「この映画はフィクションであり、登場する人物、団体、云々……。特に○○さんとは無関係です。クソ女め!(Bitch!)」
脚本家の失恋体験がそのまま映画化されたらしい(笑)。
そう、これは失恋物語なのです。決して成就しない物語なのです。題名からして、五〇〇日と期限を言明しているし。
また、時系列を完全にシャッフルした演出というのが、恋愛映画にしては珍しいです。
恋愛映画版『スローターハウス5』(1972年)とも申せましょう。回想シーンではありません。
主人公トムの〈恋愛カレンダー〉が画面に表示されます。
このカレンダーは(001)から(500)までのカウンタになっています。
当然、(001)で、トムがサマーに一目惚れする。
(004)初めて挨拶する。
(028)職場の飲み会で親しくなる。
このまま順調にいくのかと思いきや、一気にカウンタは(280)まで進む。
そこでは失恋したトムが台所で片っ端から皿を割りまくっている。同僚達が必死になだめているが効果なし。何故、こんなことに?
こうしてカウンタは過去と未来を行きつ戻りつしながら、何がどうなっているのかを解き明かしていく。ほとんど時間テーマSFのようです。
原因と結果が前後しながら展開していくので、あとになって会話の意味や、行動が腑に落ちるという演出は巧いですね。まさにSFのタイム・パラドックスみたいで、なかなか面白い。
破局が前提なので、観ていて実に切ない。
(100)前後のトムの有頂天な有様と、(300)前後の失意のどん底描写が交互に描かれ、その極端な対比が笑えてしまう。
本作は、恋愛に免疫のない草食系男子が、精神的に鍛えられていく記録とも取れるでしょう。
トム役はジョゼフ・ゴードン=レヴィット。
誰かと思えば『G.I.ジョー』のコブラ・コマンダーではないか。今度はこんなヘタレの草食系男子役とは。芸達者やねえ。
サマー役はズーイ・デシャネル。『銀河ヒッチハイクガイド』のトリリアンですね。今回もまたエキセントリックな押しの強い女の子だなあ(笑)。
しかし、私としては恋愛の成り行きよりも、他のことが気になってしまいました。
結局、カウンタは(500)までしか回らないし、破局は(280)より以前にある。
初デートが(030)だから、交際は半年程度の筈だ。
先に判ってしまうのですが、トムは失恋した所為で、衝動的に仕事を辞めてしまうのです。なんという短絡的な!
しかも実話ベース。実体験した脚本家も、本当に仕事を辞めてしまったらしい。
半年そこそこしか交際が続かなかっただけで!
この不景気な御時世に正気の沙汰ではない(いや、日本の物語ではないけど)。
今の日本を舞台にしたら、こんな物語はリアリティを失ってしまうでしょう。
〈就職氷河期〉が続く日本では、どんなに失恋がショックでも仕事を辞めたりしないと思われるのですが。
いや、若い奴はそうなのかな。私が歳食っているだけなのか?
しかしアメリカというのは、どうやらそんな後先見ない短絡的な行動も許容されてしまうらしい。
物語としてはカウンタ前半の恋愛物語よりも、後半のトムが立ち直っていく様子の方が興味深いデス。
そして(400)あたりからトムは立ち直り始め、(500)で遂に過去を払拭する。
平行して新たに就職活動を始めて、職を探し始めるのですが……。
そんなに簡単にいくのかよ。アメリカではそうなのか?
お国柄というか、そんな社会的背景の描写の方が妙に気になってしまいました。うーむ。
そして(500)日目。
面接試験の待合室で、トムは自分と同じように面接の順番待ちをしている別の女の子と言葉を交わす。エキセントリックなサマーとは違ったタイプの女性で、なかなか好感のある女の子だ。
トムも失恋を経て、女性との会話にもう臆することはない。
素晴らしい。成長したな、トム。
「あなたも面接を受けるの? ライバルだね」
「よかったら面接の後で食事でもどう?」
「いいわよ。私、オータムって云うの」
この瞬間、カウンタは(500)から(001)にリセット。The End。
夏は過ぎ去り、次の季節が到来したらしい。
今度こそ、トムの恋が上手くいきますようにと願わずにおられません。
マーク・ウェブ監督は、MTVでミュージック・ビデオを手がけており、これが長編映画初監督作品だそうな。この手の監督は映像的なセンスがあって、なかなか面白いデス。
舞台となる街にLAを選んだのも、監督のセンスでしょうか。
NYみたいに特徴的でないと思うのですが、こうして観るとLAも捨てたモノではないという感じです。
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