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2008年12月30日火曜日

252 生存者あり


ワーナー・ブラザーズのロゴも表示されるところを見ると、既に海外での配給も決定しているらしい。うむ、これならば海外に出品しても恥ずかしくない出来ではある……のかなあ。

本格的ディザスター・ムービーと云うか、パニック映画が日本でも制作できる時代なのだなあ。CGが凄いのはもはや当たり前の御時世ですが、実物大セットの迫力も素晴らしいです。ある程度の背景はCG合成らしいが、実にさりげなくて違和感なしなのがいい。
アニメ作品以外でも世界に通用する──かも知れない。

ちょっと控えめなのは、やはり「邦画的お約束」がここでも連綿と受け継がれているのがね、気になるところなので。
つまり必要以上に情に訴え、台詞にして強調し、感動の場面では臆面もなくスローモーションになるのである(笑)。
様式美と云うか、伝統芸能の域なのかなぁ。

とりあえず災害シーンは迫力満点。続くサバイバルとレスキューの同時進行も、展開がダレることなく緊張を維持してドラマを引っ張っていくので満足できます。このあたりの脚本力は充分合格。
特にサバイバル側に発生する難問の解決に、様々な小道具がきちんと伏線を張りつつ登場して使用され、各キャラクターの設定が無理なく説明されていくあたりに脚本の緻密な計算を感じました。

そしてこれを演じる俳優達も巧い。
主役は伊藤英明と内野聖陽ですが、助演の山田孝之、香椎由宇、木村祐一らがいい味出してます。あと子役の大森綾音ちゃんが実に健気で可愛い。

大地震と巨大台風で東京湾岸一帯が壊滅する訳ですが、このメカニズムの説明にびっくりしました。
まず小笠原近海で海底地震発生。海底火山の影響で水温が上昇し、海底のメタンハイドレートが連鎖的に分解されて、大規模なメタンのブローアウトが発生。
これが更に気温上昇を招いて、巨大台風が発生する──という仕組み。
はて、これとよく似た説明をつい最近も読んだような……。

そうだ。『深海のYrr』に「メタンハイドレートの連鎖崩壊と、それに続く大規模な津波の発生」のメカニズムが描かれていたのであった。おお、なんか非常にタイムリー。
偶然とは云え、やはり「メタンハイドレート」というのはトレンドな代物なんですかね。

前半の見所はこうして発生した津波が東京湾を直撃する場面。
まず真っ先にお台場が壊滅。フジテレビの社屋が完膚無きまでに崩壊する──って、いいのか? 日本テレビ製作の映画なのに、他局のビルを壊しちゃって?
でもそのまま津波は直進して、レインボーブリッジをブチ壊し、浜離宮を飲み込み、その先にある竹芝の日本テレビもタダでは済まない。自社のビルも怒濤の高潮に飲み込まれていく(笑)。容赦なしやね。

そして後半は悪天候の中、人命救助に尽力するハイパーレスキュー隊の活躍が描かれる訳ですが、やはりレスキュー隊にスポットが当たるあたりに、近年の実際の災害時の報道映像が影響しているのを感じます。
昔なら、サバイバル側の被災者の中にジョージ・ケネディがいて、それで全員助かるのですが(笑)。

まぁ、ラストでの感動シーンの強制的な引き延ばし戦術を──とにかくくどい位に引き延ばす──我慢すれば、とても良くできた映画と云えるでしょう。
伊藤英明は、ブルース・ウィリスに並ぶ不死身のダイハード・マンとして映画史上に名を残すことでしょう。フツー、死ぬよな、あれは。
もうラストは有無を云わさず、泥だらけの伊藤英明のアップで締めくくる。
ある意味、とても強引ですが、爽やかに終わってくれたので良しとしよう。


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深海のYrr 〈上〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)

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