云いたいことは判る。
還暦ボクサーに続き、還暦戦士も遂に最後の戦場へ赴く。
この「還暦でも戦士」というのが凄い。ミャンマーの密林を本当に駆け抜けるスタローンの勇姿! 怖ろしい。
映画を観て判るのは国際的には、あの国はいまだに「ビルマ」なのである。劇中の地図にも「BURMA」と表記されているし、台詞も全て「ビルマ」。
クーデターによる軍事政権は国際的に認知されていないのだそうだ。日本の外交は弱腰だなあ。
日本語吹替版はどうなるのであろうか。玄田哲章には是非「ビルマ」と発声してもらいたい。
『2』以降、ベトナムから流れてランボーはタイに居着いてしまったらしい。
仏教の無常観が精神的に合ったのだろうか。
そこで川沿いの上流にいるビルマの山岳民族〈カレン族〉にキリスト教のボランティア団体が医薬品を届けに行く――というのが発端。なんでキリスト教かというと、仏教国の中でカレン族はキリスト教徒なのだ。遠い昔の宣教師達の成果やねえ。
他にも密林の中に転がってる不発弾――英国製――とか。これも歴史か。
昨今の映画はかなり歴史的なリサーチが行き届いている。実話ベースの作品が多いからか。まぁ『ランボー』は実話ではないが。
それでも冒頭のニュース・フィルムをコラージュした「ビルマ概論」の編集は巧い。ちょっとしたトリビア。
ビルマは第二次大戦終結後の六十年間ずっと内線が続いてる「世界一長い内戦が続く国」なのだそうだ。しかもまだ記録更新中。へぇ。
ともあれ今回は『3』のようなプロパガンダに陥ることない。純粋なアクション映画として楽しめます。R15指定でかなりグロい描写はありますが。
実際、今回はエグい。血飛沫、血煙、飛び散る手足、吹き出す臓腑がもうてんこ盛り。腐乱死体の描写も臭うようだ。
本当にこんな非道がまかり通っているのかと信じられないくらい残酷。
軍事政権の兵士達が少数民族の男を一列に並べて地雷ルーレットに興じる場面が凄い。水田に無造作に地雷を投げ込み、誰が死なずに田んぼの反対側まで行けるか賭けるという極悪ギャンブル。
ホントか、これ?
でもスタローン曰く、映画の描写は現実よりも生やさしい。うーむ。
『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』でもそうだったし、最近、立て続けに「手足のない子供たち」の映像を見せられてやり切れません。
しかもあれは特撮ではないだろう。地雷はもう勘弁して下さい(泣)。
今回はスタローンが監督・脚本・主演を努めています。なんか最近のスタローンは人生の総決算でもしているのだろうか。やり残したシリーズを自分の手で終わらせて悔いの無いようにしたいという意図が実にはっきり判る。
判るのだけど……今回ばかりは脚本までやらなくても良かったような。
リアルな描写に傾注する余りか、90分という尺の所為か、ちょっとね……。
筋書きがね、単調になってしまったのは否めない。今までだと「ランボーは一度、窮地に陥り、そして反撃する」というパターンがあったのだけど、今回はプロットに起伏が感じられない。そこだけが残念。
だから戦闘シーンは凄いのだけど、ランボー無敵のまま終わってしまう。
明らかにスタローンの狙いは戦闘よりも、ランボーの人生の方にある。
だからあのラストを迎えるのである。
このシリーズを見続けて良かったと思える、あのラスト。
さらば、ランボー。
うん。ちょっとだけホッとしました。
●余談
ところで、アフガニスタンを救ったのは本当はランボーではなく、チャーリー・ウィルソンなのだとすると……。ビルマを本当に救うのは誰なんでしょうね?
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