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2012年5月29日火曜日

機動戦士ガンダムUC

 episode 5 「黒いユニコーン」

 お馴染みイベント上映の第五話です。前回あたりから妙に観客動員数が増え始め、今回もまた劇場は混雑しまくりでした。二週間という期間限定なのが短すぎるような気がします。
 劇場で鑑賞してもまったく遜色ないクォリティですから、DVDやネット配信で観るよりもオススメではありますが。

 始まる前の「前回までのUCは」的なダイジェスト紹介もだんだん長くなってきました。
 本シリーズについては、もう決して福井晴敏の原作小説を読むこと無く、最後までいってしまおうと決めております。先が読めては楽しくないし。
 『episode 4 「重力の井戸の底で」』のラストで登場した、超お約束的ライバル機「黒いユニコーン・ガンダム」──バンシィ──には一体誰が乗っているのか……。判ってますよ、マリーダさんでしょ。ホラ当たった(他に人いないし)。

 しかも今回のマリーダさんは強化人間の再調整を経て別人のようになっておられる。早い話が洗脳ですか。オーガスタ研究所の再調整は手回しよろしいですね。
 時間経過としては、大して日数が経過しているようには感じられないのですが、もうすっかりマリーダさんではなく、〈プル12〉に戻ってしまっている。
 あっと云う間にユニコーンは取り押さえられて、連邦の手に戻される。バナージも囚われの身に(またか)。

 ユニコーン・ガンダム2号機の黒い機体がなかなか禍々しくて、ライバル機としての貫禄充分と云った感じデス。1号機には無い追加兵装も凶悪だし。1号機にあって2号機に無いのは、〈ラプラスの箱〉への指標のみか。
 これすべてビスト財団の資産であり、アルベルト曰く「家庭の問題ですよ」とな。
 すっかり忘れていましたが、此奴は苗字がビストだから、カーディアスの息子だったのですね。どうにもアナハイム社の重役としての立場ばかり強調されていたので失念しておりました。カーディアスの嫡男か。
 つまりバナージのお兄さんではないか。異母兄だ(嫌なお兄ちゃんだな)。
 本作ではアルベルトがやたらバナージへの対抗心を露わにしており、「妾腹の子が」なんてセリフも飛び出します。本来ならばユニコーン──と、〈ラプラスの箱〉──は自分のものになる筈だったのにと云う妬みでしょうか(でも自分でMSの操縦は出来ないでしょ、あんた)。

 毎回バナージは連邦とジオン残党のどっちかの陣営に囚われているという設定が笑えます。
 今回はまた連邦軍に取り押さえられて(出戻ってきたか)、ロンド・ベル隊の旗艦〈ラー・カイラム〉の艦内で独房にブチ込まれている。ガンダムのパイロットにはよくあることですね。
 ユニコーンが「次なる〈ラプラスの箱〉への座標」を開示したのに、その情報にロックを掛けてしまったので、厳しい尋問を受けるバナージですが、艦長のブライト・ノアからは妙に好意を寄せられる。

 ブライトさんにとっては、「偶然ガンダムに乗り込むことになった少年」は皆、古い友人に似ていると思われてしまうのでしょう。自分のやっていることを自嘲しながら、艦長室の壁に掛けたアムロの写真を見て「笑うなよ」と声を掛ける様子が微笑ましい。
 オールド・ファン向けのサービスとして、更に今回はカイ・シデンとベルトーチカまで登場してくれたのは嬉しいデスね。川村万梨阿の声を久しぶりに聴きましたデスよ。もっとベルトーチカに出番を! あれでお終いですかぁ。
 「ルオ商会」と云う設定もちゃんと活用しつつ──ビスト財団やアナハイム社との関係が不明瞭ですが、商売敵ではあるらしい──、ロンド・ベル隊は地球連邦とはちょっと異なる独自路線を歩んでおりますが、これって結構、危ない橋なのでは無いか。ヘタすりゃ反逆罪ものなのではとも思われますが、さすがブライト艦長の部下達は肝が据わっているというか、艦長に全幅の信頼を寄せている描写が伺えます。

 一方、オードリーの方は、こちらもマーセナス家から逃げ出したところを連邦に拘束されて、同様に囚われの身。わざわざ地球に下りてきたのに、ほとんど何も出来ないうちに宇宙へ強制送還されることに。
 リディ少尉は全然いいところありませんねえ。オードリーからもフラレてしまうし。
 大体、オードリーを掠って地球に降下したのはいいが、ナニがしたかったのかサッパリ判りませんよ。やること全て裏目に出るので、だんだんやさぐれていくリディ少尉。
 ここまでリディ少尉を虐める脚本に作為的なものを感じます。バナージと対比させる為か。

 連邦に協力する素振りを見せながら、ビスト財団とアナハイム社には好き勝手させるものかというロンド・ベル隊は、ジオン残党の〈ガランシェール〉隊に情報をリークする。オードリー奪還の為に動き出すジンネマン艦長。
 ここで登場するのが、大型輸送機〈ガルダ〉ですか。懐かしいなあ。結構な老朽機だと思われますが、まだ現役で飛んでいるとは。『Zガンダム』以来、様々な組織の手によって運用されるので、敵になったり味方になったりと、数奇な運命を辿って飛ぶ〈ガルダ〉です。
 今回はオードリーを拉致した側が飛ばしているので、敵の移動基地というスタンス。

