2010年11月11日木曜日

大奥

(The Lady Shogun and Her Men)

 男女逆転の時代劇──と云うのが大前提のコンセプトであるから、かなり強引に冒頭のナレーションで説明してしまいます。
 男性だけが罹る伝染病〈赤面疱瘡〉。「あかづらほうそう」と云う語感が何やらエゲツなさそうな疫病である。致死率80パーセント。明確な治療法は存在せず、瞬く間に日本の男女比は1対4にまで落ち込んでしまう……。
 男一人に女が四人。SNEG! (ソレ、なんてエロゲ?)

 当然、こんな伝染病が日本でだけ流行するとは考えられず、是非とも当時の世界情勢が知りたいものであるが、この映画ではそんなことは一切説明しない。このコンセプトを演繹していけばSFが一本書けると思うのだが、惜しい(笑)。

 ナレーションで宣言したあとは、もう江戸城下の風景で強引に納得させてしまう。行き交う商人、人足、飛脚、すべて女性である(笑)。
 粋で鯔背な姐さんがべらんめえ調で「おうおうおう」と声を上げている。うーむ。
 かなり笑える風景だ。

 そんな女性上位の社会で、それでも武士道を貫こうとするひとりの男が二宮和也である。貧乏旗本の長男で、家計を助ける為に数少ない男性を集めて道場で剣術を指南しているという設定。だから腕は立つのである。
 母系社会なので、武家の家長は母親(倍賞美津子)である。父親(竹脇無我)が隣で存在感薄く小さくなっているのが素晴らしいですね。

 今日も持ってきた縁談を二宮和也が断ってしまうので母は怒っている。
 貧乏旗本の倅としては、早く婿に出て、嫁いだ先の家で子供をばんばん産ませるのが勤めである(笑)。まぁ、人口を維持しようとすれば男性への負担が重くなるのは仕方ないわな。
 セリフによると、貧乏武家の倅は年頃になると種付けが義務づけられ、好むと好まざるとに関わらず、日夜女性を相手に励まねばならぬらしい──そうやって家計を助ける──が、倍賞美津子は家が貧しくても息子には一切、無理強いをしなかった。
 厳しい母親のようだが、息子への愛情が感じられる設定である。
 そこで遂に二宮和也は大奥へ奉公に出ることを決意するのであるが……。

 ここまで来るのに結構、時間を割いて丁寧に設定を説明するのが巧い。

 そして大奥。腐女子ドリームが炸裂するお待ちかねの展開(笑)。
 もう女性誌の男性モデルとかジャニーズ系のイケメンをかき集めて大奥を再現しています。まさに江戸時代のホスト・クラブである。
 絢爛豪華には違いないのであるが……。うーむ。さすがに男が観賞するにはツラいか(笑)。

 玉木宏が最初に大奥の設定をザッと教えてくれます。これは歴女ならずとも興味深い。細かい役割分担とランク付け。下働きの「御半下(おはした)」から始まり、最高位の「上臈(じょうろう)」「御年寄(おとしより」)に至るまで実に細かい。
 二宮和也は一応、旗本の倅なので「御三之間(おさんのま)」から始まる。将軍への目通りが出来ない「御目見得以下」ではあるが、その中では最高ランク。

 特異な環境ではあるが、物語としては定番な展開とも云える。
 新参者が古参からイジメられる──ゲイぽい男達の陰湿なイジメと云うヤツはホントに気色悪い──が、持ち前の江戸っ子気質が出てしまい、逆に人気者になる(笑)。剣術の腕が立つことを見込まれ、サクセス街道を驀進していく──。

 見所はやはりこの「美しい男達による、しのぎの削り合い」ですかね。
 玉木宏の愛人役が大倉忠義(爆)。

 「お前などより拙者の方がずっとずっと美しいわ!」

 いやあ、ゾクゾクしますね。
 そんな中で、二宮和也を助けてくれるのが古参の御三之間メンバーである阿部サダヲ。色恋沙汰ではない男同士の友情がこんなにも美しいとは知りませんでした(笑)。阿部サダヲって良い役者ですね。

 ところで当時の将軍は七歳の徳川家継。当然、女の子(笑)。
 これが突然、病没してしまい、紀州家より次代の将軍が選ばれて……。まさか。

 颯爽と白馬にまたがりパカランパカランと駆けていく徳川吉宗(柴咲コウ)!
 やはり吉宗は誰が演じようと白馬に乗るものなのか。
 面白いのは将軍以下、吉宗周辺の人物は全員、名前がそのままなのである。

 だから南町奉行、大岡越前も女性(板谷由夏)、加納久通も女性(和久井映見)。うわ、ジイが女性だ(笑)。
 直情径行の柴咲コウに、和久井映見が「まぁまぁ上様……」とサポートする図はまさに 『暴れん坊将軍』のパロディである。これは笑える!
 この映画は、男女逆転『暴れん坊将軍』だったのだ!

 しかも吉宗はお忍びで城下へ視察に出たりもする(町娘の格好で)。
 そのまま世直しのチャンバラまでやってくれるのかと期待したが、さすがにそれは無い(笑)。

 この視察シーンで更に江戸城下の興味深い風景が披露されます。
 やはり吉原のシーンは凄いね。
 男女逆転なのだから当然、吉原で客引きしているのは「美しい男」達である。仕切っているのは「遣り手親爺」。アホなコンセプトを大真面目に映像化しようとするスタッフの意気込みが感じられます。

 特筆すべきは花魁道中。
 超絶に美しい──でも男──花魁が堂々と歩いて行く。歌舞伎役者もかくやと云う場面である。台詞はないがここは実に印象的な場面でした。
 パンフレットによると、この花魁役は都若丸と云う人。大衆演劇『都劇団』の座長であるそうな。ネットで検索すると「女性に大人気のイケメン揃いの劇団」──と出た。
 なるほどねえ(笑)。

 まぁ、それから色々とあって二宮和也は柴咲コウの目にとまり、「お手つき」役を命じられるのであるが……。実は大奥内で進行する権謀術数にいつの間にやら巻き込まれていたのであった。
 果たして二宮和也の運命や如何に──。

 うん。結構、面白く興味深いドラマでした。ひょっとして、最近の時代劇映画の中では一番面白いのではないかな?




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