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2008年3月26日水曜日

スルース

(SLEUTH)

 幾つかのサスペンス映画やミステリ映画のガイド本のすべてに必ず載っている古典『スルース/探偵』(1972)のリメイクです。それほどの映画だというのに、何故に上映している劇場が限られるのだ。
 ほとんどミニシアター系な扱い。理不尽だ。
 とは云うものの、実はオリジナル版を未見だったりするのです(恥)。でも多分、このリメイク版がDVD化される際には、オリジナル版も一緒にDVD化されるのであろうなあ。

 元々は舞台劇だそうだが、映画化されても同じ設定で、登場人物はたったの二人だけ。「夫」と「妻の愛人」のみ。通行人のエキストラもなし。
 最初から最後まで室内劇。オリジナル版ではまだ英国式庭園の風景も仕掛けのひとつだったらしいが、リメイク版はもうそれすらない。
 その代わりに室内装飾が超モダンなハイテク仕掛けになって、それはそれで面白いが古典的な趣はないなあ。

 オリジナル版では「夫」役にローレンス・オリビエ。「妻の愛人」役にマイケル・ケイン。
 リメイク版では「夫」役にマイケル・ケイン。「妻の愛人」役にジュード・ロウ。
 マイケル・ケインはこれでどちらの役も演じたことになる。きっと三十年後には、今度はジュード・ロウが「夫」役になって再リメイクされたりするのであろう(笑)。

 聞くところに拠るとオリジナル版は洒落た会話と凝った美術が楽しいらしいが、リメイク版はかなりハードかつ怪しい雰囲気の映画に仕上がっています。
 なんちゅーか、男の色気むんむん。
 若いジュード・ロウに色気があるのは当然として、枯れてる筈のマイケル・ケインにまで色香が漂うのは驚きです。さすがベテラン。

 設定としては単純で、離婚に応じようとしない初老の亭主に、妻の愛人が離婚手続きの催促に来るという物語。そこから始まる男同士の虚々実々の駆け引き。
 この場合の「スルース」は、「探偵」というよりも「腹の探り合い」という意味ですね。

 ガイド本によるとオリジナル版は会話が饒舌で136分もあるそうだが、リメイク版ではグッと凝縮されて89分。もう無駄を省いた脚本の妙というか、台詞よりも無言で見つめ合う役者の演技の方に圧倒されました。
 この脚本のハロルド・ピンターとは、ノーベル文学賞の受賞歴まであると云うお方だそうな。あんまりヨーロッパ映画には縁がないから……。
 でも監督のケネス・ブラナーの方はよく知ってます。と云うか最近は監督業の方ばかりで役者としてはあまり見かけなくなったのう。

 スタイリッシュでモダンなセットと美術に、火花散らす男の演技合戦。
 しかしこの結末はどう解釈すればいいのだ。
 あまりにも切れ味良くスッパリ終わってしまうので、余韻がないというか、どっちがどう勝ったのかなあ――とチト考えてしまいました。


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