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2012年2月10日金曜日

ベルセルク/黄金時代篇Ⅰ 覇王の卵

(BERSERK)

 三浦建太郎の原作コミックスはまだ完結しておりませんが、今度はどこまで映像化するのか実に気になります。
 以前のアニメ化作品『剣風伝奇ベルセルク』(1997年)の方は〈黄金時代篇〉だけで全二五話を使い果たし、そこで終わってしまいましたが、今度はどうなんでしょう。劇場版を三部作にしての〈黄金時代篇〉だそうですが、その先の〈断罪篇〉、〈千年帝国の鷹篇〉、〈幻造世界篇〉までやってくれるのか(まだ終わってないけど)。
 いっそのこと、〈黄金時代篇〉は一度やっているので、いきなり〈断罪篇〉から始めるとか、序章の〈黒い剣士篇〉でも一本の劇場用長編になりそうな気もするのですが……などと、鑑賞前は色々と期待と不安に充ち満ちておりました。

 結果として、あまり過度に期待し過ぎなければそれなりと云うか、以前のアニメ化に拘りを持ちすぎていると残念なことになるというか、手堅くまとめた感はありますが、本作だけで全体の出来を云々することは如何なものかと云う、真に当たり前な結論に至りました。うーむ。オールド・ファンであればあるほど、云い出すとキリが無くなりそうです。
 それに始まったばかりですからねえ。
 監督の窪岡俊之も、脚本の大河内一楼も、しっかりまとめてくれているのは判りますが。

 どうしても『剣風伝奇ベルセルク』と比較してしまうのですが、これはやむを得ぬか。
 とりあえずメインの配役を比較すると──

ガッツ  : 神奈延年 → 岩永洋昭
グリフィス: 森川智之 → 櫻井孝宏
キャスカ : 宮村優子 → 行成とあ

 上記は左がTV版、右が本作の配役ですが、ガッツとグリフィスは驚くほど違和感なしでした。本作でガッツ役が岩永洋昭と知ったときは心配になりましたが、杞憂でしたね。
 岩永洋昭と云えば『仮面ライダーオーズ』に〈バース1号〉の伊達チャンとして出演しておられましたが、以前のイメージが払拭されている。まぁ、役柄上ガッツは傭兵なので、岩永ガッツが伊達チャンと同じく「いっちょ稼ぎますか」的な言動になるのは仕方ない。
 櫻井グリフィスもまた森川グリフィスに負けず劣らず自然でしたねえ。この手の美形キャラはお手のものか。
 但し。やっぱり。キャスカは。……宮村優子であってもらいたかったッ。「俺のキャスカはみやむーである」と再確認しました。
 これはまったく個人の好みの問題なので、行成とあが悪いと云っているわけではありません。劇場版『機動戦士Zガンダム』でフォウ・ムラサメ役は「やっぱり島津冴子であって欲しかった」とダダをこねているのと同じなのデス。仕方ないんだよう。

 配役についてはホントに云い出すとキリがない。しかも主役の二人を除くとTV版の配役に戻してくれ的な注文ばかりになってしまうので、甚だ建設的ではありません。
 ゾッドは三宅健太より、内海賢二の方が馴染みがある、とか。
 コルカスは松本ヨシロウより、西村朋紘の方がセコそうで良かった、とか。
 国王陛下はやっぱり大木民夫に演じてもらいたかった、とか。
 いかんいかん。
 いいところも挙げよう。
 シャルロット姫は白鳥由里もいいけど、豊崎愛生も可愛かったデス。

 音楽については、平沢進の主題歌「Aria」が素晴らしかったのですが、ちょっと勘違いしておりました。今敏監督の諸作品──『千年女優』(2002年)とか『パプリカ』(2006年)──のように、全編にわたり平沢進の音楽が聴けるのかと期待しておったのですが、本作では平沢進は主題歌のみで、劇中の音楽は鷺巣詩郎が担当しておりました。
 鷺巣詩郎には申し訳ないのですが、個人的にもっとガンガンと平沢サウンドが聴けるのかと思っていたので。出来ればTV版の「Forces」も劇場で聴いてみたかった……。
 いや、どうもネガティヴなことばかり書いていますね。イカンなあ。過去のシリーズに思い入れが強すぎるのか。

