2009年4月27日月曜日

フロスト×ニクソン

(FROST / NIXON)

ジョージ・W・ブッシュにその記録を破られるまで、最大不支持率66%という驚異の記録で〈最も憎まれた大統領〉の座に居座り続けたのが、リチャード・ニクソン。それに比べてもブッシュの、最大不支持率71%が如何に凄い数字か判ろうというものである。
将来、この記録も破られるのだろうか。そのときこそ『合衆国最後の日』のような気がするが(笑)。


ただの政治インタビューを、ここまでエキサイティングなバトルとして描くことが出来る、というのがまず驚きです。
元は舞台劇であり、脚本を書いたのが『クィーン』のピーター・モーガン。舞台劇も彼である。政治ドラマを面白く見せる手腕は大したものです。
今年のアカデミー賞に幾つもノミネートされながら、そのどれも逸してしまったというのが残念。脚色賞くらいあげても良かったのに。おかげでこの映画は無冠である。いい映画なのに残念。

主演男優賞にノミネートされながら、これまた逸してしまったのがニクソン役のフランク・ランジェラ。舞台劇から映画版まで、一貫して彼がニクソン役であったそうな。
オリバー・ストーンの『ニクソン』を観ていないので、アンソニー・ホプキンスとの比較は出来ないが、ちょっと観てみたいですねえ。
遠い昔、NHKが放送した『大統領の密室』なるドラマが記憶に残っている。あの強烈な大統領役は誰だっけ。ジェイソン・ロバーズか──最近はネット検索ですぐに判るので便利だわ。
ジェイソン・ロバーズは『大統領の陰謀』では記者役だったのか(爆)。

ともあれ、歴代ニクソン役者と比べても遜色ない(と思われる)のがフランク・ランジェラ。
ただならぬ存在感を振りまいています。これがカリスマと云うものか。
しかもドラマ上は、大統領辞任以降という設定なのに、この存在感。
まったく悪びれるどころか、政界復帰すら目論んでいるという──フツーの人は恥ずかしくてそんなこと出来ないよな。ある意味、凄い人だ。

このニクソンに挑むのが一介のTV司会者デビッド・フロスト。『クィーン』ではブレア首相役だったマイケル・シーンがフロスト。ピーター・モーガンとは相性いいらしい(笑)。これまた舞台劇のときから一貫してフロスト役。

さて、ドラマを盛り上げる秘訣は〈強大な敵〉の設定である、とは云うものの、ちょっとコレは強大すぎたか。
ニクソンへのインタビューという企画は良かったものの、どう見てもアリと巨人である。「手玉に取られる」という表現がまさにぴったり。ホントに勝算あったのかよ。
ウォーターゲート事件についての国民への謝罪の言葉を引き出したいフロストと、イメージ回復を狙って政界復帰へのアピールにしたいニクソン。
全4回のインタビュー企画で3回まで負けっぱなし。如何に鋭く切り込んでも、のらりくらりと躱されてしまう。格が違うのである。
この数回に分けて収録されるインタビューを、まるでボクシング試合のラウンドのように描いた演出が巧いです。双方の側近が中断の度にセコンドよろしく両側から駆け寄ってくる(笑)。
ケヴィン・ベーコンがニクソンの腹心であるジャック・ブレナン役だったりして、なかなかの悪党っぷりです。辞任している元大統領に、ここまで忠誠を尽くす男というのも敵ながら天晴れ。

そして起死回生の最終インタビュー。
勝利を確信していた男の、本当に些細な言葉から全てが瓦解していくシーンが圧巻です。
「い、いま……なんと仰いました?」
この瞬間のフランク・ランジェラのアップが素晴らしい。取り返しのつかない失言を悟った男の顔。遂に仮面が剥がれ落ち、精気がみなぎっていた顔に疲労と悔恨の情が押し寄せてくる。名演技だ。

結局、リチャード・ニクソンという人物はそれほどの大悪党だったのか、という同情的にもなれる映画でした。道を誤らなければ偉大な大統領にもなれた男だったのに、という残念感の漂う人物として描かれていたのが印象的。
良き父親であり、良き夫であり、人脈も豊富で頭も切れて、最後まで運命を共にしてくれる忠義の部下までいながら、何故にあんなことを。

悔やんでも悔やみきれない悔恨に責め苛まれていた男。
実は誰が許そうと、自分が一番、自分を許していなかったのだというのが伺える人物でした。ちょっと尊敬。え、ニクソンを尊敬?
でも、それなら政界復帰なんか目論んじゃいかんだろう、とツッコミたくなる反面、政界復帰に成功していたら今度こそ国民の為になる政治家になったのではないか、とも思わせるような描き方でした。
ラストは、政界復帰を断念した後のニクソンの足跡がナレーションで流されますが、割と潔い人だったのねえ。
死力を尽くして戦った男同士の別れの場面は、まさにスポーツ映画のようでもありました。


Q: リチャード・ニクソンの最大の功績は何か?
A: それはウォーターゲート事件以後の、すべての政治スキャンダルに「~ゲート」と云う接尾語が付くようになったことである。

うーむ。そこまで虐めなくても……(汗)。


『ニクソン』>『フロスト×ニクソン』と続けて観れば、リチャード・ニクソンという人物を深く知ることが出来る……ような気がするが、何もそこまでして知りたくなるかというツッコミはなしね。


●余談
将来、フロストのような司会者がブッシュにインタビューするときがやってくるのだろうか。そのときは見事にブッシュから反省と謝罪の言葉を引き出すことが出来るのだろうか。
まず無理でしょう。大体、奴は反省していなさそうだし(爆)。


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