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2013年4月16日火曜日

宇宙戦艦ヤマト 2199

第五章 望郷の銀河間空間

 巷では遂にTV放送が始まりましたが、イベント上映の方も相変わらず盛況です。劇場限定ブルーレイ第五巻も早々に完売か(三日と保たんとは)。
 第五章は、十五話から十八話まで。いよいよ後半に向けて盛り上がって参りました。本作では銀河間の広大な空間を踏破するヤマトの航海が描かれます。航程の半ばであるバラン星を越え、遂に大マゼラン銀河を目前にするまで。ヤマトは前章よりも更に困難な窮地に陥ります。
 そりゃもう、ドメル将軍(大塚明夫)が待ち構えているのだから、只で済むワケがない。

 まずはガミラス側の描写から。今般のシリーズではガミラス側のドラマも詳細に描かれておりますね。
 前章のラストで作戦に失敗したミーゼラ(茅原実里)がデスラー総統(山寺宏一)に、「ヤマト艦内にイスカンダル人が乗っていた」旨を報告しております。
 しかしデスラー総統は動じません。そう云うこともあろうと、軽くスルーしてミーゼラを下がらせる。寛大ですが何か思うところがあるのでしょうか。この報告の後で、総統のバラン鎮守府視察が決定されるのが、ちょっと気になりました(伏線ぽいなぁ)。
 これでまた「森雪=ユリーシャ疑惑」が深まるのですが……。

 旧作ではドラマは専らヤマト視点で進行し、ガミラス側の描写は、たまにデスラー総統やドメル将軍が必要に応じて描かれるに留まっておりましたが、今般のリメイクは帝国の現状についてヤマト乗組員が知り得ない部分まで、もっと踏み込んで描かれているのが興味深いです。
 例えば、帝国内の属州惑星で発生した叛乱と、その鎮圧についても描かれます。
 ガミラスに征服された異民族の惑星での叛乱が発生し、併せてギムレー麾下の親衛隊艦隊が叛乱鎮圧に赴くと云う趣向。

 これがもう凄まじい大虐殺。まずは叛乱勃発を許してしまったガミラス人の植民地総督を問答無用に処刑です。
 次いで、帝国に逆らう民族は殲滅だと、徹底した攻撃に移ります。冥王星でシュルツが放った大型惑星間弾道ミサイルの大盤振る舞い。誠に情け容赦のない「無慈悲な懲罰」です。
 ガミラス国家をガンガン響かせながら、惑星を丸ごと火の海にしてしまう。それも総統から許可を得るまでもなく、ギムレー(森田順平)の一存でやってしまえるところに親衛隊権力の絶大さが伺えます。

 案の定、「親衛隊はやりすぎだ!」と幕僚会議で糾弾されますが、ギムレーは涼しい顔。
 ゼーリック総監(若本規夫)も「純血こそ正義ぃぃぃぃ!」とのたまっておられる。
 しかしそんな異民族弾圧を続けていて良いわけがなく、どうにも帝都では反帝国の地下組織が暗躍しているらしいという描写もあります。なかなか帝国の政情も不安定なようです。
 しかし生粋のガミラス人の中にも、心ある支援者はいるようで、密偵を匿うドメル将軍の奥様の姿も見受けられる。
 この背景は今後、大きな意味を持ちそうです。まぁ、ヤマト一隻で強大なガミラス帝国が転覆すると云うのも無茶な設定ですから、これはそこを補完する為の伏線のように思われます。

 一方、ヤマトの方では岬百合亜(内田彩)の変調がますます激しくなっております。もはや別人のように振る舞い始める百合亜ちゃん。
 艦内食堂で真田副長(大塚芳忠)に波動理論の詳細を質問し、討論している。周りの乗組員はチンプンカンプンだが、真田さんが嬉しそうなのが微笑ましいです。
 どうやら別の人格が現れているらしく、本来の人格はその間の記憶がないらしい。

