2011年10月22日土曜日

カウボーイ&エイリアン

(Cowboys & Aliens)

 SFと西部劇の異色の組み合わせですね。
 よくタイムトラベルもののSF映画では、過去の世界の一つとして描かれることがありました。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART.3』なんかも「SFと西部劇」ですね。タイムマシン絡みのSFには、西部開拓時代に行っちゃう場面がよくありました。お約束な展開と云える。
 更に記憶を遡れば、『ウエストワールド』(1973年)であるとか、『恐竜グワンジ』(1969年)なんてのを観た覚えがあります。
 しかし流石に異星人が出てくる西部劇は、『スタートレック』のエピソードに幾つかあるくらい──あれも一応、「異星人の出てくる西部劇」と云えるか──ですね。
 しかし本作はモロに侵略ものですよ。

 これまたアメコミの映画化作品です。既に原作コミックスの翻訳が出版されていますが、随分と原作から変更されていますね(一応、読みました)。「開拓時代の西部に異星人が来襲する」という大ネタだけが残って、あとはもうオリジナルと云っていいくらい。
 原作の方ではエイリアン側の描写もそれなりにあったのですが、本作は徹頭徹尾、人類側からの視点で描かれています。
 他にも、白人らの侵略行為──「明白なる運命」とはよくぞ云ったもんだ──と、異星人の侵略行為の対比が、実に皮肉っぽく描かれておりました。弱肉強食は大宇宙の掟か。白人も異星人も先住民から見れば大差なし。
 しかし映画化に際しては、そんな文明批判的な部分はバッサリ。製作にはスピルバーグとか、ロン・ハワードの名前が見受けられ、エンタテインメント重視であることは理解できます。
 だから監督は『アイアンマン』のジョン・ファブロー。明快な冒険活劇を撮るならこの監督でしょう。『ザスーラ』(2005年)の頃から好きでした。「SFに理解のある監督」ですから。

 主演はダニエル・クレイグとハリソン・フォード(ジェイムズ・ボンドとインディ・ジョーンズ)。
 ハリソン・フォードはともかく、ダニエル・クレイグが西部のガンマンの格好をしているのが、なかなか新鮮でした。帽子を目深に被った姿がスティーブ・マックィーンに似ている。本人も意識してマックィーンの演技を研究していたそうな。
 今回はハリソン・フォードが悪役か、と思っていたら、結構いいひとでした。西部の小さな町を牛耳る牧場主──西部劇では鉄板な悪役設定──ですが、南北戦争を生き抜いた軍人だったという過去があり(階級は大佐)、部下への厳しい振る舞いは戦時中の体験によるものだと推察される。
 祖父である老保安官(燻し銀のキース・キャラダイン!)をエイリアンに拉致された少年に、自身の過酷な体験を話して「お前も大人になるのだ」と諭したりもする。子供にとってはキツい話ですが。

 一方、もう一人の主人公ダニエル・クレイグは記憶を失った男。
 「記憶喪失の主人公」と云うと『ボーン・アイデンティティ』とか『アンノウン』のパターンです。しかも主人公は記憶を失う前は、悪人だったという設定もありがちか。
 この手の設定が来ると、判で押したように同じ台詞が使われますねえ。

 「大事なのは、かつて誰であったかではない。今、どう行動するかだ」

 そりゃそうですけどね。その言葉で過去をすべて帳消しにしてしまうのも如何なものか。劇中でも牧師さんが「神は過去を問わない」と仰っていますが。
 まぁ、ダニエル・クレイグ自身は強盗ではあったが、殺人者ではなかったというあたりが、救いと云えますか。

 その他の配役では、サム・ロックウェルが酒場のインテリ親父役で、なかなかいい感じ。
 それからアパッチの血を引くカウボーイと、アパッチ族の酋長も。
 特に先住民が英語を喋らないという演出がいいですね。

 エイリアンがまた凶暴な上にゴツい生物で、よくこんな種族に宇宙船が建造できたよなぁと不思議でしたが、さりげなく異星人の身体構造を説明してくれるシーンがあって納得できます。
 堅そうな外殻の中に精密作業用の付属肢があるという造形描写。ファブロー監督のSF設定へのこだわりを感じました。

 他にも、SFマインドを感じる場面が幾つか。
 まずは荒野の真ん中にリバーボートが逆さまになって落ちているという異常な場面があります。このあたりは観ていてゾクゾクします。明らかに異星人が船の乗客全員を拉致して、不要になったボートを高所から落としたのだと、観客には判る。
 このあたりは客の想像に任せて深く説明はしませんが、登場する異星人の飛行マシンは小型のものばかりで、リバーボートを持ち上げるくらいの大型マシンは結局、登場しなかったのが残念でした(観ている間は全然、気になりませんけどね)。
 それから、エイリアンの高いテクノロジーとは別に、ダニエル・クレイグの記憶を取り戻すのが先住民のシャーマンによる呪い治療だという描写が面白い。異質なネタを掛け合わせるというのがSFデス。さすがファブロー監督。

 ところで、実は本作に登場する異星人は一種類だけではなく、かつて彼らに侵略された別な異星人もいて、こちらがカウボーイたちを助けてくれる。
 こちらがオリヴィア・ワイルド。善のエイリアンは美人さんであるというのが、判り易い。御都合主義ですが(笑)。
 キャラクターとしては非常に印象的なのですが、どうしてカウボーイ達を助けてくれるのか動機がいまいちよく理解できませんでした。種族としての復讐だったにしても、あそこまで献身的に助けてくれるものかなぁ。

 鑑賞後、思い返せばツッコミ処も散見されるのですが、活劇描写が巧いので許します。アクション・シーンは結構、燃える。
 特に、戦闘中にハリソン演じる大佐とアパッチの酋長の間に、無言の絆が結ばれるシーンがいい。漢は目で会話する(拳で語るというのもありますが)。
 戦闘的なエイリアンにトマホークの一撃を食らわせるとか、ダイナマイトで吹っ飛ばすという演出に燃えました。野蛮人をナメんじゃねェ。
 ハリー・G・ウィリアムズの音楽も燃え燃え。

 総じて、明朗快活な冒険活劇なので、観ていて非常に楽しいです。原作を無視して突っ走る本作の方が痛快でしょう。
 実は観賞前に、先に読んでいたので、本作の結末の脳天気さに笑ってしまいました。
 コミックス版では、善の異星人もあまり善と割り切れる種族ではなく、支配階層の種族がいなくなったので、これ幸いと今度はこいつらの円盤が地球に降下して来るというオチでした。これは新たな侵略の始まりなのか、或いは宇宙的規模の抗争に地球が巻き込まれていくことを暗示しているのか。
 私は映画版の方の、もっと明快で西部劇らしいエンディングの方が気に入りました。

 侵略者は退治され、金鉱も発見されて町も潤い、大佐のダメ息子も更正して万事めでたし。
 善人に生まれ変わったダニエル・クレイグは独り荒野に去っていく。
 まことに西部劇らしいエンディングでありました(やはり主人公が馬に乗って旅立つラストが正統派でしょう)。これはこれで大いにOKです。




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