NATOとアメリカが多額の賞金をかけて何年も追い続けている民族浄化の戦争犯罪人を数人のジャーナリスト達が追い詰めていく――まさに「事実は小説より奇なり」。
ボスニア・ヘルツェゴビナにはあまり馴染みがない。サラエボで冬季オリンピックが開催されたのは四半世紀近く昔(1984年)か。あの頃はユーゴスラビアという国がまだあったのだ……。
などと感慨にふけってしまいました。まぁ、ちょっとは近代史のお勉強になるかも――と云うのはウソです(結構、誇張がある)。
やはり民族浄化の所為で、「セルビア=悪」という図式が定着しているのだろうか。この映画でもセルビアは危険な国として描かれていて、セルビア人が観たら国辱モノかも知れない。
そう云えば『エネミー・ライン』もセルビア軍が悪役だったなあ。
パンフレットに複数のジャーナリストが寄稿していて、それぞれにセルビアを擁護したりボスニア側も批判していたりするのが興味深い。
そもそも旧ユーゴ諸国はあまりハリウッドでは題材にならない。少しでもこれらの国に触れた映画で記憶に残っているものというと……。
『ピースメーカー』『エネミー・ライン』『ハンテッド』くらい。自分の好みが如実に表れとる(汗)。
あとは地理的に「ネレトヴァ川」くらいしか憶えてない。
おお、ネレトヴァ川で思い出すのは、アリステア・マクリーン原作の『ナバロンの嵐』ですな。あれも一応、ユーゴスラビアが舞台か。
いかん脱線した。
本当にサラエボでロケしたので、かなりリアルではある。やはりかつての五輪スタジアムの壁一面に弾痕がついているというのはショッキングな映像です。
スキー場のゲレンデを眺めてリチャード・ギアが云う。
「ここではもうスキーなんか出来ない。地雷がバラ撒かれてるからな」
冬季五輪の舞台ともなった場所なのに。
主演のリチャード・ギア以外には、あまり知った俳優さんはいません。相棒役のテレンス・ハワードもイマイチ他の作品は観てない。あとはチョイ役のダイアン・クルーガーくらいか。
しかし意外にもリチャード・ギアがいいのである。
大体、ギアはロマンス系作品にばっかり出る人なので、この手の非ロマンス系の出演作では『ジャッカル』以来か?
アレはヒドかった(笑)が、今回は例外中の例外かも。
かつての花形キャスター、今や身を持ち崩した報道ゴロという役が板に付いている。
この映画はボスニア紛争にまつわるドキュメンタリと云うより、紛争地を取材してアドレナリンを出してないと生きる実感が伴わないジャーナリスト共の生態の方がリアル。〈紛争地ハイ〉な困った人達ですね(笑)。
ギアは例の〈チベット弾圧〉でも一家言ある人なので、次回作では是非、チベットを題材にして欲しいものですね。
で、実話ベースではジャーナリスト達は戦犯カラジッチを最後まで追うことが出来ないまま国外退去となるので、映画なりの結末を用意している。リチャード・ギアはこの部分にだけは批判的で、観客としても「そりゃフィクションだろ」とツッコミ入れたくなります(笑)。
まぁ、何らかのカタルシスが必要なのは判るけどさあ……。
全体的には、オフビートなユーモアを交えた社会派サスペンス映画としては良くできているでしょう。
最後に登場人物達の写真を出しながら「この人は実在した」「この人は創作した」と種明かしをするエンドクレジットが笑えます。
チョイ役のダイアン・クルーガーは……。
──この人は実在した(でもホントは男性だった)。
がーん。何か裏切られた感じが一番するのは何故でしょう。
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