 ところでOPには、〈黄金時代篇〉には登場しないシールケやファルネーゼやセルピコらも描かれておりましたが、これは絶対に〈千年帝国の鷹篇〉までは制作するぞというスタッフの意思表示なんですかね(笑)。するとOPは全作、同一になるのか。

 イマドキのアニメなのでCGによる作画がかなり見受けられます。特に合戦シーンで登場する、巨大な投石機、破城鎚などがリアルです。冒頭の攻城戦はなかなかの迫力でした。まあ一部のモブにCGのお手軽感が出ていたのは残念でしたが。
 背景美術も凝っていますし、作画については申し分なしでしょう。
 甲冑の描写にも原作同様のこだわりが見受けられ、剣戟の金属音や重量感の演出はなかなか。バズーソとの一騎打ちは序盤の見せ場ですね。

 物語についてはほぼ原作に則っており、意外な展開はありませんでした。
 中世欧州風の戦乱の世界。剣士ガッツは、傭兵集団〈鷹の団〉を率いるグリフィスと出会う。数々の戦功を立てる〈鷹の団〉は、ミッドランド国王から取り立てられ、ガッツとグリフィスも固い絆で結ばれていく。
 しかしあるとき戦場で遭遇した怪物〈不死のゾッド〉から不吉な予言を宣告される……。
 
 が、若干気になる点が無きにしも非ず。
 ガッツがグリフィスとの決闘に敗れ、二晩眠り続けていたときに(キャスカの添い寝付きで)、過去の断片を夢に見るワケですが、これについてはまったく説明がありません。原作を読んでいれば説明不要ではありますが、本作が初めてという観客にはちょっと不親切でしたか。
 それに悪夢とは云え、チラッとでもガンビーノが登場したのだから、若本規夫ボイスも聴いてみたかったデス(劇場版の配役は違うのかなあ)。

 あと本作は三部作の序盤と云うこともあり、怪奇な現象は〈不死のゾッド〉の登場以外はありません。逆に云うとゾッドさえ登場しなければ、中世的世界を背景にした真っ当な青春物語になったとも云えます(それでも良かったような)。
 尺も八〇分と短めですし、全体として軽く流したという印象が強いです。ベヘリットについても深くツッコミ入れることはありません。
 その辺の演出の所為で、どうしても物語が淡泊な感じになってしまうのが残念でした。
 ゾッドの登場も、ほとんど前振り無しでイキナリですし、ゾッドがベヘリットを見たときの反応からして、もうちょっと〈覇王の卵〉について説明的な場面もあって良さげであると感じました。

 やっぱり、なんかちょっと惜しいという感じですねえ。
 一年の間に〈黄金時代篇〉三部作を制作してしまおうというのは嬉しいことですが、もう少しじっくりやってくれても良かったような(色々と大人の事情もあるのでしょうが)。

 とりあえず本作では、グリフィスの為に汚れ仕事を引き受けたガッツが、ユリウス伯爵を暗殺したあと、庭園で語らうグリフィスとシャルロット姫の会話を聴いてしまうところまで。
 意地悪な云い方をすれば、TV版のダイジェストと云えなくもないです。しかし本作と同時に制作が進行していると云う第二部、第三部は、次第にカット数も増えて、尺も長くなると云われていますので、今後に期待したいです。
 ドラマの終了とともに、早速に次回予告を打ってくれるのは有り難いですが、おかげでますます大河ドラマの総集編ぽく見えてしまったのは、残念でした。もう少し余韻を楽しみたかった……。

 ともあれ、第二部「ドルドレイ攻略」では、伝説の百人斬りから、要塞攻略、ガッツとグリフィスの別れまでか──と思っていたら、もう少し先のグリフィスの反逆容疑と逮捕監禁までいってしまうようで。
 割と駆け足のような気がしないでもありませんが、やはり〈黄金時代篇〉のクライマックスである「蝕」に傾注しているんですかね。
 TV版が物足りないのはそこでしたから。劇場版では規制抜きの描写も期待したいデス。既に本作でキャスカの全裸も拝ませて戴いたので、そのへんは大丈夫か。

 ところで「百人斬り」から「ドルドレイ要塞」と云うと、何といってもアドン隊長の独壇場になる……筈ですが、配役は玄田哲章にはならないのデスか。うーむ。残念。
 アドンも小山力也かあ(ユリウス伯爵と一人二役)。ギャグに走って脱線しない方がいいか。




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