今年は『不都合な真実』と並んでドキュメンタリー映画の当たり年だなあ。
ブッシュ政権の敵ナンバーワンのマイケル・ムーア監督作品ですが、冒頭はまたしても「ブッシュの演説シーン」から始まります。ムーア監督はよっぽどブッシュが嫌いなようだ(笑)。
というか、ネタにされまくるブッシュが隙だらけなのか。
今回のテーマは米国の医療保険制度。いやぁ怖ろしい。
私はアメリカ人でなくて本当に良かった。銃規制がなかったり、つくづく人命軽視なお国柄ですなあ。ホントに民主主義国家の盟主なのかよ。
とはいえ日本も人ごとではない。医療費の個人負担が増えていけば、確実にこんな社会になるのですな。介護医療も民間企業に任せてはイカンです。
イギリスやフランスを見習え。せめてカナダでもいいから(笑)。
まぁ、ドキュメンタリーとは云え、都合のいい事実だけ並べているだけだと批判する人もいる。
事実、英国や仏国のように医療費無料、子供の保育費も大学の授業料もすべて無料というのは夢のような制度ではあるが、ムーア監督はこれらの費用が税金のどこで賄われているのかの説明はしない。
各国の消費税が何%なのかと云う言及もない。
でもこんな素晴らしい制度なら、消費税が上がってもいいかも――と思ってしまいますけどね。巧いなぁ。
米国では国民皆保険制度の話が出ると、途端に企業からの圧力が強まり「国家が医療制度をコントロールするのは社会主義の始まりだ!」などと声高にキャンペーンが張られるそうである。
そんなキャンペーンを信じる米国市民の皆さんはホントにバカなのだろうか。
ムーア監督は云う。
「ちょっと待て。じゃあ、警察や消防署や郵便局や公立図書館制度は社会主義化の尖兵なのか? そうじゃないだろ」
ちょっと考えれば判りそうなものなのだが。
してみると日本でも郵政民営化したのは正しかったのかねえ?
今回はいつもの突撃アポなし取材はせずに、淡々と米国と諸外国の制度の違いを論じていくだけですが、グアンタナモ海軍基地への突撃取材には笑った。テロ容疑者の方が米国市民よりも手厚い医療を受けていたのだ(笑)。
ついでにそのままキューバに上陸してハバナの病院の取材を敢行するあたりがさすがである。
なんとアメリカの医療制度はキューバよりも劣っているのだ!
カストロのいる仮想敵国よりも!
キューバなんて第三世界の途上国なのに!
何でこんなに薬品が安いんだよ!(爆)
実に説得力のある論理展開です。巧い。
しかし、あれだけ911テロの際には「消防士はヒーローだ!」と持ち上げておきながら、救助活動が原因で気管支を患ったヒーロー達に保険が下りないという事実が信じられん。そこまで冷たいのか?
善意のボランティアに対しても「確かにグラウンド・ゼロで救助活動をしていたと証明できないと医療費は出せません」と真顔で言い放つのである。
これはギャグか? まるで落語のようだが現実なのか?
実に怖ろしい。
それをまた笑いのネタにしてしまうのがスゴい。
実はエンド・クレジットに「カート・ヴォネガットに捧ぐ」と謝辞が出るが、なるほどこの笑いの手法はヴォネガット流ですなあ。
諸悪の根源がニクソン大統領だったというのも初めて知りました。へぇ。
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