「どこがディックなんぢゃーいッ」 ……毎度のことですが。
パンフレットに大森望が解説を書いていた。SF映画のパンフには必ず解説の依頼があるのか(笑)。
それによると『ブレードランナー』以降、今回でPKD映画は9本になる。
最もディック度が高いのは『スキャナー・ダークリー』である。うむ。同意しよう。
『バルジョーでいこう!』(92・仏)のみ私は未見ですが、これがかなりディック度が高いらしい。ミニシアター系の公開だったのでDVD化もされてないわ。
観たかったなあ。
私としては『ブレードランナー』『トータル・リコール』『クローン』の三本が好みです。『スキャナー・ダークリー』はDVDで日本語吹替版にして観たら結構、面白かった(ちょっと評価が上方修正)。『マイノリティ・リポート』『ペイチェック』はまぁまぁ。
『スクリーマーズ』がイマイチで、これまで最下位をキープしておったのですが……。
今回、更にその下を行く作品が追加されました。多分、この先しばらくは不動の最下位をキープし続けることでしょう。
ディック度がどうこう云う以前に、映画としてこれはどうよ?
あのオチ。
〈2分先の予知能力しかない〉んじゃなかったの?
自分で架した設定をここまで堂々と無視して説明なしかよ。いいのか?
まぁ、アクション映画としては出来は悪い方じゃない。
監督がリー・タマホリだしな。でも『007/ダイ・アナザー・デイ』も「アクション」は上出来だが、ちょっとやり過ぎたトンデモ007だったよなあ。
この映画で最も私の目を引いた点は次の二つである。
その一。ピーター・フォークが出演している。
脇役で、どーでもいいようなチョイ役なんだけど、飄々とした燻し銀のような味わい深い場面でした(笑)。それにしてもコロンボ警部も完全白髪のお爺ちゃんか……。吹替時には必ず石田太郎にするように。銀河万丈にしたらコロス。
その二。ニコラス・ケイジの生え際の後退が著しい。
『ロード・オブ・ウォー』とか『ウィッカーマン』はやはりズラだったのか。
今回はどうもズラ無しのようだが、アクション映画の主役の頭髪がここまで寂しくても許されるのか?
いっそブルース・ウィリスのようにスキンヘッドにしてしまう方が潔いと思うのだが。
以上。
どうも作品の本質とは無関係の方面に注意が向くという時点で、既に落第のような気がする(笑)。
あとは『時計仕掛けのオレンジ』にオマージュを捧げた場面で(捧げてるよな、あれは?)笑えます。
まぁ、〈予知能力〉を駆使した演出はそれなりに頑張っていたし――ちょっと『マイノリティ・リポート』のパクリぽいけど――、クライマックスの映像表現はSF者でないと即座に理解できないほどSFしてました。
と云うか、これはグレッグ・イーガンの『宇宙消失』ではないか(笑)。
〈予知能力〉がかなり拡大解釈されて、量子宇宙論的〈多世界解釈〉にまで踏み込んでいましたが、アクション映画の演出にこれを使う、という点を評価したい。
ディックとはまるで関係ありませんけどね(笑)。
競演のジュリアン・ムーアがFBI捜査官役で、それなりに凛々しいお姿を披露してくれています。
が、〈2分先しか読めない予知〉でどうやってテロを防ごうとするのか、最後までその理屈が判らなかった。ある意味、トンデモ捜査官に振り回された感のある真面目なテロリストさん達が可哀想だなあ。
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