本作は原作であるカプコンのゲームの設定に則った物語なので、ポール・W・S・アンダーソン監督とその嫁(ミラ姐さん)による同名の映画化シリーズとは一線を画しております。いや、あちらの方がゲーム版置いてけぼりの超展開なのであって、こちらの方が正統派なのですが。
とは云うものの、最近は私はゲームからすっかり遠のいてしまい、『~/ディジェネレーション』のストーリーはよく判るのですが、本作の設定には半分くらい馴染みがありませんデス。
Tウィルスとか、Gウィルスとか云っていた頃が懐かしい。今や、〈プラーガ寄生体〉か。
制御不能の生物兵器だったものが制御可能になっているのが進歩ですね。研究を重ねればどんなことでも可能になるものだなあ。
でも、〈寄生体〉や〈マジニ〉といった設定は、アンダースン監督作品にも登場しておりますが、だんだん「私の知っているバイハ」ではなくなりつつあるのが、ちょっと寂しいデス。実はゲームは『4』以降、御無沙汰なので……(汗)。
しかしレオンも健在で現役で頑張っている。いかにアンブレラ社がもう壊滅したとは云え、ウィルスと生物兵器がこの世にある限り、レオンも現役で頑張り続けている。私も出来る限りついて行かねば。
それにしても前作に比べて映像には格段の進歩が見られますね。復習のつもりで、もう一度『~/ディジェネレーション』を観ましたが、人物の表情や動きが何ともぎこちなく感じられました。四年前は結構凄く感じられたのですがねえ。目が肥えてしまうとはこういうことか。
今年は既にモーション・キャプチャーを駆使したフルCGアニメ映画として、『スターシップ・トゥルーパーズ/インベイジョン』(2012年)(以下、『ST:I』)が公開されていますが、本作はそちらと比べても遜色なしです。人物の動きも随分となめらかになりました。
しかもストーリーは『ST:I』より面白いデス。ゲームを意識した同じような展開が見受けられるのですが、本作の方がきちんとした映画になっております。やはり脚本がしっかりしている方がいいですね。
監督は前作と同じく神谷誠。脚本も菅正太郎。製作スタッフが変わっていないので、クォリティもしっかり維持されております。
アニメではありますが、モーション・キャプチャーを使っているので、実際に各キャラクターを演じたアクターの方々がおられるのですが、さっぱり存じませんデス。特撮番組のスーツアクターと同じで、陰の功労者ですね。
ついでにキャラクターの声を担当した役者さん達も、まるで馴染みなし。台詞は全編、英語なので声優さん達もアメリカの方なのでしょう。
洋画ライクな演出はカッコいいとは思いますが、一応邦画なのだし、台詞は日本語吹替でも良かったなあ。
さて、本作のストーリーはゲームで云うところの、『5』と『6』の間であるとか。ゲームから遠ざかっている身としては、ちょっと不安に思うところもありましたが、独立した物語として楽しむことが出来たので、安心いたしました。
まぁ、〈ガナード〉が何なのかよく知らないので、最初に出たときは「なんじゃ、この物体Xは?」と面食らいましたが、クリーチャーの一種としてスルーして差し支えなしデスね。
逆に〈リッカー〉と〈タイラント〉がメインの敵として登場してくれるので、初期のゲームしか知らない私でも、こちらは安心でした。それにしても〈リッカー〉も〈タイラント〉も逞しくなったもんだ。ゲーム版より、ちょっと図体が大きくなっていますよ。
ソビエト連邦崩壊後に誕生した東欧の小国、東スラブ共和国の内戦で生物兵器(BOW)が使用されたと云う未確認情報を受けて、BOW専従捜査員レオン・S・ケネディに潜入命令が下る。しかし到着直後に政府間の事情により、アメリカは方針を変更。レオンには撤退が指示されるが、ここまで来て引き下がれるかとレオンは命令を無視して単独で潜入を開始する。
初期のゲーム版では新米警官だったレオンも、数々の修羅場をくぐり抜け、『~/ディジェネレーション』では大統領直属のエージェントとなり、更に本作では鍛えられた兵士の風貌で登場しております。
いつの間にか無精髭が似合うワイルドな野郎になりました。しかも頼り甲斐のあるベテラン工作員のようです。アンダーソン監督版の『バイオハザードV/リトリビューション』(2012年)でも、レオンはそんな感じでしたし、一応イメージは統一されているのかしら。
単独の潜入ミッションと云うと、コナミのアクション・ゲーム『メタルギアソリッド』みたいです。そりゃ別会社のゲームだ(笑)。
そして反政府武装組織と接触し、BOWを使用したのが政府軍であることを知る。おかげで首都は多数のゾンビが徘徊する危険地帯と成り果てていた。