 そうこうする間も、ヤマトには補給の必要が生じ、バラン星の手前でとある恒星系に立ち寄ることが決定される。名前がビーメラ星系と云うのが嬉しいデスね。
 しかしビーメラ星を前にして、ドメル将軍の待ち伏せに遭うヤマト。ワープアウトの座標を予測され、敵艦隊の正面に出てしまうワケですが、ヤマト出現の可能性がある五箇所すべてに待ち伏せ艦隊を配置しておくドメルの作戦が周到です。
 知略に長けている上に、抱える陣容も圧倒的。包囲艦隊の重厚さには軽く絶望してしまいそうです。
 死中に活を求めるヤマトは正面突破を図り、ドメルの旗艦に真っ向から立ち向かう。沖田艦長(菅生隆之)とドメル将軍の双方のアップが素晴らしいです。ドメルの浮かべる笑みが凄みありすぎ。

 「ヤマト侮りがたし!」と例の台詞を口にしてくれるまでは良かったが、チェックメイト寸前で帝国本星からの緊急通信が邪魔をする。憤然とするドメルに、血相を変えたヒス副総統(秋元洋介)が帰還命令を告げる。
 お忍びでバラン鎮守府視察に出たデスラー総統の艦が消息を絶ったと云う。
 あと一歩でヤマトを仕留められると云うのに水を差され、全艦隊に撤退命令。取り残されたヤマトの乗組員は唖然とするばかり。沖田艦長も再び倒れてしまう。
 いや、今回はホントに危なかった。やはり正面から戦ってドメル将軍に勝つのは至難です。

 ガミラス側がゴタゴタしている隙にビーメラ星に立ち寄るヤマトですが、こっちはこっちでまた大問題が発生します。旧作でもありましたが、艦内での叛乱勃発です。
 イスカンダル到着前にこのエピソードを持ってくるのが興味深いです。するとイスカンダル到着後には別のネタが用意されているのでしょうか。
 古代(小野大輔)とアナライザーを伴った補給チームが艦を離れたタイミングで、イズモ計画派が艦内を制圧。首謀者は伊東保安部長(関俊彦)と新見情報長(久川綾)。
 ビーメラ星の地球型環境を前にヤマト計画を中断し、ここで地球に引き返してビーメラ星への人類移住を推進するべきだという主張は判らないではありませぬが……。
 うーむ。伊東さんが叛乱かあ。てっきり、伊東さんは叛乱を鎮圧する側だと思っておりましたが、そうか藪(チョー)じゃないのか。今般の藪くんはヘタレすぎて役に立ちませんか。

 保安部隊の目を盗んで、山本(田中理恵)が『ダイ・ハード』のマクレーン刑事ばりに活躍したりしますが、叛乱鎮圧の立役者は星名准尉(高城元気)でした。今までただの小動物だと思っていましたが、侮れん(やっぱり新規キャラは色々と秘密を持ってますねえ)。
 古代らが戻ってきたときには、ヤマトは平穏を取り戻しており、主人公の出番が無かったことに笑ってしまいます(いや、補給チームはまた別のトラブルに遭遇していたりしたのですが)。
 無事な古代の姿に、多数の乗組員が観ている前で、思わず駆け寄り抱きつく森雪。
 南部くん玉砕。早かったな。やはり今般のリメイクは何事ももたつきませんね。
 玉砕したのは南部のみならず、山本もですね。やるせないのは判りますが、ロッカーが変型するほど蹴り飛ばしてはイカンですね(艦内のカップルで順調なのは、加藤・原田ペアのみか)。でも山本には何やら救済策が用意されているような……。

 実はビーメラ星の文明──やはり昆虫型のエイリアンでした──は既に滅亡していたのですが、それにイスカンダルが関与していたところに意表を突かれました。イスカンダルはあまねく知性体に手を差し伸べるが、与えた試練を乗り越えられねば、滅亡もやむなしと云うスタンスなのが厳しいです。
 ちょっとイスカンダルに対するイメージが変わりそうです。
 そこで遂に自動航法装置の謎が明かされる。装置の中身はユリーシャ。肉体はカプセルの中で眠り続け、意識は百合亜ちゃんに憑依していたのだった。こっちがイスカンダル人でしたか。

 種明かしが早すぎるような気もしますが、まだそれが全てではないらしい。森雪の記憶喪失についても、まだナニカあるらしいです。単なる事故ではないようですが、事情を知っている真田さんの口が重い。引っ張りますなぁ。
 え。でもそうすると森雪がサーシャに似ているのは、やはり「他人の空似」なのか……。

