今回は地球を出発して、ワープ、波動砲、土星経由で冥王星まで。太陽系内でのヤマトの冒険が描かれます。
劇場は平日の夜でもほぼ満員。アフターファイブの平均年齢高そうな客層でした(私もか)。上映終了後に場内が明るくなるまで退出者がほぼゼロと云うのも好ましい(ファンだねえ)。
今回はガミラス側もきちんと描かれ、ドラマも盛り上がって参りました。
意外とシュルツ(島香裕)に人望があったり、可愛い娘さんまでいる。あんな親父に何故だ。かわゆ過ぎる。いや、年齢的に孫なのでは。
「パパ、お仕事がんばってね」的なホログラム・メールを繰り返し再生しては、殺風景な冥王星基地の中で和むシュルツの図というのが、お約束的演出ですが手堅い。
これでもうシュルツが俄然、憎めなくなってきました。しかもガミラス人同士で肌の色が違うという、旧作の穴を、「ガミラスは被征服民族を吸収した多民族星間帝国」という設定にしたので、冥王星基地のガミラス人が「辺境基地で酷使される二級市民」という描写になり、更に感情移入度が高くなります。
その分、上司であるバラン星のゲール(広瀬正志)が、実に嫌みな男になっていい感じです。
本作の見所の一つは、あのシュルツがガミラス帝国というシステムの中でもがく、中間管理職の悲哀を漂わせた家庭人として描かれる部分でしょう。それなりに人望もある。しかし管理職であって、将としての能力に弱いところがあるのもまた哀しい。
ドメル将軍麾下の軍人だったという設定もあり、きっとドメルの下にいた頃は有能な管理官だったのだろうなあとか、ゲールに蔑まれているシュルツやガンツからドメルを慕う発言が伺えるなど、まだ登場していないドメル将軍の為人が推察されて、なかなか楽しいです。どうやらドメルは人種差別などしない人格者らしい。さすが武人。
またラストの冥王星基地壊滅のシーンで、部下がシュルツの脱出鑑を庇ってヤマトへの盾になる場面で熱くなります。第一話で「沖田の撤退を援護する古代守」と同じシチュエーションにしてみせた演出も憎いデス。
ガミラス側でもうひとつ特筆すべきは、デスラー総統の登場ですね。やはり山寺宏一かッ。
テッパン声優を並べた配役の中に何故、山寺がいないのか不思議でした(以前は古代進役まで務めていたのに)。こりゃもうガミラス側の配役であろう──デスラー総統で無ければドメル将軍ね──と予想しておりましたが、これはあまりにも素晴らしすぎる演技です。
今般の総統閣下は、実に耽美な総統です。「若きローマ皇帝をイメージした」という演出が見事にハマっています(ネロとか、コモドゥスあたりか)。
初登場シーンが、ガミラス式の広大な風呂に浸かってというのも良いです(テルマエだ)。
この総統の初登場シーンのおかげで、ガミラス星の様子が旧作と少し変わってしまいました。帝都が地上にある。旧作では地下にあって、総統府は地下空洞の天井からぶら下がる建物だったのに。
やはり風呂に浸かっているデスラーが見上げると、ガラス張りの天井の向こう、天空に青い惑星が浮かんでいる──明らかにイスカンダルと思わしい──という構図が欲しいが為の設定変更なのでしょう。これまた然り気ない伏線になっていていいデスね。
代わりに旧作にあった、スターシャとホットラインで会話する場面がなくなりましたが、それよりも絵だけで見せる演出が秀逸です。
序盤の第一章では、背景設定と主役周辺の人間関係が主に描かれましたが、本作からはヤマト艦内の人間関係が徐々に広がりを見せ始め、旧作からのキャラと新作キャラが次第に関わりを持ち始める展開が楽しいデス。
まずは佐渡先生とナースの真琴さん(佐藤利奈)。お陰で佐渡先生へのツッコミ役はアナライザーでは無くなってしまったのが残念。アナライザーは今回は艦橋勤務──と云うか艦橋の備品扱い──ですから、医務室にはおりません。
またアナライザーを森雪にまとわりつかせない、只のメカとして描いているのも新鮮です。この先、感情を獲得するエピソードがあると、なお嬉しい(スカートめくりはしないのかなぁ)。
艦内食堂の様子は旧作に比べて実に華やか。いたるところに女性乗組員の姿が(笑)。
必要以上にカロリーを摂取しない真田さん(もう伏線であることがヒシヒシと感じられる)の愛読書は中原中也ですか。ヤマトの艦内食に生鮮食料が豊富という設定──真田さん曰く、「仕組みは知らない方がいい」──にも笑ってしまいます。そうか。「科学の勝利」なんですね。
副長が科学士官で、論理と理性の人と云うのが『スタートレック』みたいですねえ。しかも演じているのが大塚芳忠なので、尚のことにスポックとデータを足して二で割った感じがします。
ちゃんとワープ前に、「ワープとは」と説明してくれる場面が入るのも嬉しい演出です。ワープした際には、森雪の服を透かしたいという作画スタッフの気持ちもよく判ります。
