2010年3月1日月曜日

しあわせの隠れ場所

(THE BLIND SIDE)

 とりあえずアカデミー賞の作品賞と主演女優賞の二部門にノミネートされるくらいの作品なのだから、観て損はあるまい──と考え、劇場に足を運びました。

 これまた実話ベースの物語。現在もNFLで活躍中のマイケル・オアーの前半生(の一部)が描かれている。時代にして一九九二年から数年間の物語。
 マイケル・オアーが如何にして才能を見いだされ、高校に入学を許可され、大学リーグへと進んでいくことになるのか。
 でもなあ、アメフトという競技に門外漢なので、マイケル・オアーがどんなにスゴイ選手なのかイマイチ、ピンと来ない。たとえばイチローやゴジラ松井の学生時代からプロデビューあたりまでを描いた物語のようなものであろうか。

 大体、原題の「ブラインド・サイド(死角)」自体もアメフト用語なのでよく判らないのです。とりあえず冒頭で、いきなりサンドラ・ブロックによるアメフト用語解説と簡単なレクチャーが入るので、門外漢でもそれなりに理解できますが。

 誰にとっての〈死角〉かというと、もちろん花形ポジションであるクォーターバック(QB)にとっての死角です。特に右利きのQBにとっては、左側が死角になる。そこでQBを守る為の、左側のオフェンシブ・タックル(OT)と云うポジションが重要になる。
 マイケル・オアーは、それまで縁の下の力持ち的ポジションだったOTを、QBに次ぐ重要ポジションに押し上げた功労者なのだそうです。サンドラ・ブロックがそう云うのだから間違いあるまい。

 しかし「ブラインド・サイド」だから「隠れ場所」というのは、かなり無理矢理感の漂う邦題ですな。そのままカタカナにするよりマシですが(笑)。

 実話に基づくと認識していないと、なんか逆に有り得ないような物語です。やはり事実は小説よりも奇なりなのか。
 縁もゆかりもない貧しい黒人青年を、裕福な白人家族が引き取り、後見人になり、家族の一員として生活させ、やがて青年は才能を開花させて栄光への道を歩み始める。
 なんかもう、そこまで善意の塊のような物語がイマドキあり得るのか。

 九〇年代になっても米国南部には黒人差別がまかり通っているという描写を堂々と描くあたりが勇気あるというか、さすがアメリカやねえ。
 前提となる地域的特性がピンと来ないが、テネシー州メンフィスあたりの裕福な白人家庭と云うと、敬虔なキリスト教徒で共和党支持者でフットボール・ファンであるのが自明だそうな。そのあたりをネタにしたギャグはアメリカ人でないと笑えないか。

 「民主党支持者と知り合いになる前に、黒人の息子を持つとはね」とか。

 高校のフットボールで活躍し始め、大学のスカウトマンが続々とやってくるようになったが、肝心の成績で単位が足りない──というのは、よくあるシチュエーションですが(笑)。
 そこでキャシー・ベイツが家庭教師役で登場。出番は短いが面白い役ですよ。さも重大そうに打ち明ける場面が笑えます。

 「実は私、民主党支持者なんです」

 ほんの些細な善意から始まって、地域のタブーを片端から破っていく展開に。
 でも、この〈善意〉があると何でもやっていいのかと思うようなところも無きにしも非ず。

 後見人の夫妻は共にミシシッピ大学OBで、マイケルの進路志望にも影響を与え、結果として母校に有利な便宜を図ったのではないかと疑惑を抱かれる。
 第三者から見れば尤もな疑念でありますが。
 本人の為に良かれと思った行為も、無言の同調圧力と解釈できないこともない。深く考えると、そもそも人間には完全な〈選択の自由〉なんてあり得るのかと思ったりもします。
 〈自由な意思〉なんて幻想に過ぎないのでは……。

 まぁ、あまり哲学的にツッ込むことなく、家族愛な物語でハッピーエンドになだれ込みますが。
 サンドラ・ブロックはときにシリアスな、ときにコミカルな演技で、物語をリードしていく。主演女優賞へのノミネートも故無きことではないか。
 しかし私はどっちかというと、この家族の中で、黒人のマイケルを「僕の兄貴です」と慕う末っ子の少年が印象的でした。子役だけど、この子は助演男優賞ものだと思う。
 あの少年ならマット・デイモンや、クリストフ・ヴァルツに勝てるかも(笑)。

● 余談
 既に発表された今年のゴールデン・ラズベリー賞では、サンドラ・ブロックは『ALL ABOUT STEVE』で最低主演女優賞をゲットしてしまっています。
 まさかと思うが『しあわせの隠れ場所』でアカデミー主演女優賞を獲ってしまうと、同時に最低&最高のダブル受賞という快挙を成し遂げるのですが(笑)。

 それにしても『ALL ABOUT STEVE』は、『スピード2』を上回るくらいに酷いのだろうか。サンドラ・ブロックも仕事を選ばない人やねえ。




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