引退宣言した筈だ、と思っていたのになぁ、宮崎駿。
前作『ハウルの動く城』以来四年ぶりの新作です。
やはり息子の宮崎悟朗とは違うのだ、と格の差を見せつけた感じですなあ。父が偉大すぎるのも困りものだが。
今回もまた、職人芸的な緻密さで肩の凝らないエンターテイメント作品を仕上げてくれました。オールドファンからすると「どこかで観たような……」というシチュエーションが散見されるのですが(笑)。
宮崎駿はやはり低年齢層向けのアニメを作る方が似合っているのだろうか。
『となりのトトロ』路線の二番煎じかなあ、というのは杞憂でした。結構、凄いです。
『ハウル』の何倍もイイ(笑)。
物語はシンプル。人間になりたいと願ったポニョが大騒動を巻き起こして、なんか地球滅亡の寸前までいってしまうけど、事態は収拾されてめでたしめでたし。
なんとなく「それでメデタシ? 相当、ヤバそうなんですが、誰もポニョを責めないの?」と思ってしまうあたりが、もう私は純真ではないのだと思い知らされます(汗)。
でもバラードの『沈んだ世界』になっちゃうのですが……。
宮崎駿は「都市や街が水底に沈む」場面が好きなんだねえ(笑)。
動画としてのダイナミックな動きは、しかし特筆ものです。あの凄まじい大嵐と大洪水の場面は必見と申せましょう。波の動きが「巨大な魚」のように見えるというイマジネーションは、宮崎駿の真骨頂か。海外のアニメでは観ることは出来ないでしょう(今後は模倣されるのだろうけど)。
デジタルを駆使した作画工程は、もう飽きたというか、やっていて楽しくないことに気がついた宮崎駿は、今回は徹底したアナログに拘ったのだとか。背景が色鉛筆で塗られた画であるというのは割と気に入りました。でも一部、マリンスノーの描写はCG合成でしたが。
宮崎駿のコメントによると、物語の元ネタはアンデルセンの『人魚姫』だそうな。ディズニーとは随分違う仕上がりになりましたなあ(笑)。
ポニョも「魚形態」と「女の子形態」の間に、「半魚人形態」が挟まれている。
ディズニーではそんなことはしないね。うーむ。なんか可愛いインスマウス(爆)。
「魔法が平然と現れる世界」というのが宮崎駿のコメントにありましたが、どっちかと云うとそんなファンタジーな設定よりも、「ポニョが〈人面魚〉であると認識されている設定」の方に驚きました。
いや、てっきりポニョのデザインは擬人的な表現であり、登場人物には「普通の魚」に見えるのだろうと思っていたら、劇中でも「あら〈人面魚〉じゃないの」という台詞がッ!
やっぱり登場人物にも〈人面魚〉に見えているのだ(笑)。
しかしそれなら〈人面魚〉がナチュラルに存在するより、最初から〈人魚〉がいる世界にしてしまう方が良かったのでは……。
『人魚姫』らしく、ポニョを人間にする方法には、男の子の協力が不可欠。父親のフジモトが「あの方法は失敗すれば泡になって消えてしまう」と心配する一方で、母親のグランマンマーレは「私たちは元々、泡から生まれたのよ」と軽くいなしてしまう。
このあたりに宮崎駿の自然観というか、グランマンマーレの非人間な部分が現れていて、興味深い。
あとは声優陣のキャスティングですが、今回は割と巧くいった方でしょう。あまり違和感は感じませんでした。
ムスメはフジモトが使役する水塊が怖いと云ってました。私もヘドラみたいという印象が(笑)。
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