更に反政府武装組織は自分達も奪取したBOWを使って大統領府への逆襲を計画していた。レオンの制止も虚しくゲリラのリーダー、バディは自らの体内に〈プラーガ〉を取り込み、攻撃を決行。レオンもバディを追って大統領府に向かう。
そこに暗躍する女スパイ、エイダも絡み、レオンは大統領府の奥深くで進行する巨大な陰謀を知る──という趣向で、実にゲーム的展開です。
楽なのはコントローラを握っていなくてもレオンが自律して進んで行ってくれることですね(いやゲームじゃないか)。
今回はレオンの他に馴染みのキャラクターでは、エイダ・ウォンが登場します。ナニやら峰不二子ばりの女スパイです。過去にレオンとゲーム版にも登場しており、因縁浅からぬ仲であることが明かされますが、詳細は不明です(ゲーム版や今後の展開も考慮して故意にボカシているそうな)。
『~/ディジェネレーション』で一緒だったクレアは今回はお休みか。
再登場組はレオン以外ではイングリッド(オペレータのお姉さん)しかいません。
このフルCGアニメ版は、主役がレオンで固定されているらしく、『バイオハザード』のもう一人の主役、クリスの方はまったく登場してくれないのがチト不満ではあります。
クリスがどうなったか知りたければゲームの方をプレイしないとイカンのですか。
無敵超人ウェスカーも顔見せくらいしてもらいたい……。
それにしても初期の頃から物語の中でもそれなりに時間が経過しているようで、レオンも既に三〇代であるとか。するとエイダの方も、それなりに歳食っているわけで。
一説によるとエイダは既にアラフォーであると聞きましたが、全然そのようには見えませんですね。歳を取るのは野郎だけか。
物語の舞台となる東スラブ共和国は架空の国家ですが、もう見た目と設定からして、ウクライナとかチェチェン、グルジアあたりを彷彿とさせてくれます。
東欧のクラシックな街並みが精密に再現された背景は見事です。またゴシック風の建築物が、初期のゲームの雰囲気を思い起こさせてくれるのも嬉しいところです。
舞台装置として、「かつて第二次大戦開戦時にパルチザンが使っていた地下トンネル」が登場し、その狭苦しいトンネル内でゾンビに襲われたり、鉄の扉をゆっくり開けたりする演出にゲームの面影を感じます。
更に前半はそういったクラシックな背景の中でストーリーが進行し、後半から目標である大統領府に潜入すると、地下にはハイテク満載の研究施設があったと云うのもゲームをプレイしていた者にはお馴染みの展開ですね。
そして登場するのが〈タイラント〉。いやぁ、久しぶりです。
しかも今回は〈タイラント〉対〈リッカー〉と云う、怪獣対決な演出も見せてくれて、実に楽しいデス。
重量級の〈タイラント〉に、小型軽量の〈リッカー〉が何匹も群がって襲いかかる。
でもやっぱり〈タイラント〉強すぎ……。
強いと云えば、ラスボスである大統領が意外にも格闘戦に秀でている場面があって笑えました。ホントに大統領なのか。
このあたりの銃撃戦以外の格闘描写もお見事デス。
壮絶な戦闘の連続で、アクション映画としても水準以上であると思いマス。時々、どこかで観たようなシチュエーションが見受けられるのも御愛敬ですね。
今回はレオンも満身創痍に近い状態まで痛めつけられる──主人公を痛めつけたいという監督の意図の元に──ワケですが、現場の者が如何に苦労しようと、上層部は関知しないし、自分達の与り知らぬところで事態が解決されていくという無常観も洋画ライクですね(それで九死に一生を得るのだけれど)。
一件落着後、〈寄生体〉の影響で追い詰められたバディの自決を許さないレオンの厳しさにキャラの成長を感じました(逞しくなったねえ)。
「生き延びた者には、死んだ者の分まで生きる義務があるのだ」という台詞もいい感じデス。
その後の銃声に、一瞬だけ矛盾を感じますが、エピローグを見て納得です。なるほど「脊髄に取り付いた〈寄生体〉の排除」には、ああする他無いのか。いや、それにしても針の穴を通すような射撃の腕前です。
エンドクレジットでは、それまで劇中では観られなかった場面が流されるので、何かと思ったらゲームの新作『バイオハザード6』のムービーでしたか。ゲームの宣伝も兼ねるとは商売巧いな。
なかなか気になる場面もあったりして、買ってみようかなぁなどと思ってしまいました。家でゲームをプレイする暇なんかもう無いのに(汗)。
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