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2013年9月20日金曜日

コードギアス 亡国のアキト

第二章 引き裂かれし翼竜

 サンライズ製作のSFアニメ、『コードギアス 反逆のルルーシュ』のスピンオフ作品の第二話です。いや、待たせてくれました。当初の予定より大きく遅れて、丸一年(と一ヶ月)かかりました。全四話なのにこの調子では、完結まであと二年以上はかかりそうです。
 うーむ。どんなストーリーだったっけ……。
 とりあえず自分のブログ──『第一章 翼竜は舞い降りた』──を読み返して思い出しました。こういう時には覚書になるから便利デス(汗)。

 一応、冒頭に前章のダイジェストも流してくれたので、大筋は把握できますが、やはりもうちょっと間を空けずに公開してもらえぬものか。色々と事情があるのでしょうが、出来ることなら『宇宙戦艦ヤマト2199』並みの四ヶ月おきくらいだと助かります。
 あるいは一話の尺が六〇分足らずだから、通常の劇場用長編作品の前後編くらいにしてしまうとか。
 そういえば『機動戦士ガンダムUC』の最終章も随分と待たせてくれてますし、公開時期が延びるのなら、サンライズも複数の企画を平行して走らせるのは止められないものでしょうか。
 TVシリーズ本編のときと同じく、『コードギアス』と並行して走っている企画が、またしても『ガンダム』なのかと思うと──あの頃は『ダブルオー』でしたが今度は『ユニコーン』か──妙な感じです。

 それはさておき、ストーリーは前章から一ヶ月経過したあたりから幕開けです。
 まずはユーロ・ブリタニア側から。サンクトペテルブルグでは聖ミカエル騎士団に新たな団長が就任するという場面。勿論、それはシン・ヒュウガ・シャイング(松風雅也)ですね。
 自身の持つ特殊技能「絶対遵守ギアス」の力で前団長マンフレディ卿を自殺させ、まんまとその後釜に座っております。団長就任と同時に、爵位の授与も行われたらしく、「シャイング卿」と呼ばれ、着々と野望の階段を上っておるようです。
 式典には他の四大天使の名を冠する騎士団長も全員がそろって列席しておりますが、全四話ではすべての騎士団は描けないでしょうねえ。尺が足らんか。
 とりあえず聖ラファエル騎士団のアンドレア団長(子安武人)も登場してくれましたが、出番は少ないです(ここだけ)。聖ガブリエル、聖ウリエルの団長も顔見せだけ。

 新キャラとして、聖ミカエル騎士団の騎士達──つまりシンの部下になる──も登場しておりますが、中でも〈アシュラ隊〉と呼ばれる猛者達がおります。隊長はアシュレイ・アシュラ(寺島拓篤)なる、なかなか凶暴で好戦的な青年です。
 戦場で武勲を立てて立身出世を目論んでいるようですが、あまり騎士らしくない。名誉とか格式とかには縁が遠そうな人です。七名の部下も、こんな隊長の下では気が休まりますまい。
 なんせ「戦場で生き残る為に必要なのは運だ」と公言し、自分には「運がある」ことを証明する為に、暇つぶしのロシアンルーレットをやらかすくらいです(しかも部下にも強要する)。
 この〈アシュラ隊〉が、主人公達の当面の敵になるのであろうことは容易く察せられます。

 一方、ユーロピア共和国連合(以下、EU)側では、前章のラストで欠員補充の為にスカウトしたリョウ(日野聡)、ユキヤ(松岡禎丞)、アヤノ(日笠陽子)の将軍誘拐未遂犯共が、〈wZERO〉部隊の本部でもあるレイラ(坂本真綾)の居城で何やら脱走を企んでおります。
 まぁ、日本人の兵隊が使い捨てにされるのは、この世界の常識ですから逃げようと考えるのは当たり前か。特に後ろ暗い犯罪者であるので尚更です。
 そこへ次なる出撃命令が下るわけですが、案の定「非常に困難な任務」です。
 戦線から離れたユーロ・ブリタニア側の陣地に降下し、敵軍を攪乱しつつ拠点となる都市(ワルシャワ近郊らしい)を制圧し、友軍と合流せよと云う特攻ミッション。

