2014年8月31日日曜日

ルパン三世

(Lupin the 3rd)

 モンキー・パンチによる同名コミックスの実写映画化、と云うよりはアニメ化された方の実写化と云った方が通りがいいような按配です。『ルパン三世』はかつて一度、目黒祐樹主演で『ルパン三世/念力珍作戦』(1974年)として実写化されて、そのトンデモな出来映えが伝説となった──同時上映が『ノストラダムスの大予言』で、これもまた別の意味で伝説デス──作品もありましたが、今度は真っ当な実写化になりました。
 長らく実写化が噂されており、ハリウッドで欧米人俳優を起用すると云う噂もありましたが、ふたを開けてみればメインは日本人俳優での実写化となりました。
 うーむ。でも、ニコラス・ケイジのルパンと云うのも見て見たかったような……。

 キャラクターの造形はアニメ版の方により近い感じですので、主要な五人のビジュアルは見ただけで誰が誰だか判るのが素晴らしいデス。
 主役のルパン三世役がまさかの小栗旬。以下、次元大介役に玉山鉄二。石川五ェ門役に綾野剛。峰不二子役が黒木メイサで、銭形警部役が浅野忠信。
 個人的には、小栗旬がここまで似せてくるとは驚きでした。モンキー・パンチのヒョロッとしたデザインに可能な限り近づけております。小栗旬に比べると、黒木メイサが不二子役なのはすごく順当な感じで、役作り不要な感すらあります。
 次元、五右衛門、銭形も、記号の多いキャラクターですので、似せるのはあまり難しくないでしょうか。浅野忠信はアニメ版初期の「まだちょっとカッコ良かった頃の銭形警部」といった趣でした。

 とは云え、お子様にはあまりウケないようで、うちのムスメはシネコンのロビーに大々的に貼り出されたポスターを見て、かなり否定的でありました。
 「こんなのルパンじゃなーい」って、お前は語れるほどルパンを知ってるのか。お前の知っているルパンは専ら『名探偵コナン』とコラボしたルパンだろう(『カリオストロの城』だけは父親の責務として鑑賞させておきましたが)。
 ムスメに云わせると、この中で一番似ているのは不二子ちゃんだそうな。へー。

 ともあれ、小栗ルパンの飄々とした演技は実に見事で、台詞の口調がアニメ版にそっくり。まぁ、個人的にそこまで似せる必要があるのかと疑問に感じないではないデス。
 このあたりがモンキー・パンチのコミックが原作と云うよりも、アニメ版が間に入っていると感じてしまう原因であります。個人的にはアニメにあまりこだわらず、目黒祐樹くらいフリーな解釈でルパンを演じるのも却って良いのではないかとさえ思いマス(田中邦衛の次元や、伊東四朗の銭形もそうでしたが)。
 だって皆、山田康雄のモノマネに終始していては面白くないのでは(だから古川登志夫のルパンも悪くないと思っております)。

 知人にそんな感想を漏らすと、「最近のアニメ版では栗田貫一もモノマネ一辺倒ではなく、独自路線を確立している」のだそうで、それは存じませんでした。実はアニメのルパンは山田康雄がお亡くなりになって数年で観なくなってしまったのです。うーむ。『次元大介の墓標』(2014年)はそんなに良かったのか……。
 しかしやはり世間一般的には「ルパン三世=山田康雄」なのでしょうから、小栗ルパンもこの路線を踏襲せざるを得ないのでしょうか。つくづく山田康雄は偉大であったと感じます。

 また、コンセプトがアニメ版の実写化だからなのか、劇中でもどこかで聞いたような台詞が炸裂しまくり。「裏切りは女のアクセサリーみたいなもの」とか「またつまらぬものを斬ってしまった」とか。
 CG特撮の技術も進歩したので、アニメ的な表現がほぼ違和感なく実現できているのも凄いデスね。五右衛門が高速道路上で走行中の車をぶった斬る場面は実写でも違和感ナシ。
 逆にそういう場面が無いとクレームがつきますか。このあたりはオリジナル色を出そうとしたエメリッヒ版『ゴジラ』(1998年)が総スカン喰らい、割とビジュアルを元に戻したエドワーズ版『ゴジラ』(2014年)が好意的に受け止められているのと同様でしょうか。やはり「変えてはいけない様式」と云うものがあるのだ。
 でもどうせそこまでするなら、小栗旬にはCG合成とワイヤーアクションを駆使したルパン・ダイブ──あの瞬時に脱衣し、服が空中でまだ人型を保っている間に不二子のいるベッドに向かってダイビングしていくアレ──を映像化して戴きたかった。小栗旬では事務所的にNGなのかしら。

