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2011年11月24日木曜日

スクライド Alteration/TAO

(s.CRY.ed Alteration : TAO)

 サンライズ製作の熱血アクションSFアニメ『スクライド』が完結後十周年を迎えて、まさかの劇場版化ですか?
 劇中で描写される超能力「アルター」は「ALTERATION(変化、進化)」からの造語ですが、よもや作品自体も進化するのか。

 伝説のTVアニメシリーズとも呼ばれていますが、それはちょっとオーバーなのでは。それとも最近じゃ十年で伝説になるのか。或いは若年層のファンは御存知ないのでしょうか。毎年毎年、次から次へ新作アニメが目白押しですからねえ。
 ともあれ、新作パートも追加し、全編新アフレコで、HDデジタル・リマスターによりスペシャルエディション(全二部作)として新たに再構成! ──と来れば観に行かねばならぬでしょう。忘れがたいアニメですし。

 でも全国九館でのイベント上映のみとは。たった九館。少なッ。
 もう少し拡大公開してもらえぬものか。どうせすぐにブルーレイで発売されるにしても。もう『機動戦士ガンダムUC』の影に隠れちゃっているじゃないですか。
 平日のレイトショー上映にすべり込みですが、劇場内はそれなりに入ってましたねえ。皆さん、熱烈なファンなのでしょう。

 とりあえず今回は前編である「TAO」。後編「QUAN」は来春公開予定か。
 監督はTVシリーズそのままに谷口悟朗。脚本もそのまんま黒田洋介。
 平井久司の描くキャラクターもそのまんま。久しぶりですねえ。
 勿論、配役も変わりません。保志総一朗、緑川光、田村ゆかり、山崎たくみ、津久井教生、倉田雅世、永島由子……。いや懐かしい。
 でもやっぱり十年経つと声優の皆さんもその分の経験を積まれているだけあって、ビミョーに変わっておられますねえ。
 特に冒頭は、田村ゆかりの第一声から始まるので、いきなり「変わった」ことが強く印象に残りました。

 しかも最初から新作パートで「カズマとかなみの出会い」を描こうという趣向ですし。これは実に判りやすい演出です。
 総じて本作では、キャラの関係を説明する回想シーンに新作パートが用意されて、総集編的なカットのつながりを可能な限り緩和しようと苦心しておられるようであります。
 でも如何にHDデジタル・リマスターと云えど、新作パートの画質のクォリティとの差がちょっとね……。かなり明確に判る部分もあるのは……仕方ないのか。愛でスルーしてあげねばならぬのデスか。
 そもそも全二六話のシリーズを二部構成だから、前半の一クール分を一〇〇分程度に納めねばならず、かなり苦労している様子が見受けられます。
 だから全体のバランスを考えてか、無常矜侍(白鳥哲)が最初から登場しています。いきなり後半になって登場して、あんた誰な展開にならない為の配慮ですかね。
 その分、アルター能力者をめぐる陰謀の存在が、早い段階から暗示されています。
 TVシリーズでの前半は、あまり深く考えない「不器用な男と不器用な男のドツキ合い」に終始していた筈なので、シンプルな物語という印象でしたが、この劇場版二部作では割と複雑な設定を盛り込んだ物語として構成されていることが窺えます。

 とりあえず何人かのキャラクターの登場が唐突だったり、説明が省略されていたり、つなぎが結構、苦しい部分も見受けられはしますが、全くTVシリーズを御存知ない方でも一応は理解できるようにはなってます。
 でも「いきなり水守さんがHOLDの庁舎で勤務している」のは如何なものか。
 だってそれでは「ストレイト・クーガーと水守さんの出会い」がスルーされてしまうではないですかッ。ちょっと哀しいぞ。
 何よりこれでは、クーガーのアルター能力〈ラディカル・グッドスピード〉と、彼の超絶早口台詞の関係が判らないではないか。
 おかげでクーガーは、アルター能力の発動が無くても、常日頃から妙に早口で喋ってしまう人になってしまった。俺のクーガーがヘンな人になってしまった。いや、変なのはTVシリーズの時からか。いやいやそもそもこれは変な奴らばかりが登場するアニメなのだからそれでいいのだとも云える。津久井教生も十年ぶりにクーガーの早口台詞を演じて御苦労様です。

 その他のキャラクターで云うと、太くて堅くて暴れっぱなしの〈ビッグマグナム〉立浪先生と、超ピンチ合体〈スーパーピンチクラッシャー〉のエマージーが削られること無く登場してくれたので嬉しいデス。
 〈マッドスクリプト〉の雲慶は……残念でしたが。
 うーむ。ナニもかも全部を盛り込むことは出来ぬか。
 印象薄くなってしまったのは、あすかと瓜核ですが、出番があるだけマシか。
 あすかの「ボクの大事なタマ」発言は削られること無く入っているからヨシとするか。
 色々と削っている割に、無常の部下に新キャラを用意していますが、こいつの見せ場は後編までお預けか。またヘンテコなアルター使いなんですかね。

 ドラマとしては中盤で最高に泣ける「君島くんの死」のエピソードまで描いて、更にその先のバトルを描き足してくれたのが嬉しいデス。
 ドラマ的な盛り上がりで云うなら、カズマと劉鳳のラスト・バトルで、君島の形見の銃を放り投げ──「さぁ。行こうぜ、君島!」──て、そこで初めてカズマの〈シェルブリッド〉が第二形態になる展開だと、自然で漢燃えな成り行きのように思えるのですが、でもそれだとエマージーの出番無くなるしな。
 再構成というのもなかなか難しいもんですな。

 そして前編のラストシーンは〈ラディカル・グッドスピード〉のフルアーマー形態。
 こんなところで終わりますか。速く後編を観せろ。速さは力だ。何故、俺には世界を縮めることが出来ぬのぢゃあッ。

 中川幸太郎の熱いBGMも聴きものですし、久々に『スクライド』を観ることが出来たので満足です。
 主題歌も新録か。「Reckless fire 2011」。酒井ミキオの声もパワフルになってますねえ。歌詞も新たになっているし。これは「4番」なのか。

 で、最後はやっぱり次回予告。
 『スクライド』の次回予告と云えば若本規夫によるナレーションですが、いつになく押さえた口調で喋っておられますね。いや、十年前はこれくらいだったのか。
 しかしなんか「無理して押さえている」感が漂っているので、いっそ最近のハジケた若本節を炸裂させても良かったのでは……。
 この次回予告が流れている間、劇場内では妙にクスクス笑いがあちこちで起きていましたねえ(笑)。


●余談
 サンライズも過去の作品を発掘しながら劇場版化していくのであれば、是非とも『ゼーガペイン』もお願いしたいところなんですがねぇ。十年経たないとイカンのですか?
 個人的に『ゼーガペイン』の劇場版化を切望しております。


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