持ち主がアンディからボニーへと移った後のエピソードだというのが嬉しいですね。ウッディ達も相変わらずのようで。
今回はボニーが家族旅行でハワイに行ってしまった留守中の出来事を描いています。
ボニーと一緒にハワイ行きを期待していたのに置いてきぼりを喰らったケンとバービーの為に、ウッディ達が居ながらにしてハワイ気分を盛り上げてあげようという趣向。
スペイン語モードを自在に使いこなすようになったバズとか、『トイ・ストーリー3』を観た後でないと判らないネタが色々ありますが、ファンならば観て損なし(短編ですが)。
そして、本編も『カーズ』(2006年)の続編。もうピクサーは続編を作ることにまったく抵抗が無くなったようデスね。
でもジョン・ラセターが監督である限り、心配は無用ですか。単純な二番煎じではありませんから。
前作は割と人情味溢れるドラマ作りになっていましたが、今回は全体がスパイ映画風のアクション主体のドラマになっています。しかも主役はメーターだし。
基本はライトニング・マックィーンとメーターの友情物語ですが、メーターの方が出番が多いですね。
あれから四年──。
ライトニング・マックィーンはピストン・カップ四連覇を成し遂げたチャンピオンへと成長し、田舎町ラジエーター・スプリングスもそれなりに賑わうようになっていた。しかし四年という時の流れを感じさせるように、ハドソン・ホーネットは他界していた(何故ならハドソン役だったポール・ニューマンもお亡くなりなっていたから)。
時代の流れを感じるのは、この自動車ワールドにも環境問題が持ち込まれたことですかね。
ガソリンに代わる再生可能なクリーン燃料「アリノール」の開発と、その宣伝の為に開催されるワールド・グランプリに、ひょんなことから参加することになってしまったマックィーン。トラブルの元凶ともなった親友メーターと共にツアーへと出発します。
その一方で、アリノールの普及を阻止せんと巨大な陰謀が動き始めていた……。
冒頭の海上油田基地での一連のアクションは、本家〈007〉シリーズもかくやという仕上がりです。英国諜報部員フィン・マックミサイルの大活躍。もうボンドカーがキャラクターになっているかのようです(笑)。
私が観たのは日本語吹替版で、フィン役は大塚芳忠でしたが、字幕版ではマイケル・ケインだったそうな。いかにも英国諜報部員。まぁ、ダニエル・クレイグでも、ピアース・ブロスナンでもいいけど。さすがにショーン・コネリーと云うワケにはいかんか。もしそうなっていたら吹替版も若山弦蔵でないと許しませんが。
しかしマイケル・ケインの吹替が大塚芳忠か。悪くはないし、マイケル・ケインも吹替声優さんの定まらないお方ですからなあ。小島敏彦だったり、小川真司だったり、有川博だったりしますから。大塚周夫だったこともあるし。でもスパイとしてのマイケル・ケインなら、羽佐間道夫か中村正に演じていただきたかった……。
前作と同じくレギュラー陣はオーウェン・ウィルソン、ラリー・ザ・ケーブルガイ等お馴染みの役者さんで、吹替版の声優さんもすべて同じ配役になってます。
特にメーターの声は山口智充でないと。ルイジ役もジローラモでないとイカンですね。
ともあれ、日本、イタリア、イギリスと三連戦となるツアー。初戦は東京から。
この東京の描写は……やはり日本人の目で見るとオカシイ。洋画ではいつものことですが。巨大な富士山とギンギラなネオン・サインというのは、外国人の定番日本観なんですかねえ。ラセター監督は秋葉原にエラく感銘を受けたそうですが。
あと「ウォッシュレット完備のトイレ」をギャグに使うというのも、日本ネタなのか(笑)。
今作では東京の他に、ポルト・コルサ(架空の街ですがリヴィエラぽい)、パリ、ロンドンといった各国の街が描かれますが、これがなかなかよくお国柄が出ていて、バラエティに富んだ背景になっていて楽しいです。
特に風光明媚なイタリアの港町の景観が素晴らしい。
また、マックィーン・チームのピット・クルーであるルイジとグイドの故郷と云うこともあって、ルイジの親族が大挙登場するのもイタリアぽいデスね。
東京での初戦でライバル車に後れを取ったことでメーターと仲違いしてしまったマックィーンをイタリア語混じりで諭し、元気づけるトッポリーノおじさん夫婦がいい感じです(しかもトッポリーノ夫人のイタリア語のセリフはそのままソフィア・ローレンでした)。
「友達は宝物だ」というのは万国共通のメッセージです。
一方、マックィーンの元を去ったメーターは、すんなり帰国できず、スパイ戦に巻き込まれていくワケですが……。
そもそもスパイの連絡員と勘違いされた原因というのが、実にマニアックなネタでした。諜報部員同士の符丁に偶然、メーターが答えてしまったのですが……。
「カルマンギアにラジエーターは無いんだってね」
「だって空冷式だもの」
こんなマニアックな知識をスラスラと披露できるメーターは、実は怖ろしく博識だったのだ(自動車ネタだけに限定されますが)。田舎者丸出しでありながら、一芸に秀でたヲタクだったというのが凄い。
平気な顔で「他にも空冷式の車種はあるよ」と次々と挙げていく。この博識さを買われて、どんどん深みにはまり込んでいき、錆だらけの車体すらも「完璧な変装だ」と賞賛される始末。
実はこの映画は、ヲタクが世界を救うという物語だったのだ。素晴らしい。
メーターの博識さが事件を解決に導くワケですが、ここはカーマニアならかなり楽しめるネタが色々あるようで。
秘密結社のメンバーが欠陥車ばかりだというのも、フツーの観客なら指摘されないと判らんわ(笑)。
秘密結社の目的がアリノールの普及阻止であり、その為に開催されているワールド・グランプリ出場車をレース中の事故に見せかけて全車クラッシュさせることだと知ったメーターは、マックィーンを救う為に行動を起こす。
いやまったく、メーター大活躍。空も飛ぶし(笑)。
その上、名探偵でもある。
最終戦となるロンドン市街でのカーチェイスやら、女王陛下を前にして秘密結社の黒幕の正体を暴いてみせたり。ホントにお前はあのメーターなのかと思うくらいキレる。能ある鷹は爪を隠すと云うことしましょう。
車が空を飛んだり、前作よりも荒唐無稽な展開がありますが、ギリギリ許容範囲か。
このあたり、今回は脚本がベン・クィーンと云うお方で、ジョン・ラセターやブラッド・ルイスといった方々は原案としてクレジットされているだけなので、それが前作と少し違っている原因なのでしょうか。
最後には女王陛下から叙勲までされ、「サー・メーター」となります。メーター卿か。
このあたりは、むしろ定番なハッピーエンドで実に楽しいのですが、前作同様の人情ドラマを期待していると、ちょっと肩透かしかも知れません。新キャラが活躍しすぎて、前作のメンバーにあまり出番が無いというのも、チト物足りなく感じるかしら。まぁ、そのあたりは割り切って観るしか。
あー。でもわざわざ3Dで観る意味はあるのでしょうか。2Dでも充分、楽しい映画デスから(私は2D日本語吹替版で観ました)。
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