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2008年1月15日火曜日

ジェシー・ジェームズの暗殺

(THE ASSASSINATION of JESSE JAMES by THE COWARD ROBERT FORD)

 「卑怯者ロバート・フォードによるジェシー・ジェームズの暗殺」というパルプ雑誌丸出しの原題は、原作の題が気に入ったブラピの希望通りだそうですが、中身はパルプ雑誌ぽいところなど毛頭無く、淡々とした重厚なドラマがずーっと続きます。
 160分も。
 長い。重厚なのはいいが、長すぎるのではないか。
 退屈するようなことはないが、かといって楽しくなるようなドラマでもない。

 かつてのチープな西部劇を見直し、リアルに語り直そうというのは最近の流れなんですかね。リアルなのは結構ですが、その所為で陰々滅々たるドラマになるのは如何なものか。
 もうしばらくすると、また反動でガンファイト・オンリーの「脳なしウェスタン」が流行るのだろうか。ジェリー・ブラッカイマーがその気になればいいだけなんだが(笑)。

 ブラピの演技は流石です。
 〈西部の義賊〉ではない、リアルな無法者を演じてベネチア国際映画祭で受賞したくらいだ。まぁ、ヨーロッパでウケた、というあたりが既に活劇としてのウェスタンではないという証拠でしょう。
 ケイシー・アフレックの演技も特筆ものです。
 「大物になりたいが努力するのはイヤ。手っ取り早く大物に引き立ててもらって、自分も大物気分を味わいたい」という、現代の若者にも通じる節操の無さが見事に表現されてました(笑)。
 まぁ、いきなりペーペーの新参者から「あんたの右腕にしてください」と云われて素直に聞いてやる奴はいないわな。この若さ故の厚顔ぷりが素晴らしいです。
 一応、行動力だけはある、という点のみ評価に値しよう。引きこもらないだけ今のニートよりはマシか。

 しかし大物になりたいが自力では無理、パシリを努めているうちに憧れのヒーローも苦悩する普通人だと知って幻滅、官憲への内通者となって名を上げようとするがそれも叶わず、そのうちに裏切りを感づかれそうになって殺してしまう、などという男はバカ以外の何者でもない。
 しかもその暗殺の手口――丸腰のジェシーを背中から撃つ――を、自分自身が役者となって劇場で800回以上も再現して見せるというのが信じられん。
 それほどまでに有名になりたかったのかロバート。

 で、望み通り有名にはなった。ただしそれは「卑怯者」としてであり、「西部の大悪党を退治した英雄」としてではない。
 あ た り ま え だ。
 結局、ロバートの売名行為はジェシー・ジェームズ伝説を高めただけで、全米に卑怯者として知れ渡った自分は肩身が狭くなって、そのうちに別のバカ野郎から天誅くらってしまうという末路。
 因果応報というか何というか……。

 やはり「南北戦争で生き残った南軍の敗残兵が、西部で農民を搾取する北部の大地主や銀行家共を懲らしめ、列車強盗を繰り返して農民達に奪われたお金を返してあげる」などという物語はリアルではないのか。
 なんかもう無性に『ロング・ライダーズ』か『ミネソタ大強盗団』が観たくなるわ(笑)。

 大体、『ジェシー・ジェームズの暗殺』は〈ジェームズ/ヤンガー強盗団〉が解散したあとからの物語なので、ヤンガー兄弟は出てこないのである。
 くそ、コール・ヤンガーを出せッ。


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