A: 子供の頃に読んだ作品では……
リンドグレーンの児童文学諸作品『長靴下のピッピ』、『名探偵カッレくん』、『やかまし村の子供達』……くらいか。
さもなくば、警察ミステリ〈マルティン・ベック〉シリーズとか。
あとはアニメですが『小さなバイキング ビッケ』と『ニルスのふしぎな旅』──原作の方は読んでません。以上。
しかし、これからはスウェーデンと云えば、コレになるのか。
スウェーデン映画とは珍しい。
欧州系の映画の中でもなかなかお目にかかれるものではありませんが、これはもうドイツ映画にもフランス映画にも負けない──と云うか、ハリウッドすら凌駕したと断言しましょ。
まぁ、台詞がスウェーデン語でなければ、ハリウッド製のサスペンス・ミステリかと勘違いしそうなくらい出来がよろしいデス。
そして、面白い。
二時間半もある大作ですが気にならない。
うーむ。これは原作を読まないとイカンかのう。
昨年、早川書房から原作が出版されたときには、あまり食指が動きませなんだが、映画の方は傑作と云って差し支えない。
惹句の「ベストセラー」は伊達ではないらしい。でも三部作で、ソフトカバー各上下巻はキツそうだなあ。
原作者スティーグ・ラーソンは元雑誌編集者で、これが作家デビュー作でありかつ遺作になったという、イキナリ〈伝説〉になってしまった人ですね。
出版前に三作書き上げていたと云うから、この三部作が最初で最後か。
急死前の作者の構想では、全五部作の予定だったそうだが……。実に惜しい。
主人公が雑誌編集者──「ミレニアム」というのが誌名──というのも、自身の分身であるからなのか(笑)。
そしてこの、いささかくたびれた中年オヤジの編集者とコンビを組むことになる相棒役が、世代の離れた若くてパンクでハッカーの姐ちゃんというのも面白い。もうピアスやらタトゥーやらしまくりで、その上、愛想なしの姐ちゃんなので水と油な二人です
邦題の『ドラゴン・タトゥーの女』とは、実はこの相棒役の女ハッカーのことでした。
本筋の事件とは関係ないぢゃん!
この姐ちゃんのキャラが立ちまくりなので、邦題にされてしまった様です。原題は邦題とは全然関係なく、直訳すると「女を憎む男」となるそうです。確かに女性への偏見やら、暴力やらが本作では重要なモチーフになっています。そしてそれはシリーズ全篇を通して描かれていくそうな。
本筋は、大企業グループ創始者からの直々の依頼で、四〇年前に失踪した──おそらくは殺害された──娘さんの事件を解明してもらいたいというもの。大々的捜索を行いながら迷宮入りとなった事件を、今更掘り返して何になる──と思いつつ、諸般の事情により引き受けてしまったオヤジ記者がブチ当たってしまうスウェーデンの歴史の暗部と、恐怖の連続猟奇殺人事件……。
親族経営な大企業経営者の一族、と云うと何やら横溝正史的なドロドロな人間関係なのですが、スウェーデンだとあまり陰湿な感じがしないのは、観ている側が日本人だからでしょうか。
一族の歴史の中に、ナチス党シンパがいたり、「親族の一人は冬戦争で戦死したのぢゃ」なんて台詞がいかにも北欧です。金銭の単位も「クローネ」ですし。
事件と関係ないけど、背景となるスウェーデンの森と湖な風景も興味深い。これが米国製映画ならカナダあたりでロケしているのかと勘違いしそうです(笑)。
世代も性格も正反対な二人が探偵役になるという、正統派のバディ・ムービーです。もう堂々たる直球ど真ん中。
もう今から、今年のベスト作品に入れておこう。
● 余談
これが第一作目の映画化と云うことは、この先もちゃんと映画化してくれるのだろうか、と心配になりましたが……。
エンドクレジット後に、デカデカと「特報」! 第二作目の予告編付きである。
素晴らしい。第二作目は既に映画化されていたのだ! 配役もスタッフもそのままとは嬉しい限りです。
年内に第二作目の公開。最終巻も近年中に製作されるとか。
タランティーノが映像化を熱烈希望していたそうですが、これはスウェーデン映画のままの方がいいと思いますねえ。
その前に、日本での公開劇場数をもっと増やすべきでしょう。
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