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2013年6月17日月曜日

宇宙戦艦ヤマト 2199

第六章 到達! 大マゼラン

 第五章『望郷の銀河間空間』を経まして、本シリーズもいよいよ佳境であります。
 第六章は、十九話から二二話まで。大マゼラン銀河に到達したヤマトと好敵手ドメル将軍の七色星団での決戦から、ヤマトが目的地イスカンダルを目前にするまでが描かれます。
 TVでの放映なんぞ待っていられるかと、想いを同じくする皆さんでイベント上映のシネコンは毎回、ほぼ満員御礼のようです(いや、私は端から待つ気ナシですが)。
 前章で謀反を起こし、討伐されたゼーリック総監に続き(返す返すも惜しい方を)、今回はドメル将軍(大塚明夫)までも散ってしまわれると判っているので、その最期をしっかりと見届けるべく、観る前から気合い入れまくりデス。

 まずは暗殺未遂事件後、フラーケン艦長(中田譲治)の特務艦に救出されたデスラー総統(山寺宏一)がガミラス本星に帰還する場面から幕開けです。宇宙服を着て、特務艦の甲板上に立ってガミラス星を眺める総統の姿は、何となくキャプテン・ハーロックみたいです。
 「この星にしがみついて何になる」と何やら憂いに満ちた呟きを発する総統。やはり遷都を考えておられる様子。しかし遷都の前に片付けねばならない問題がありました。

 実はバラン星はガミラス帝国の超航法ネットワークのハブであったと云う、意外な事実が明らかにされます。銀河先史文明の遺した亜空間ゲートによるネットワークで各星域は結ばれていたところを、ヤマトがハブの中心であるバラン星を破壊した為に、エラいことになっている。
 帝国の各地方で流通網が寸断されると云う深刻な事態。バラン星の爆発から逃れることが出来た残存主力艦隊も、ゲートなしの自力ワープ航行のみではガミラス本星まで帰ってくるのに三ヶ月はかかると云う有様。先史文明の遺産って、高性能だったのですねえ。
 生き残ったゲール(広瀬正志)が艦隊をまとめて帰還途上にあるも、ヤマト迎撃には間に合いそうもありません(最終回にも間に合わんか)。

 他の星域からヤマト迎撃の兵力をかき集めることも適わず、本星に残された艦と兵士だけで何とかしなければならない。ことに人材が足りないと云うのが致命的です。
 どうにもガミラス帝国は異常なスピードで版図を拡大しているらしく、それに伴う防衛任務に就ける人材が払底しているようです。アンドロイドの機械化兵が大量生産されているのも、兵士の数が足りないからと云う裏の事情があったのでした。
 そこまでして版図を拡大しなければならない理由は何でしょう。単なる総統の野心だけでは片付けられないものを感じるのデスが……(深読みしすぎでしょうか)。

 「君には不愉快な思いをさせたね」と総統直々に謝罪され、死刑判決撤回の計らいに感謝するドメル。是非ともヤマト迎撃の任を私に、と総統に願い出ます。ヤマトを沈めた暁には、奥方の反逆罪も減刑されるとあっては、やらないわけにはいかんでしょう。
 しかし名将ドメル将軍と云えど、この状況でのヤマト迎撃は厳しい。
 実はギムレー(森田順平)麾下の親衛艦隊が本土防衛に残っているものの、親衛隊の力は借りたくないと云う事情もあるようです。かき集めたのは、空母が四隻、老兵と少年兵ばかり。
 出撃を前に閲兵するドメル将軍の表情は暗い。「艦は古く、兵は幼い」

 実はガミラス人以外の二等臣民兵士も召集されていますが、ガミラス人将校に「奴らは信用ならん」と差別されている図が、戦争映画に於ける連合軍内の日系兵士の扱いを彷彿します。
 そこで突然、一人の若い兵がガミラス国歌を歌い始める。民族間の差異はひとまず措いて、将軍から一兵卒に至るまでが国歌を唱和するのが感動的です。歌の力は偉大ですねえ。
 この場面はモロにケン・アナキン監督の『バルジ大作戦』(1965年)へのオマージュだったので笑ってしまいました(ああ、パンツァーリートをカラオケで歌いたいッ)。

 出撃前にタラン国防相(青山穣)から「物質転送システム」を借り受け、更に民生用の「特殊削岩弾」を積み込んでいきます。オールドファンには使い途が判っているのでニヤニヤです。
 かくして、少ない兵力と老朽艦だけで出撃するドメル。一路、決戦の場である七色星団へ。