 出撃前に脱走を図るリョウ達ですがアキトらに阻まれ、ますます反抗的になります。そこでレイラは彼らをなだめ、信頼を得る為に自分も出撃することを告げる。どこまでもお嬢様で善人思考のレイラですが、作戦立案能力は非常にシビアかつタイトです。
 そもそもレイラを含めても有人機が五機しか出撃できないので、無人のドローンを大量に動員して、レイラは現地での遠隔操作を引き受けようと云うわけで、同じKMF(ナイトメアフレーム)でも、各人の仕様がビミョーに異なっている設定にコダワリを感じます。
 かくして高高度からの敵地突入の為に、KMFごとロケットに積まれて打ち上げられる〈wZERO〉部隊。

 本作の背景は歴史改変による平行世界SFですが、今まで宇宙開発技術がどうなっているのかまではあまり描かれておりませんでした。TVシリーズ本編では〈ダモクレス〉なる機動兵器が登場したくらいでしょうか。
 しかも、〈ダモクレス〉はかなりファンタジー的な「浮遊要塞」と云った趣でしたが、本作に於ける衛星軌道上からの突入ミッションではリアルなロケットが描かれております。こういう技術もあったのですねえ。
 ちょっと今までの『コードギアス』の世界観にはそぐわないような代物ですが、これはこれで新鮮ですし、リアルな衛星軌道飛行の描写はコードギアス版『ライトスタッフ』といった趣です。

 コードギアスの世界では、いまいちメインストリームな技術ではないらしい──少なくともブリタニアにはないEU独自開発の技術──と云う描写が、なかなか興味深かったです。
 多段式ロケットの切り離し、突入カプセルによる軌道飛行、地球を一周しながら突入までのカウントダウンが行われるのですが、ちょっと物足りないところも無きにしも非ず。
 やはり地球を外から眺めながら飛んでいく、〈wZERO〉部隊の反応をもう少し描いて戴きたかった。特に日本上空を通過する際に、何かを各人が思うような描写がちょっとくらいはあるのかなぁと期待したのですが、そういうのが無かったのが残念でした。
 まぁ、決死の作戦行動中ですし、そんな余裕はないか。

 計算通りに大気圏突入。高高度でのカプセル分離。KMF各機がグライダーのような翼を展開して飛んでいく様子は、なるほどワイバーン。本シリーズのサブタイトルに「翼竜」と付くのも宜なるかなです。
 ポーランドへの降下作戦と云う設定が、何やら戦争映画のようです。『遠すぎた橋』(1977年)へのオマージュかしら。これで作戦内容が、「橋の確保」だったらもっと良かったのに(笑)。

 無事に降下が成功したところで、またリョウ達が脱走を図るという「作戦に協力する気まるでなし」な態度が清々しいです。敵よりも味方の方が怖いわ。
 アキトも端から裏切りを予想していますし、人間関係がギスギスしていて、実に『コードギアス』ぽい展開です。
 結局、敵陣地からの攻撃が仲間を結束させ、生き残りたければ協力する他ないと云う成り行きに。

 目標の都市が、見るからに東欧の都市ぽい描かれ方をしております。石畳に広場があって、画一的な集合住宅が並んでいるのがイカニモな感じで、今まで『コードギアス』の世界では描かれなかった欧州ぽい雰囲気が出ているのはいいのですが……。
 こういう歴史を感じさせる街を見ると、平行世界の歴史の流れが気になってしまうのはSF者の性でしょうか。こっちの世界にも共産主義とか、冷戦とか、あったのかしら(無いと思うが)。そんなところにツッコミ入れるのは野暮というものか。

