2008年5月1日木曜日

紀元前一万年

(10,000 BC)

 当たり外れに振幅の幅が大きいローランド・エメリッヒ監督作品。
 『スターゲイト』や『ID4』は当たりの部類だろう。
 『ゴジラ』はビミョー(私は好きだが)。『デイ・アフター・トゥモロウ』も。
 『パトリオット』とかは観てないなあ……。
 総じて、エメリッヒってなんか大味だよなあ。

 さてこの『紀元前一万年』は、エメリッヒ作品の中でもダントツ、ブッチギリで最低作品と断言して差し支えありません。
 いやもう、なんというか……。

 この手の〈原始時代映画〉は実はあまり多くない。
 『恐竜一〇〇万年』とか『人類創世』くらいしか記憶にない……。
 パンフレットにもそれらの作品と比較した批評家のこんな文章がある。

>>---
 その後も似たような映画が何本か作られたが、いずれもイメージの固定した(中略)大人の鑑賞に堪えられるものではなく(中略)原始時代映画と云うだけでゲテモノ扱いされる傾向が強かった。
>>--

 えーと。この言葉は『紀元前一万年』にも完璧に当てはまります。
 見事なまでに「大人の鑑賞に堪えられない」のです。
 どの辺が〈本格的原始時代映画〉やねん。特撮が進化しただけやんけ。
 ここまで見事にゲテモノ、トンデモな映画だと、いっそ清々しいくらいである。

 予告編からしてトンデモ臭かった(笑)。
 マンモスは見事でした。サーベルタイガーや、フォロラルコス(恐鳥)といった絶滅動物の映像化にケチは付けられない。私はフォロラルコスが好きだ。
 でも壮大なピラミッド建設の場面があった。いやな予感はこれだった。

 さて、歴史の授業ではエジプト文明は紀元前三千年と教えられた(よな?)。
 この映画は、さりげなく古代文明は一万年前からあった――現代から勘定すれば一年二千年前――であるという、トンデモ映画なのである。
 多分、〈ト学会〉が放ってはおくまい。下手すれば今年のトンデモ大賞ものである。

 監督のインタビューに、ピラミッドの起源についてネットで調べて云々……という言葉があった。
 ああ、やっぱり!
 グラハム・ハンコックの『神々の指紋』が元ネタだったのだッ。監督自身がハンコックの名前を挙げているので間違いない。
 さて、恐竜時代に人間が同居している映画と、ピラミッド建設にマンモスを使役する映画は、どちらがトンデモでしょう。
 どっちもぢゃあッ!

 百歩譲って、ピラミッド云々はよしとしよう。
 だが根本的に基本的な科学を無視した脚本であることに違いはない。

 主人公は寒冷な気候の地方で、マンモスを狩りながら生活する狩猟民族だった。
 劇中で明言していないが白人――目が青い――であるところからすると、ヨーロッパのどこかなのだろう。
 そこへ明らかに文明の進んだ騎馬の民族が攻めてきて、一族の大半を拉致したのだった(後に判明するがピラミッド建設に使役する奴隷としてである)。
 難を逃れた主人公は恋人を取り戻すために旅立つ。
 シンプルな物語だよね。

 雪が降りしきる峻厳な山脈を越え(アルプス?)、ジャングルやサバンナを越え、あちこちで同様の人狩りの被害にあった別の部族の男たちと団結し(明らかに黒人部族で初期の農耕民族であるという描写がある)、大河を下り(ナイル?)、砂漠を越えて(サハラ?)、ついにピラミッド建設現場へ辿り着くのだった。

 えーと。誰かどういう地理的なルートを辿ったのか教えて下さい。

 どう考えても南下しながらアフリカに向かっていた筈なのに、途中からアフリカ南部から北へ向けて旅をしている。
 そもそも「空にいて動かない星」に向かっての追跡行であると云うのが矛盾している。
 北極星を目指して、どこをどう辿ればアフリカに到着するのか。
 それとも最初から赤道付近にいて、北上しながらエジプトを目指していたのか。
 でもアフリカ南部が寒冷地で、北上すると温暖になるのも矛盾である。
 南半球からの長大な追跡行だったとすると、そもそも最初に北極星など見えるわけがない。

 古代文明がどうとかいう以前に地理関係がヘンだ。まぁ、ハンコックが元ネタだしなあ……。
 古代文明そのものも、「海に沈んだ国を捨てて逃れてきた」奴らだという。
 アトランティスかよ! もうツッコミどころ満載。

 取って付けたようなハッピーエンドについてはもう、ツッコむ気力すらありませんでした。もう好きにしてくれって感じ(笑)。


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