 今般の七色星団は、大マゼラン銀河に実在するタランチュラ星雲内にあると設定されております。旧作上で描かれた「オクトパス星雲」の設定も流用されているようで、星間物質とイオン乱流の激しい航行上の難所として描かれています。
 旧作ではドメル将軍からヤマトに挑戦状が叩きつけられる展開でしたが、本作ではもっとリアルに相手の行動を読み合う流れになりました。ドメル将軍と沖田艦長(菅生隆之)の心理戦が既に始まっております。
 互いに相手の行動を読み、また読まれていることも読んでいる。ゾクゾクしますね。

 決戦前に、ドメル将軍も沖田艦長も、互いの家族の写真を無言で見つめております。この第六章は前半が完全に戦争映画のノリで展開していきます。色々な戦争映画へのオマージュがあちこちに。作り手の趣味が炸裂しておりますね(笑)。
 またアニメのテッパン演出、〈死亡フラグ〉が堂々と描かれています。出撃前にそれまで名前を呼ばれなかったパイロットの名前が呼ばれたり、コクピットに恋人の写真を貼り付けちゃイカンじゃろー。

 七色星団の決戦はほぼ旧作どおりの展開ですが、リメイク版では更に別の作戦が追加されています。これが特務艦を使用した特殊部隊のヤマト潜入作戦。
 「ヤマトにイスカンダル人が乗り込んでいる」ことは前章で明らかにされているので、デスラー総統としてもこれに対処しないわけには行きません。激しい戦闘の間にも、地球人に化けた決死隊が艦内に侵入します(肌の色の設定が遺憾なく活用されています)。目的は、ユリーシャ・イスカンダルの拉致。
 艦内での白兵戦。そして森雪がユリーシャと間違えられて掠われる。うーむ。「似ている」と云う設定がこんなところで活かされるとは流石デス。

 物質転送機による奇襲、ドリルミサイルによる波動砲封じと、旧作のままの展開ですが、その間にもコスモファルコン隊は多段式空母を撃沈していきます。前章でのドメル艦隊の圧倒的優位が、ここでは発揮できないのが辛い。
 ドメル配下の将校達も、自分達が戦闘機で出撃せざるを得ない事態ですし、双方共に総力戦の様相を呈しています。ヤマト乗組員の損耗も激しい。
 そしてドリルミサイルの反転と、イオン乱流の流れまで読んだ沖田艦長の策があたり、遂に旗艦ドメラーゼも戦闘不能に。
 総員退艦の命令を誰も聞かないドメルの部下達。旗艦のブリッジがそのまま小型艦になってヤマトの艦底に張り付き、遂に相見える名将同士。男燃えの演出が続きます。
 双方共に健闘をたたえ、敬意を表し、そして……。ドメル将軍の自爆。判っていたとは云え、哀しい場面です。

 驚くのは「それでも無事な第三艦橋」ですね。間一髪で波動防壁システムが修復され、ヤマトは損害を免れるワケですが、今般のリメイクでは第三艦橋が一度もへし折れません。旧作では事ある毎に剥離したり、脱落していたのに。
 リメイク版では驚くほど頑丈です。ひょっとしてヤマトの中で一番安全な部位なのでは。

 前半で七色星団の決戦を描いた後、後半はどうなるのかと思っておりますと、オリジナルの展開が待っています。やはりこのままイスカンダルへの直行は無理がありますか。
 実は、戦闘終了後、遂にユリーシャが目覚めると云う意外な展開もありました。こちらは桑島法子の一人二役となっておりますが、森雪と違って、ちょっと浮世離れした性格です。
 雪を掠われ、気もそぞろな古代(小野大輔)を悩ませるイスカンダルのお姫様です。

 勝利したとは云え、ヤマトの損害は甚大ですし、どこかで修理しなければならず、たまたま立ち寄る惑星が、ガミラス帝国の収容所惑星の一つ、レプタポーダ。偵察任務を命じられた古代がシーガルで発進しようとすると、ユリーシャが勝手に付いてくる。
 更に叛乱罪で営倉入りしていた伊東保安部長(関俊彦)と藪くん(チョー)も、戦闘のどさくさに紛れて脱走し、シーガル機内に潜伏しておりましたが、これまた古代と同行する羽目に。
 何とも珍妙な一行はガミラス側に捕らえられるが、時を同じくして収容所で暴動が勃発。

 ゼーリックの陰謀で逮捕されていたガル・ディッツ提督(堀勝之祐)はここに投獄されており、娘のメルダ(伊藤静)が父親救出の為に暴動を仕掛けていたという次第。ドメル将軍の容疑は晴れたが、ディッツ提督の釈放がまだだったのは、帝国当局の怠慢でしょうか。
 収容所には今まで政治犯として投獄されていたガミラス人や、二等臣民のザルツ人、更には白色彗星帝国のガトランティス人もいます(戦時捕虜ですね)。