戦死した山本の妹、玲(田中理恵)と古代のツーショットに何やら穏やかで無い森雪と、森雪に対して失恋確定路線を突き進んでいく南部くん(赤羽根健治)の末路も気になります。加藤(細谷佳正)、篠原(平川大輔)と玲の今後の関係と合わせて、色々とドラマが盛り上がりそうで楽しみデス。
その分、旧作キャラの中で相原(國分和人)の存在が薄くなっているように感じられるのですが、仕方ないですかねえ。
旧作のツッコミ処を片っ端からフォローしていく脚本も見事です。別にツッ込むつもりも無かったところまで、理由を用意する辻褄合わせの達人的脚本です。
例えば木星の浮遊大陸。地球に対するガミラスの環境改造の実験台という設定が巧い。
反射衛星砲も、本来は小惑星に点火して遊星爆弾化させる為の装備という設定。
また波動砲も、地球人のアイディアという設定にしており、ガミラス側には波動エンジンを兵器に転用する発想が無かったらしいという演出も巧いです(浮遊大陸消滅の報告を受けたシュルツが「何をどうしたらこんなことが出来るのか」と首を捻る)。
もちろんイスカンダルにもそんな発想は無く、波動砲の原理を説明された森雪が顔を曇らせる演出にまたまた伏線を感じます(バレバレですねぇ)。
戦争の才能に関しては地球人の方が異常だったとは、SFではよく見かけるネタですね。
旧作との変更点も色々ありますが、特に気になる部分は……あまりありません。
ワープと波動砲をセットで描くという展開に、今回もまた何事にも中弛みさせないテンポ重視の演出を感じます。サクサク進むのは宜しいのですが、予想していた「ワープ開始のカウントダウンに山本の着艦が間に合わないのでは」という描写が削られたのが残念でした。
その分、山本は冥王星でバリバリ活躍してくれますが。
加藤率いるコスモファルコン──もうコスモタイガーでは無い──もカッコいい。通称〈はやぶさ〉か。イマドキは〈はやぶさ〉と呼ばれると、日本人としては嬉しくなりますね。これで名実共に「加藤隼戦闘隊」か。
それにしても丸刈り高校球児ライクな髪型の加藤の実家がお寺だったという設定には笑いました。コクピットの中では精神統一に般若心経を唱え始めるし。
ホントに坊主だったのか。その割に殺生しまくりなのはいいのか。
いやいや。地球人から見ると、まだガミラスは正体不明な敵なのだから「殺生」ではないか。
ガミラスの戦闘アンドロイドを鹵獲して「これがガミラス人か」と勘違いしている古代の姿も微笑ましい。この先、ガミラス人と地球人が変わらない存在だと知ったときの反応が楽しみデス。
その一方で、ガミラス人と地球人の差異と云うか、地球側のアナログ的描写もさりげなく描かれていますね。特に今般は「艦橋要員が双眼鏡を使用する」と云う描写に、こだわりを感じます。「目で確認」とか「手で触る」という描写を今後も発展させていく考えなのでしょうか。
こだわりと云うと、エネルギー弾(主砲)と個体弾(副砲)の弾着描写の描き分けも素晴らしい。
また第三艦橋の使い方も斬新でした。
潜望鏡装備か。うーむ。確かに潜水艦に見えないこともないが……。今回、一番ビックリしたところです(水面下が大変なことになっていそうですが気にしちゃダメ)。
最後に、旧作では土星の衛星タイタンで〈ゆきかぜ〉の残骸を発見するというエピソードが、エンケラドスに変更されておりました。やはり最新の天文データでは、タイタンよりエンケラドスの方が詳細だからでしょうか(土星探査機〈カッシーニ〉の観測に基づく描写がリアルです)。
SF者としては、土星の衛星エンケラドスと云うと、アーサー・C・クラークの『二〇〇一年宇宙の旅』を思い起こして大変、嬉しい。キューブリック監督の映画版『二〇〇一年~』では、モノリスは木星軌道上にありましたが、クラークの原作小説ではエンケラドスだったので……てなことを話しても、あまり関係は無いか。
出来れば、古代が生存者または遺体の捜索に必死になる様子をもっと描いて戴きたかった。
第二章のエンディング曲は「美しい地球を知る者よ」。第一章の「星が永遠を照らしてる」と並んで、作詞が畑亜貴なんですが、まさか全曲エンディングの作詞は畑亜貴なんですかね。
さすがに「ハレ晴れ愉快」や「太陽曰く燃えよ混沌」な歌には……ならんか。どこかでヤマト女性乗組員が合唱するノリノリな歌を聴いてみたいような……。
そして次回予告。第三章「果てしなき航海」はいよいよ太陽系外に乗り出したヤマトの大航海が描かれる──ようです。ほぼ真田さんメインのエピソードが多そうなのも嬉しい。
しかも今般のリメイクでは、堅物の代名詞のような真田副長にも浮いたハナシが? これは楽しみです。新見薫さん(久川綾)には頑張って戴きたい。
● 余談
デスラー総統が山寺宏一で、山本玲が田中理恵。夫婦で共演しているのだと、今更ながらに気が付きましたが、ドラマ上には接点は……ありそうにないですねえ。
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