 補給チームが得た情報から、ビーメラ星近傍に亜空間ゲートが存在することが明かされます。建造したのは銀河先史文明だが、それを受け継いで運用していたのがガミラス帝国。
 使用されないまま放置されていたゲートを使って、一足飛びにバラン星へ、そしてバラン星の軌道上にある、もう一つのゲートから大マゼラン銀河へと至る大幅な航程圧縮を目論むヤマト。
 この遺跡である亜空間ゲートを起動させるエピソードで、真田副長と古代守の関係が語られます。旧作にある「浮かぶ要塞島!!」のエピソードをここに持ってきましたか。
 ここでの回想シーンが詳細で、古代、真田、新見の関係についてはほぼ詳らかになります(七歳若い新見さんが可愛い)。併せて真田副長が中原中也を愛読する理由も明かされる。
 旧作ではここで真田さんがサイボーグであると明かされるのですが……あれ? スルー?

 しかしゲートの先にあるバラン星では、ゼーリック総監が元帥に就任し、今まさにガミラス帝国の総力を集めた一大観艦式を挙行しようとしていた。
 後一歩の所までヤマトを追い詰めていたドメル将軍は、帝都に召喚され、総統暗殺容疑で死刑宣告を受けています。だがこれは総統が行方不明になったことを受け、ドメル将軍とディッツ艦隊司令に嫌疑を掛けて、政敵一掃を図るゼーリックの陰謀だったのだ。
 前章では出番の少なかったゼーリックですが、今回は違うぞ。ガミラス艦隊を前に陶然と演説ぶちまくってくれます(若本規夫ファンには堪らない場面ですね)。
 この一万隻を超える大艦隊を突破しないと、マゼラン側のゲートに飛び込めないヤマト。

 クライマックスは旧作で云うところの「バラン星に太陽が落下する日!!」です。でもバラノドンの出番なしか。残念(いや、そもそもバラン星は生物の棲める環境じゃないし、先史文明の遺した人工天体ですから)。
 強行突破を試みるヤマト、押し包んで味方艦ごと沈めようとするゼーリック、更にそこに「実は生きていたデスラー総統」が現れ、ゼーリックの謀反を糾弾する。何もかも一度に進行していく展開がスピーディです。
 でもデスラー総統はどうやって助かったのでしょうか。まったく説明されませんが、総統の背後にフラーケン艦長(中田譲治)が無言で仁王立ちしております。「お前ら、コレで判るな?」と云わんがばかりの演出ですね。

 逆賊ゼーリックを討伐し、男を上げるのがゲール(広瀬正志)です。まさかそんな。
 ドタバタやっているうちに隙を突いたヤマトが波動砲をバラン星に向けて発射し、ドエラいことが起こります。観艦式の為に密集していたガミラス艦隊は、爆発するバラン星に巻き込まれ、被害甚大。
 波動砲の反動で、ヤマトは後退しながらマゼラン側のゲートに飛び込み、難を逃れます。
 でも、これでゲートもバラン星も使い物にならなくなりましたよ。銀河先史文明の遺産を、なんと勿体ない。と云うか、沖田艦長は明らかに帰路のことまで考えていないのでは……。

 ゲートを抜けたヤマトの眼前に広がる満天の大マゼラン銀河。展望室から星を見上げる百合亜=ユリーシャ。
 「ただいま。母なる星の海」──と云うところで、次章につづく。ゼーリック総監の出番もここまでデスね(惜しい方を……)。

 ED主題歌は影山ヒロノブの「ヨーソロー ~星の海を越えて~」です。男性ボーカルの曲もいい感じデスねえ。新主題歌の中では一番気に入りました。
 個人的には劇中でガンガン鳴らされていたガミラス国歌の方も捨てがたい。アレはアドレナリンがたぎりそうな曲です。あの曲を聴き続けていたらハイになって、総統に忠誠を誓ってしまいますね(笑)。

 さて、次なる第六章『到達! 大マゼラン』は六月公開予定。ドメル将軍の死刑判決は覆り(当然、そうなるだろ)、七色に光る星の元での決戦が行われる──ようです(遂に来たか)。
 更に最終章も八月末には公開されるようで、なんとかTV放映よりイベント上映の方が先行してくれるようで安心いたしました。
 ここまで来たら最後まで付き合おう(いや、最初からそのつもりですが)。




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