 〈ガルダ〉に強襲をかける〈ガランシェール〉。〈ガルダ〉を守るつもりがあるのか無いのか、冷ややかな〈ラー・カイラム〉というそれぞれの組織の立ち位置が面白いデス。ドサクサに紛れてバナージもユニコーンで出撃し、オードリー救助に向かう。
 本シリーズのガンダム──と云うかバナージ自身──が、決して人を殺さないと決意しているので、ここでも必要以上に敵機を破壊しません。〈ラー・カイラム〉のMSパイロット達からは、その青臭いところも含めて好意的に見られている描写が楽しい。あまり出番はありませんが、ベテラン・パイロット三人のキャラがいい感じデス。

 〈ガルダ〉防衛の為に出撃するバンシィと対決するユニコーン。戦いながら説得を続けるバナージの声に、強化人間の洗脳が解けかかって頭痛に苛まれながら戦うマリーダさんの図と云うのが、お馴染みの構図です。至るところに旧作へのオマージュ的シチュエーションが入りますね。
 ここでまたマリーダさんの不幸な幼少時代の回想が入ったりして、特に詳細に説明はしませんが、ジンネマン艦長との絆が示唆されます。ジンネマン艦長にとっては亡くなった娘の代わりというか、もはや部下ではなく娘も同然になっていたという関係が明らかに。
 まさにそのとき、〈ガルダ〉に単身で潜入しようというジンネマン艦長を戦闘に巻き込みそうになる。

 前回もそうですが、本シリーズの主役はスベロア・ジンネマンその人なのではないかと思われるくらいに要所要所で美味しいところを掠っていく演出には嬉しくなります。一時期、『ガンダム』シリーズは若年のイケメン・キャラばかりが幅を利かせておりましたが、本シリーズでは腹の出た、ヒゲ面の、むさ苦しいオヤジが(しかも安彦良和のキャラデザインで)、活躍してくれるという構成になっているのが素晴らしいデス。
 オヤジキャラがちゃんとしていないと、若者がそれを超える描写に感動できませんからね。

 バナージの説得如きでは大した効果もありませんでしたが、ジンネマン艦長を見てマリーダさんが我に返ると云うのがいいです。このときのジンネマン艦長はホントに素晴らしいデス。
 いい歳こいた大の男が、涙を流して訴える(しかも小娘に)──「マリーダ、俺を独りにするなあぁぁぁッ」──なんぞという場面は、他所のアニメでもなかなかお目にかかれませんよ。
 日本独特な演出で、いい芝居を見せて戴きました。今回はこの場面が白眉ですね。

 ジンネマン艦長がマリーダさんを救い、バナージがオードリーを救うという展開になって、そのまま全員が〈ガランシェール〉に。哀れ、リジィ少尉はここでもまたオードリーに拒絶され、ますますバナージを恨むようになる。
 そしてマリーダさんが乗り捨てていったユニコーン・ガンダム2号機を見上げるワケで、いやぁ、そんなMSに乗ったら絶対に不幸になりますよと忠告してあげたいが、リジィ少尉は聞く耳持たぬでしょうねえ。なんかもう自分の人生に起きる全ての不幸をバナージに責任転嫁して暗黒面に落ちていきそうです。

 もう一つ、私が気に入っているのが〈ネェル・アーガマ〉の大気圏突入シーン。バリュート装備で大気圏をかすめて飛びながら、〈ガランシェール〉を引っ張り上げつつ大気圏を離脱していくという描写に燃えました。やはりバリュートはいい。
 SF者としては近未来的なバリュートの描写の方が、サイコフレームの共振なんぞという魔法のような描写よりも好きデス(あれはホントにワケ判らん)。
 そしてこれすべてブライト艦長の指示によるもので、策士ですね。ブライト艦長の出番はもう無さそうですが、裏で動いてくれているのが感じられ、存在感が保たれているので良しとするか。
 結局、二話分使って地球に滞在しましたが、物語は再び宇宙へ。次なる〈ラプラスの箱〉への指標は……。

 ところでこのシリーズ、当初は全六話だと聞いておりましたが、第五話がこんな調子で、次回で完結してくれるのかと心配でした。そろそろ広げた風呂敷は畳む準備に入らないと、マズいんじゃないの。まさか第六話で急転直下に終わってしまうのは勘弁して戴きたい……と思っていたら、全七話に延びましたね。途中でシリーズ構成を変更して大丈夫なのかしら。
 その為、毎年二話ずつ公開されていたペースも狂ってしまいましたか。第六話は来年の春公開。第七話に至っては公開予定は未定──近い将来ってナニ──ですか。
 え。つまり今年のガンダムUCは、これでおしまいなのか。続きは一年後までお預けか。

 そう云えば、フル・フロンタル配下のアンジェロ大尉なんて人もおりましたか。さっぱり出番が無いので影が薄かったですが、次回の告知を観る限りは、今度こそアンジェロ大尉大活躍……してくれるのでしょうか。それともまたジンネマン艦長が美味しいところを掠っていくのか。非常に楽しみデス。




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