映画化された作品も『半落ち』『出口のない海』『震度0』等、未見です。
今回が初めて。
航空機事故の映画ではなく、大事件に遭遇した地方新聞社の一週間を追った映画。ところどころに当時の時事ネタが挿入されていて時代を感じました。
例えば「中曽根首相の靖国初参拝とどちらを一面にするか」で悩むとか(笑)。
原田眞人監督作としては年頭に『魍魎の匣』を観ましたが、今回も期待通りの出来でした。うーむ。昔観た『ガンヘッド』の方が例外的だったのかなあ。
『金融腐食列島』とか『突入せよ!「あさま山荘」事件』とか、どうせ『ガンヘッド』の監督だしィと云う理由でスルーしていたのだが……。
それとも近年になって腕を上げたのかしらん?
とにかく役者の魅力が最大限に引き出されています。
主役の堤真一は勿論ですが、堺雅人の演技が特筆ものでした。素晴らしい。
堺雅人はNHKの『新撰組!』で〈いつもニコニコの山南総長〉役でしたが、今回はもう主役を食う勢い。
他にも山崎努、蛍雪次朗、遠藤憲一、田口トモロヲ等、皆すごいです。個人的には滝藤賢一が好きです。最初は堺雅人の影に隠れていたカメラマンでしたが、凄惨な事故現場に遭遇し、精神のバランスが崩れていくという鬼気迫る役でした。
ただ一人、高嶋政宏は……大きくクレジットされている割に、出番が少なかったのが腑に落ちぬ。しかも本筋とはあまり関係ないし。
この映画を観て「あぁ新聞社にだけは勤めたくない」とマジで思いました(爆)。
あんな入稿と締切に追われてギリギリする職場はイヤぢゃあ。
蓄積していく疲労に反して、緊張の連続から高揚していく精神。まさに「クライマーズ・ハイ」な状態の編集部の描写がリアルです。
俺も上司にタメ口ききてェ!
しかしこの題名に引っ掛けて、堤真一の趣味が登山である、という設定はイマイチピンと来ない演出でした。部分的に、職場の人間関係をザイル・パートナーに例えるセリフが、判りやすかったけど……。
それでも実際の登山シーンは邪魔なだけでしたねえ。
日航機事故の起きた1985年と、現在の対比なんかする必要あったのかなあ?
原作の小説ではそれなりに意味のある場面なのかも知れませぬが、映画化に際してそこはバッサリ切った方が良かったと思います。
でも完全に削除すると、主人公が辞表を叩きつけた場面で終わってしまうので、余韻を出すにはああするしか無いのか。
それともオリジナルで、現在の御巣鷹山の山頂から堤真一が過去を振り返るというラストシーンにしても良かったような。
ところで『クライマーズ・ハイ』の中でたびたび言及されている「オオクボレンセキ」という単語が最初はピンと来ませんでした。
部長、次長クラスの管理職連中は、その昔「オオクボレンセキ」時代の現役記者だったことをいまだに鼻に掛けている――というような否定的な意味で使用されている用語でした。
実はこれは、71年の大久保清事件と、72年の連合赤軍事件のことだったのね。
舞台が群馬県の地方新聞社だから、群馬県発の大事件というのは長い間、この二つだったという意味。
つまりその後、85年の日航機事故まで群馬県では大きな事件は起こっていなかったという……(笑)。
そのあたりの台詞の説明をもうちょいと何とかして欲しかったなあ。
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