 本作の監督、脚本は引き続き赤根和樹。脚本も浅川美也と大野木寛のままです。
 TVシリーズ本編の世界観を壊さぬよう、でも新しい部分も見せたい気持ちも伺え、バランスを取るのに苦労しておられるようです。総じてTVシリーズ本編よりもリアル指向なのか。
 是非、このまま失速せずに最後まで続いて戴きたいものです。

 さてこの都市で〈wZERO〉部隊を待ち受けていたのが、聖ミカエル騎士団の〈アシュラ隊〉と云うわけで、ヨーロッパ的な街並みを背景に激しいKMF戦闘が描かれております。作画も気合い入れまくりで、実によく動く。3DCGの作画も緻密です。
 クォリティが落ちていないので、公開が遅れたこともこれで納得です。
 ドローンKMFが片端から撃破されていき、〈アシュラ隊〉の圧倒的な強さが描かれた後に、再びアキトがバーサーカー状態になります。幼少時にアキトにかけられたギアスが発動して、超人的な反射神経と情け容赦の無い攻撃で反撃していくわけですが、なかなか凝った仕掛けが幾つも見受けられます。

 EUのKMFに搭載された各パイロットの神経伝達をモニタする機構を通じて、アキトがリョウ達に影響を及ぼすと云う意外な展開です。レイラ以外の全員が同時にバーサーカー状態になって、記憶を共有した群体生物のようになるのが面白いです。
 しかも挿入される回想シーンで、アキトとシンの関係も描かれる。アキトにギアスをかけたのは、やはりシンであったわけですが、その際にアキトは「死ね」と云う命令を受けている。
 これがどうして「自分が死なずに、相手を殺しまくる」状態になってしまうのか。このあたりの秘密はまた次章以降で描かれるようで、伏線が仕込まれているのを感じます。でも全四章でちゃんと回収できるのかな。

 撃破され、屈辱の撤退を強いられる〈アシュラ隊〉。次回以降、またの登場をお待ちしております。キャラの立ってる連中ですが全員に出番は……ないか。全四章ですしね。それを云うなら、〈wZERO〉部隊のオペレータの皆さんも出番が少ない。
 そして〈アシュラ隊〉の窮地を救ったシンが姿を現し、アキトとの兄弟対面と相成るわけですが、何やら深い事情があるようで、今回だけではまだまだ真相は明かされません。
 とりあえず顔見せだけして去って行くシン兄様です。乗っているKMFがまたデザイン的に凝りまくったケンタウロス型に変型するKMF。「ヴェルキンゲトリクス」と云う名前もスゴイわ(その割に外観にケルト風味が足りないか)。

 何とか作戦を成功させ、誰一人欠けることなく生還する〈wZERO〉部隊。多少は仲間意識も芽生えはじめたようですが、まだレイラが部下から信頼を勝ちとるには紆余曲折ありそうな。
 そんなこんなで第二章もお終いですが、前章の予告編に登場した枢木スザクくんはどうなっちゃったのか……と云うところで、次章への引きに顔見せしてくれます。
 〈wZERO〉部隊の生還と時を同じくして、シベリア鉄道に乗って終着駅サンクトペテルブルグに到着するスザク。この世界の輸送システムは進んでいるのか、未発達なのかよく判りませぬなあ。

 ユーロ・ブリタニア高官の歓迎を受けるスザクですが、彼の任務は「ある人物」の護送。ナイトオブラウンズの騎士が直々に警護してくるほどの人物とは何者か。
 「これよりユーロ・ブリタニアの作戦立案は、この軍師ジュリアン・キングスレイが執る!」……って、あれれれ。
 最後の最後で見せ場を全部掠っていくとは、さすが主人公(笑)。
 イッちゃった表情と福山潤のボイスが炸裂しております。また記憶と人格を書き換えられちゃってるよ。やれやれ。

 こうなると、早く次を見せて戴きたいものですが……。
 予告編では次回こそスザクが活躍する場面があるようですが、大丈夫でしょうか。
 第三章『輝くもの天より堕つ』は来春公開予定。でもまた延びてしまうのでは。心配デス。




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