臣秀吉なんかは関西弁の方がスケベオヤジぽくなって良かったと思うのだが(笑)。
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