なんかもう原点回帰したようなハジケっぷりは、観ていて笑ってしまいそう。
劇中、誰がどう見ても「モンティ・パイソンかよ!」とツッ込んでしまうシーンがあります。
昔は写真をコラージュした低予算アニメで済ませていた場面も、今やそれをそのままCGでドカーンと表現できるようになったのですねえ。
映像的にはパワーアップしたが、あの独特のセンスは昔のままデス。
あの現実から幻想世界へ、CGを使わずにシームレスに場面転換していく演出は『バロン』(1988年)の頃のままだ。嬉しくなりました。
どう見てもオンボロでショボい〈幻影館〉のセットが、見事に異世界へと繋がっていく。流石デス。
脚本が『未来世紀ブラジル』(1985年)、『バロン』のチャールズ・マッケオンなので、実に私好みのギリアム作品になりました。ギリアムは今後もマッケオンとずっと仕事を続けて戴きたいです。
で、主演のヒース・レジャーですね。
これが本当に遺作になるとは信じられません。鳥の仮面を被った、あの白いスーツ姿は実に印象的です。ほんの瞬間的ですが、仮面から覗く目の演技にゾクリとしました。
また今年も何か受賞しそうな気がする。
三人の代役──ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル──も素晴らしい。まぁ、一番人気がジョニデなのは仕方ないでしょう。でも実は三人の代役の中では、一番出番が少ないのですが。残念。
ジョニデ > ジュード > コリンの順に出番が多くなっていきます。だからクライマックスはコリン・ファレルの独壇場だったりします。
クリストファー・プラマーが悪魔と取引してしまったパルナサス博士役ですが、当初はこちらが主役の筈だったとか。ヒースの急逝後、脚本に変更が加えられて、ちょっと割を食った感じなのが可哀想です。
博士の愛娘役であるリリー・コールが、何となくユマ・サーマンに似ているのはギリアムの好みなのかしら。
脚本の修正の所為か、悪魔とトニーの関係とか、トニーの額の文字の意味等の説明がスルーされた感があり、若干残念ではありますが、どこまでが当初の構想通りなのかはもう判らなくなってしまいましたね。
マッケオンの脚本だからなのか、ラスト近くはかなりダークで後味悪くなっていたり、脇役はバッサリ退場させられてフォローなしだとか、宙ぶらりんな感覚のまま放り出されるラストは、好みの別れるところでしょうか。
でも、だからこそ好きなんですけどね。
● 余談
さて、社会復帰のリハビリも済ませたギリアムは、遂に『ドンキホーテを殺した男』の再製作に着手するとか。
『ロスト・イン・ラマンチャ』(2001年)のラストに流れた予告編から、十年か。
「近日公開(Comming Soon)!」と云った割には待たせやがったな。
『Dr.パルナサスの鏡』は間違いなくギリアムの代表作の一本となるでありましょうが、私としては最高傑作は『ドンキホーテを殺した男』であると信じたい。
頼んますぜ、ギリアム大先生。
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