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2011年7月7日木曜日

鋼の錬金術師/嘆きの丘(ミロス)の聖なる星

(FULLMETAL ALCHEMIST : The Sacred Star of Milos)

 まず、私は原作コミックスをまったく読んでおりませんッ。
 その上、最初のTVシリーズであるハガレン(いわゆる無印)はそこそこ観ておりましたが全話ではない。何とか劇場版第一作『シャンバラを征く者』まではついて行けたが、二回目のアニメ化作品(フルメタ)はほとんど観ていない。
 さて、こんな状態で劇場版第二作なんぞ観賞して大丈夫なのか。『シャンバラ~』は無印ハガレンの劇場版だから理解できたが、この二作目はフルメタの劇場版なのだから、理解できないのではないか……と云う一抹の不安がございました。
 でも大丈夫だ、問題ない。
 と云うか、コアなファンではないので、問題があったとしても気が付かなかったと云うのが正しい(汗)。

 個人的には第一作『シャンバラを征く者』の続きも観たいのですがね。エルリック兄弟vsナチスというインディ・ジョーンズばりの冒険活劇はもう観られないのか。どこかで製作してくれないのか(無理)。

 『ミロ星』──『嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』を略してこう呼ぶらしい──は、独立した物語なので、基本設定だけ承知していれば、私のような者でも問題なく理解できます。エルリック兄弟以外はほぼ新キャラばかりですし。
 チケット購入時に特典コミックスと称した小冊子ももらいました。これによると原作の十一巻と十二巻の間のエピソードだそうな。

 独立したオリジナル・エピソードなので、スカーも、ホムンクルスも出番なし。
 マスタング大佐も、ホークアイ中尉もほとんど出番なし。おおう、アームストロング少佐も顔見せだけか!
 そもそもヒューズ中佐も登場しないのである。時系列的にはお亡くなりになったあとのエピソードになるので、やむを得ないのでしょうが。これが一番、残念。
 どうしてヒューズ中佐が御存命時のエピソードは劇場版化されないのか。大体、私は二度目のアニメ化の際にも、ヒューズ中佐の葬式をまた観てしまったので、そこで観るのを止めてしまったのだった。なんかそれ以上、観続ける気力が失せてしまって。

 ──という、ハガレン・ファンを名乗るのもおこがましいワケですが、逆に前後のエピソードの繋がりもよく判らず、本編とのリンクがあるのか無いのかもよく判らないので、単純に冒険活劇アニメとして観る分には、『ミロ星』は充分な出来ではないかと思います。
 まぁ、脚本は真保裕一ですがね。
 真保裕一の脚本と云えば『ホワイトアウト』(2000年)があったか。小説の方は読んでおりませぬが、映画としてはかなり無茶な展開もあったような。『アマルフィ/女神の報酬』(2009年)については忘れよう。忘れたい。あんなスカタン映画。
 つい最近も『アンダルシア/女神の報復』を観たな。基本的にはミステリ作家なので、この『ミロ星』も冒険活劇ではありますがミステリ色が強いです。

 セントラル刑務所から脱獄した謎の錬金術師メルビン(森川智之)を追って、エルリック兄弟は西部国境の街テーブルシティへ。そこはクレタとアメストリスという大国に挟まれ、蹂躙されている弱小民族ミロスの聖地だった。エルリック兄弟はそこでレジスタンスの少女ジュリア(坂本真綾)と知り合う。
 大国の知らない独自の錬成陣を駆使したミロスの錬金術は「賢者の石」を錬成できると伝えられ、エルリック兄弟はその秘密をめぐって、クレタとアメストリスとミロスの三つ巴の事件に巻き込まれていく。

