A : 1976年の作品賞が『ロッキー』で、監督賞がジョン・G・アビルドセンだったから。
ついでに云うと同年のその他の主要部門が『大統領の陰謀』と『ネットワーク』で占められていたから。スコセッシも運が悪いというか何というか……。
さて、今度はどうでしょうか。個人的には『ロッキー・ザ・ファイナル』もオスカーものだと思うのですが。
還暦ボクサー、最後の戦いである。
思えば三十年前、私は厨房もとい中坊だった。「映画館へ行って『ロッキー』を観てきたぜ」と云うのが教室でステイタスとなった時代であった。買ってきたパンフレットは教室内で回し読みされた。
卒業制作にロッキーのポスターの構図を真似た画を描くヤツが何人もいた(笑)。
昼休みと放課後に放送部は毎日「ロッキーのテーマ」を流しまくった。文句を云うヤツなど一人もいなかった(それはオーバーか。飽きた奴もいたからな)。
――という過去を踏まえた上で、劇場に足を運びました。
握る拳には力が入り、心が熱くなる。
シルベスター・スタローンよ、ありがとう!
ちなみに原題には『6』だとか『Final』だとかは一切、付きません。
これはあくまでも第一作『ロッキー』と対になる作品『ロッキー・バルボア』なのである。
『2』以降、なかんずく『4』とか『5』は「無かったこと」にしてしまいたい。忘れてくれ、というスタローンの思いがヒシヒシと伝わってきます(笑)。
公開前は、落ち目のスターがとうとう過去の続編に手を出したかと揶揄されておりましたが、実は大きな間違いです。この映画の素晴らしさは若い連中には判らん(実際、劇場内の客層はオーバー30間違いなし)。
ストーリーについての解説は無意味です。結末が判っていても構いません。
メイン・テーマが流れる「特訓シーン」もいつもの通り。外しません。
偉大なワンパターンは「判っていても感動させる」のである。避けることなど出来ないのである。
だからこそ「黄金のパターン」と云われるのでしょう。
おまけに、ロッキー・バルボアとシルベスター・スタローンの人生が重なって見えるので、感慨もひとしおなのです。
あのときの若き挑戦者がもう還暦。
だからこそ「人生、あきらめてはいかん。前へ進み続けろ!」という手垢の付いたクサい言葉にも感動してしまうのである。
六十を過ぎた身体が異様にマッチョというのは、ある意味、痛々しい姿である。
でも本当にそれだけのトレーニングを積んで撮影に臨んでいる。この説得力。
是非とも、観てもらいたい。
人生に疲れた俺達のための映画です。
やっぱり若い世代にはこの同時代を生きた実感が伴わないので、感動したとしても、それは我々が味わうものとはちょっと質が異なるのだろうなあ。
死闘を繰り広げるリングの上で、若いチャンピオンとロッキーが交わす言葉がいい。
「このイカれたジジイめ!」
「ああ。お前もそうなるぜ」
この映画を観ると無性に海外旅行に行きたくなります。どこへ行くのか。答は一つだ。 フィラデルフィア美術館前だ!
別に美術館に入らなくてもいいのである。
「あの階段」を駆け上がってガッツポーズを取りたいだけなんだ。その前に生卵をイッキ飲みするのは勘弁してもらいたいが。
『ロッキー・ザ・ファイナル』のエンドクレジットを観ると、あの場所が聖地と化しているのがよく判ります(笑)。
クレジットが流れていく横で、フィラデルフィアに来た観光客達が、次々に階段を駆け上っていく「お笑い映像」が素晴らしい。
男も女も、老いも若きも、パパもママも、恋人同士も、野郎共も、皆が「あの階段」を登ってにこやかにポーズする。ついでに美術館前でシャドウ・ボクシングや片手腕立てするバカ野郎たちもいます。
くそぉ。俺もやりてェ!
まあ、フィラデルフィア美術館自体が目当ての観光客の方には迷惑なだけかも知れなせぬが。マルセル・デュシャンの代表作を一目見ようと足を運んだ美術愛好家はさぞかし面食らったことでしょう(笑)。
もうひとつ、フィラデルフィアに行ったら海軍工廠にも寄りたい。アメリカ海軍はレプリカでいいから、駆逐艦エルドリッジ号を桟橋につないで浮かべておくべきだと思うのだがなあ。新たな観光名所になるだろうに(それは別の映画のハナシね)。
蛇足ながら公開に併せてサントラCDが二種類発売されています。
『ベスト・オブ・ロッキー』と『三十周年記念盤』。
お奨めは前者。後者はボーカル曲ばっかりなのでダメです。
やはりビル・コンティの「あのメロディ」を聴かないと!
3曲目の「ロード・ワーク」と8曲目の「熱い戦い」と9曲目の「エイドリアンの愛」が特にお奨めだ(観終わってすぐ買いましたが、それが何か?)。
ロッキー・ザ・ファイナル(特別編) [DVD]
ロッキー・ザ・ファイナル (特別編) [Blu-ray]
ザ・ベスト・オブ・ロッキー
ランキングに参加中です。お気に召されたならひとつ、応援クリックをお願いいたします。
にほんブログ村