 この暴動の中で、伊東さんがユリーシャを助けて撃たれてしまう。らしくないことをした所為だと自嘲しながらも、ユリーシャにヤマトのことを託す伊東さん。
 最後まで、森雪とユリーシャの見分けが付いていませんでしたが、勘違いしたままでも問題ないのが見事です。ここでもまた惜しい方を亡くしてしまいました。でもこの伊東さんの行動が、後々に地球を救うことになるやも知れません。

 大暴動の末、収容所惑星は反乱軍の手に落ち、ディッツ提督は成り行きから反乱軍の指導者に。そしてユリーシャがいることで、反乱軍から支援を受けてヤマトは艦を修理し、沖田艦長とディッツ提督の会談が実現します。
 いよいよガミラス帝国の転覆に向けた展開がリアルになってきました。
 辻褄合わせの脚本が見事で、最終章に向けての情報の収集と整理が行われています。
 そして知る驚愕の事実。
 ガミラスとイスカンダルは二重惑星だったのだあッ。やっとここまで来ましたか。

 しかしヤマトと反乱軍は簡単に共闘には至らず、ディッツ提督らはヤマトと袂を分かち、他の収容所惑星を解放する為に行ってしまう。今までの経緯もあり、目的も異なりますからそれは仕方がない。
 但し、連絡将校一名をヤマトに残してくれました。勿論、それはメルダ少尉ですね。
 ところで藪くんは数奇な運命のままに、ザルツ人と間違えられて反乱軍に入れられてしまいましたが、彼は地球に戻って来られるのでしょうか。

 今般のリメイク版では、ガミラス人は皆、イスカンダル人を崇拝している設定になっており(地球人には与り知れぬ事情があるようで)、そのお陰でヤマトは恩恵に与り、森雪もガミラス本星で丁重なもてなしを受けております。古代と雪が離ればなれになると云うのは、シリーズ後期──『ヤマトよ永遠に』──の演出でしょうか。色々と考えますねえ。
 シュルツの愛娘ヒルデちゃん(三浦綾乃)がミーゼラ(茅原実里)の侍女になっているのが和みます。

 そして雪がイスカンダル人ではないと判っていても、デスラー総統の計画には支障が無いのが上手いです。要は国民がユリーシャだと信じさえすれば良い。
 帝都ではドメル将軍の国葬が盛大に営まれ、その式典で総統はガミラスとイスカンダルの大統合をブチ上げます。
 「帝国の前進は、我が友ドメルも望んでいたことである」と、ドメルの死まで利用するデスラー総統。その演説中継を見て、驚くイスカンダルのスターシャ(井上喜久子)。
 とうとう生きているスターシャが描かれました。今まで、本当に生きているのか半信半疑でしたが、死亡説はこれで消滅か。

 一方、メルダが戻ってきて、山本、ユリーシャを併せた三人娘の女子会がヤマト艦内に結成されるのが微笑ましいデス。狙って設定していますねえ。
 艦内食堂でパフェ食って感動するメルダ少尉。ガミラス人はスイーツを知らなかったようデス。
 加藤・原田ペアのラブコメも順調に進展中。そんなアホなことをしているうちに、ヤマトは最後の大ワープで遂に目的地サレザー恒星系に到着。
 だがそこにはデスラー総統の次の一手が待ち受けていたのであった。

 何やら巨大な施設からデスラー砲のようなものが発射されます。かねてから遷都用に総統が作らせていた代物らしいですが、何なのかはよく判りません。
 『伝説巨神イデオン』の〈ガンド・ロワ〉みたい──とは年寄りだけが抱く感想でしょうか(笑)。
 果たしてヤマトの運命や如何に──と云うところで、つづく。
 今回のED主題歌はJAM Project の「R.I.P 友よ静かに眠れ」です。五章、六章と男燃えな歌曲が続きますね。

 さて、次回はいよいよ最終章『そして艦(ふね)は行く』です(何故、フェリーニ)。
 ガミラス帝国との決着はどうなるのか。地球滅亡前にヤマトは帰還できるのか。真田副長は「こんなこともあろうかと」と云ってくれるのか。
 ついでに、ゲールの残存艦隊は最終回までに間に合うのか(いや、無理だろ)。
 何となく、感動の完結後に「特報」と称して、第二期『ヤマト2』のリメイク製作決定なんぞと報じられたりしないものかと期待半分、心配半分です。八月の公開まで、あと少しの辛抱か。




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