2007年1月20日土曜日

不都合な真実

(An Inconvenient Truth)

 「こんにちわ。元 副大統領で、一瞬だけ大統領だったこともあるアル・ゴアです」という自虐的な自己紹介がユカイなゴアさんの環境運動ドキュメンタリー。米国の大統領が呼びかけに使う「マイ・フェロー・アメリカンズ」をギャグに使えるのはこの人くらいのものであろう(笑)。
 ドキュメンタリーとしても、なかなか面白いです。
 ユーモアを強力な武器にした点がマイケル・ムーアぽくもある。

 監督はデイヴィス・グッゲンハイム。よく知らぬ人ですが『ER』とか『24』とかの人気TVシリーズの番組でも幾つもエピソードを監督している方らしい。腕は確かですね。

 もともと環境運動家が転じて議員となり、下院、上院と登ってきたという経歴や、何故に環境問題に興味を抱いたのかという理由付けも紹介されるので、アル・ゴアという人物を理解するには最も手っ取り早い映画でしょう。
 こんな人だと判っていたら、もっと応援したのに(米国人ではないが)。
 シャレの判るひとだという点だけでも俺的査定はプラス修正(笑)。

 マイケル・ムーアの作品と同じく、ユーモアを武器にしている演出が素晴らしいですね。
 特に米国と諸外国の自動車メーカーの比較グラフが楽しい。

 何故、米国の自動車メーカーは環境エンジンの開発に力を入れないのでしょう? 彼らはそのようなエンジンの開発には多額の投資が必要であり、それは製品の価格に跳ね返り消費者のためにならないと主張します。
 でもちょっと待って下さい。ここに世界的に有名な自動車メーカー各社の売上げを比較したグラフがあるのですが……。
 おや、トップはトヨタですね。ホンダ、ニッサン、フォルクスワーゲン……。
 これらは皆、有害物質排出の規制に血道を上げている国々のメーカーでは。当然、多額の研究開発費用が製品の価格を高いものにして、即ち売れないものになる筈ですね。
 ところで我が国の自動車メーカーはどこへいったのでしょう。GM、クライスラー……。
 あれあれ。大赤字ですよ?

 ……もう何と云うか、笑うしかない講演である。やはりユーモアは大事だ。

 しかし笑いだけでなく、ときにシリアスな演出も忘れない。
 事例として取り上げられるのは、ゴアさん自身の実家に起きた出来事である。実家がタバコを栽培する農家だったというのは、初めて知りました。
 その昔、タバコが健康を害するものであると世間的に認知され始めた頃、ゴアの父は警告を軽視し、栽培を止めなかった。家族がタバコを吸うことにも寛容だった。
 しかしあるとき、実の姉が肺癌で亡くなり……。父親は収穫前のタバコ畑を焼いてしまった。
 ひとは皆、手遅れになってから気付くという、実に哀しい事例が泣ける。

 実際には〈地球温暖化〉は考えている以上に深刻なのだという現実には、ちょっと驚かされます。こういう報道はなかなかされないよなあ。企業には不都合だし。
 ヘタなSFよりもリアルでダークな「ゴア予想」は、一昔前なら実にリアルな「破滅SF」と云われたことでしょう。

 でも暗いだけではなく、明るく前向きに物事を捉えるゴアさんの性格で随分と救われる内容にはなっています。
 というか、アメリカが京都議定書を批准して今すぐCO2規制を推進しさえすれば、僅か一世代で70年当時の状況にまで戻れるという試算がスゴイ。状況の悪化もたった一国で拍車をかけているクセになぁ。

 このあたりの希望の描写が、逆説的に感じられぬでもない。
 つまり「なんだ。アメリカが本腰を入れれば何とかなる程度なのか」という風に受け取ってしまいそうなのが怖いと云えば怖い。特に外国人がこの映画を観たら、割とそう感じてしまうかも。

 ラスト近くで大統領選当時のブッシュ候補が、対立候補──つまりゴア自身──をケナしまくっている映像が、実に効果的でした。おかげで「アメリカは今、とっても間違った指導者を戴いている」というのが実感できます。
 これはゴアのささやかなリベンジなのか(笑)。

 このあたりのチクチクと刺すようなユーモアはマイケル・ムーアのようだと思っていたら……。
 案の定、エンドクレジットの製作協力者のリストの中に『華氏911』の名前が挙がっていた。きっとマイケル・ムーアは大喜びで映像を提供したのでしょう(笑)。


●余談
 公開後、この映画は第79回アカデミー賞(2007年)において長編ドキュメンタリー映画賞とアカデミー歌曲賞を受賞しましたね。
 ついでにゴアさんは環境問題の啓発に貢献したとして、ノーベル平和賞までもらいました。いや、転んでもただでは起きない人だ。



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