賭けてもいいが、これが〈テルモピュライの戦い〉である筈がない!
でもカッコイイので許す。
「これがスパルタぢゃぁッ」
よおし、もう信じたからな。
スパルタ戦士は全員が筋肉ムキムキでパンツとサンダルとマントしか着てはいけないのです(笑)。
フランク・ミラーのビジュアルの再現、という点では『シン・シティ』よりもこちらの方が巧い。全編に漂う男臭さというか、野郎共の野郎共による野郎共のための映画でしょう。アニキ素晴らしいです。
ジェラルド・バトラー演じるレオニダス王がサイコー。〈兄貴王〉と呼ぼう。
ロドリゴ・サントロのクセルクセス王もカマっぽくて素敵。敵味方の描き分けが実に判りやすい。
だからといってペルシャ帝国が〈オカマの帝国〉である筈がないのは判りきっているのに、イラン政府から抗議が来たというのは無粋よのう。
まぁ、野暮だと判っていても云いたくなることもあるでしょう。日本人だって『パール・ハーバー』には色々と云いたいだろうし(爆)。
強大な専制帝国ペルシャに立ち向かう弱小の民主主義国家スパルタというのも考えさせられますなあ。どう見ても「民主主義の方が血生臭い」のですが(笑)。
やっぱり民主主義の方が暴力的なのか。
でもクセルクセス(“XERXES”)を「ジェルジェス」と英語風に発音するのは如何なものか。
──と云ったところ、歴史に詳しい友人が教えてくれました。
クセルクセス王は古代ペルシア語で「クシャヤールシャン」と発音したらしい。「クセルクセス」と云うのはギリシア語化した呼び方だとか。
歴史教育において、ヘロドトス先生の影響は大きいですね(笑)。
しかし日本はギリシア発音に忠実なのに、米国は特に発音には無頓着なのね。違和感があるにはあるが、字幕では「クセルクセス」だし、吹替版になってしまえば最早、気になることはあるまい。
それにしてもスパルタ戦士の強いこと。
ペルシア帝国の生物兵器〈サイ〉を槍一本で倒すのである。ええ、あの角の生えた動物ですよ。アフリカのね。
このサイの描写があまりにオーバーなので笑ってしまいました。もう怪獣並みの迫力。
装甲板で身を固めた装飾過剰な巨大生物サイが突進してくる。その突進のあまりの勢いにペルシア軍の方の被害が甚大という有様。そのサイが遂にペルシア軍の陣から飛びだし、スパルタ戦士たちに向かってくる。
すると、スパルタの中でも一番、若輩な兄ちゃんがひとりで歩み出て……。
軽ぅく、ひょーいと槍を放つや、見事にサイに命中。
その一撃で巨大装甲生物兵器を退治してしまう(笑)。
そのあと、この兄ちゃんは特に戦果を誇るでもなく、スパルタ陣営の方を向いて頷く。
兄貴王レオニダスを始め、オヤジ戦士たちも特に兄ちゃんを誉めるでもない。腕組みしたまま無言で肯き返すだけ。
眼と眼で軽く会話しているのであろう。
「こんなもんでどうッスか?」
「ん。まあまあ」
全員が一騎当千というとんでもない軍団である。
しかしどうなんですかね。それほどに精強な軍団が、物語の展開では破れなきゃならないのですよ。
不自然じゃないですか(笑)。
どう見たって、スパルタ無敵なのに。スパルタ無双。
うーむ。終盤まではあまりにも無敵であったのに、裏切り者の密告が原因で包囲殲滅されてしまうと云う展開が哀しい。
そして最後に残されたスパルタ戦士たちの奥の手が怖い。自分たちの肉体で作ったシェルターというか、肉の壁が凄まじい執念を現していて鳥肌ものです。そして部下を犠牲にして生き延びたレオニダスの必殺の一撃が──。
おおう。なんで外れるんだようッ(泣)。
かくしてスパルタの敗北に終わってしまった「テルモピュライの戦い」であったが、ペルシア側も相当な被害を出し、軍団の進撃は止まり、一時的に帝国は撤退するに至った。
ラストシーンはその一年後。
体勢を立て直したペルシア帝国が、再び侵攻を開始する。これを迎え撃つギリシア諸都市国家連合。レオニダスら三百人の戦士が命を賭けて稼いだ期間で、ギリシア側も今度こそ準備を整えていた。
それぞれがスパルタ戦士に率いられた諸都市国家の軍団。もはや300ではない。ケタが違うのである。
もはやペルシア帝国に勝ち目はない。スパルタの恨みを思い知るがいい。
これが世に云う「プラテアの戦い」である──いや、絶対そんな筈はないッ。でも男の血が燃える。もう信じるからな。
ザック・スナイダー監督の過剰に処理された色調の画像が独特の雰囲気を醸しています。実写映像なのかアニメなのかよく判らないですが、これはこれでイイ感じです。
『ドーン・オブ・ザ・デッド』ではゾンビを走らせたりして、如何なものかと思われましたが、これはなかなかいい監督なのでは。俺的評価を上方修正しました。
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