マッチョなバイキングの中で、仲間外れにされている落ちこぼれのひ弱な少年──でも頭はキレる──と来れば、『小さなバイキングビッケ』でしょ。
しかし『ヒックとドラゴン』はイギリスの有名児童文学が原作だそうな(知らんかった)。全八巻か。主人公の年齢も若干高いし。
なんか原作ではドラゴンと共存しているバイキングの部族の物語らしいが、これはその前日譚。映画オリジナルの物語だそうな。
動物と少年の交流を描いた物語として、基本的な部分はきちんと押さえた作りになっているのが嬉しいです。基本的にユーモアを交えたサクセスストーリーなのがいい。
邦画だと動物を使った途端、妙に感動させて泣かせようとする話にしてしまいがちですからね。落ちこぼれの少年も泣いたりしない。実にポジティブな描かれ方をしている。
監督・脚本はディズニーで『リロ&スティッチ』を手掛けたクリス・サンダースとディーン・デュボアのコンビですが、ドリームワークス製作のアニメなのでディズニー作品とはひと味違います。
子供向きの映画に見えて、なかなかシビアな展開や、ハッピーエンドではあるにしても丸ごと全部ではないという演出に、ディズニーでは制約があって出来なかったことをしたかったのかなと想像してしまいます。
脚本が面白いので、CGアニメかセルアニメかはこの際どうでもいいです。
どうでもいい──とは云うものの、ナンでもカンでも3D上映にするという流行りは如何なものか。そんなに飛び出して見えなくても充分面白いのになあ。
CGだから3Dにしなくては駄目だという決まりがあるわけではなかろうに。
2Dで観る方が楽だし、お子様は絶対そうして観るべきである。
まぁ、確かにドラゴンに乗って飛翔するようなシーンは、3Dにして観たくなるでしょう。『アバター』でもやってましたけど。
どっちかと云うと、そういうダイナミックなシーンよりも、ティーンエイジな息子との会話がぎこちない父親との関係とか、村一番の美少女の気を引くためのあの手この手とか、やってることがフツーのファミリードラマや学園ドラマであるのが楽しいデス。
ポジティブな主人公はドラゴン退治に参加させてもらえないのを悲観せず、逆にいろいろな仕掛けを考案する。
「おまえの腕じゃドラゴンを撃ち落とすなんて無理だろ」
「そう。僕の腕じゃね。でも僕の代わりにコイツがやってくれる」
新発明のドラゴン迎撃装置。
このあたりの展開はまさに『ビッケ』を彷彿とするのですが(笑)。
それにしても火を吐き空を飛ぶドラゴンに果敢に立ち向かうバイキング共のマッチョ振りは笑ってしまいます。逆にこの描写が、ドラゴンとは身近にいる実在の野獣であるというリアリティに通じている。なかなか巧いデスね。
ドラゴンの動物的な仕草や習性の描写にスタッフはかなり気を遣ったそうな。
そして──えらく簡略化されてはいるが──単なる害獣扱いだったドラゴンの知られざる生態が明らかになり、やがて原作通りの共存関係が築かれる。
まぁ、そんな単純でいいのかと思わなくもないが、結構クライマックスは怪獣映画並の迫力なので良しとしましょう。
シンプルかつオーソドックスなドラマですが、私は気に入りました。
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