 それにしても軍事国家アメストリスは、あっちでもこっちでも弱小民族を虐げておりますな。本編でもイシュヴァールを弾圧しておりましたが、ここでもか。

 結構、謎解き要素が多くて、色々考えられてはおりますが……。
 アクションの合間に謎を解いていくので、あとから考えるとエドとアルは物凄い勢いで解き明かしているわけですね。クレタの支配が三百年続き、その後でアメストリスがミロスを占領して十年間、その間まったく誰にも解けなかった謎を、たった数日で解き明かしてしまった(笑)。
 大仕掛けではありますが、ミロスの都市に隠された謎が、とても判りやすかったりして、何故これに誰も気がつかなかったのか不思議。
 このあたりの冒険活劇とミステリの謎解きというバランスの取り方が、ちょっとまあ……不満と云えば不満ですが。うーむ。

 メルビン・ボイジャーの意外な正体──と云うのも、あまり意外ではなかったか。彼が本当にジュリアのお兄さん(本名はアシュレイ)だったら、そっちの方が驚きでしたが。これもミステリとしては定番とも云えるし、お約束をきちんと守ってくれた展開には満足です。

 ドラマとしては、エドとアルのエルリック兄弟と、アシュレイとジュリアのクライトン兄妹の描き方が対照的なのが印象に残りました。
 マスタング大佐の台詞──失った時間は取り戻せないが、これからの時間は己の選択次第だ──というのは、判ります。よく云われることですし。
 互いを思いやるエドとアルに比べて、あの兄と妹の仲は決定的に引き裂かれてしまったのだと考えると、なかなかに切ない。恐らく兄妹の仲は修復出来ないのではないか。

 一件落着後、ジュリアの兄は妹に別れを告げることなく姿を消してしまう。クレタ軍人として、この先も生きていくらしいという描かれ方をしていた。
 その一方で、遂にミロスは独立を宣言し、一見するとハッピーエンドなのであるが……。
 あの状態が長く続くとはどうしても思えませぬ。いずれまたアメストリスや、クレタが侵攻してくるのは目に見えている。これからのことを考えると、あの兄と妹は戦場で相見えることになるのか。なんかもう不幸な結末が待っているようで切ない。
 それともミロスの「賢者の石」錬成システムは破壊されてしまったので、最早占領する価値無しとして捨て置かれることになるのだろうか。それならそれでいいのですが……。
 そうなると気になるのはクライマックスでのハーシェル(木内秀信)の台詞ですね。
 ミロスの錬成システムが破壊されたことをエドに告げられ、逆に礼を云う。これでもう秘密は自分の頭の中にしかない、と。
 つまりハーシェルはミロスを占領せずとも、その気になればいつでもどこでも「賢者の石」を大量生産出来たということになり……。いや、どうもハーシェルの行動は不可解だな。
 ハーシェルの目的はメルビンに復讐することだけであり、「賢者の石」を錬成するつもりは無かったのか。逆にミロスのシステムを破壊し、自分の知った秘密は生涯隠し通すつもりだったのか……。
 このあたりも説明不足な感じがします。

 活劇としては良くできているのですが。ど派手な錬金術の描写とか。
 個人的には前半の、列車の上での立ち回りと云う古典的なアクションが嬉しい。複雑怪奇な鉄橋の描写も、ビジュアル的にはなかなか興味深い。
 欲を云えば、聖地の火山に言及されたので、クライマックスは巨大火山の大噴火まで行くのかと期待したのですが、溶岩の流出もそれほどではなかったのが残念(いや、もっとドカンとやるのかと思ったんですよ)。
 ゲスト・キャラの中ではバタネン(屋良有作)というオヤジが気に入りました。脇役かと思いきや、結構活躍してくれたし、声が屋良有作というのがいいやね。

 岩代太郎の音楽もなかなか聴き応えあったし、L'Arc~en~Cielの主題歌もいかにもなので、久々に「ハガレンを観たぜ」という気分になりました。
 しかしフルメタ・ハガレンを最後まで観たという知人は、TVシリーズがきちんと完結しているので、特にこの劇場版は観なくてもいいのではないかと云う意見でした。そういうものなのか。
 無印ハガレンだけ観ていてはイカンのか。フルメタ全六四話をイッキ視聴するのは、結構キツそうだ。私はヒューズ中佐の死を乗り越えることが出来るのだろうか(汗)。




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