 監督は北村龍平です。『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)以降スルーしておりましたが──『ミッドナイト・ミートトレイン』(2008年)も観たかったのですが──、アクション満載のエンタメ作品の撮れる監督ですし、問題ないですね。
 本作では欧米ではなく、シンガポールに始まり、香港、タイとアジア各国でロケしており、なかなか国際的というか無国籍なアクション映画に仕上がっておりました。
 主演以外の俳優も、米国、中国、韓国、タイの俳優さんを多数起用しております。でも台詞は全て日本語吹替になっておりますが。

 しかし、各国でロケして、その国の俳優を多数起用している所為か、妙に登場するキャラクターが多すぎるような気がしました。これは監督の意向と云うよりも、制作上の大人の都合からなのでしょうか。
 ぶっちゃけ、ルパンの仲間としてはいつもの三人さえいれば充分な気がします。
 只でさえ警察関係や、ラスボス的な親玉と配下の殺し屋達といった敵役も多いのに、これ以上仲間を増やしてどうする。おかげでルパン一家の人数が定員オーバー気味で、見せ場が少なくなったキャラもおり、そこがちょっと残念なところではありました。

 本作オリジナルのキャラクターとしては、ルパンが「叔父貴」と慕う往年の大泥棒ドーソン(ニック・テイト)なる人物が登場します。そして更に、ドーソンが組織した義賊集団〈ザ・ワークス〉に所属する泥棒たちといった面々もおります。原作でも初期にあった〈ルパン帝国〉のような設定です。
 実写化第一作──『念力珍作戦』は忘れるとして──なので、もう一度メインのキャラクターの出会いから始めたいと云う気持ちは判ります。
 序盤でドーソンは命を落とし、〈ザ・ワークス〉が所蔵していた秘宝が奪われる。
 ドーソンの護衛だった次元大介と、ルパンはここで初めてコンビを結成して、ドーソンの仇討ちと秘宝の奪還を誓うと云う展開。〈ザ・ワークス〉を追っていたインターポールの銭形警部とも初対面になります。

 銭形警部に向かってルパンが「アンタ誰?」なんて尋ねたりする場面があって、ちょっと奇妙な感じがしますが、何事にも始めはあるか。でも当然のことに、本作では銭形警部はルパン逮捕に血道を上げていないのが、物足りなくもあります。
 そのあたりは第一作だから仕方ないか。この手の映画化にはアリガチですが、第一作が終わったときにお馴染みのスタイルが完成すると云う流れですね。
 だから本作では、銭形警部にはルパンよりも優先しなければならない相手がいて、その為にルパンに対して共闘を持ちかけたりします。原作の方でも似たシチュエーションがありましたでしょうか。
 若干、キャラクターの出会いの設定が前後しておりますが、基本は変わらないので違和感を感じるほどではありません。ルパンが不二子にベタ惚れなのもお約束。
 その割に、五右衛門はルパンとは古い付き合いだったりしますが。

 ルパンと不二子を巡って対立するマイケル・リーなるライバル役を演じているのがジェリー・イェン。台湾の人気アイドルだそうで、ワイルドなイケメンです。
 それくらいにしておけば良かったのですが、〈ザ・ワークス〉のメンバーとして、他にも数人の泥棒仲間が登場します。序盤でドーソンと一緒に落命するジロー(山口祥行)くらいならまだいいが……。
 まったく馴染みのないピエールなる若造(キム・ジュン)と、更に後半になってピエールが連れてくる天才プログラマ、ヨーゼフ(ジャエンプロム・オンラマイ)はどうしたものか。そんなに増やさなくてもいいのに。
 キム・ジュンは韓国の若手の俳優、ジャエンプロム・オンラマイはタイのコメディアンだそうで、各国の俳優を揃えることにそこまでこだわらなくてもと思わざるを得ません。
 どうにも「大人の事情で登場人物を増やさざるを得ませんでした」的な匂いが漂っております。

 第一、タイの俳優としては「銭形警部の旧友」であり、タイ陸軍のナローン大佐役のヴィタヤ・パンスリンガムが出演しているじゃないデスか。この人だけで充分なインパクトがありますよ。
 ヴィタヤ・パンスリンガムは、ニコラス・ウィンディング・レフン監督のクライム・サスペンス映画『オンリー・ゴッド』(2013年)で強烈な印象を残してくれた方ですねえ。主演のライアン・ゴズリングより忘れ難い。
 本作でも、タイ人なのに「日本の剣道を嗜んでいる」と云う、妙な設定が描かれております。
 『オンリー・ゴッド』では無口な人でしたが、本作のヴィタヤ・パンスリンガムはよく喋ります。

 そしてラスボスになるのが、世界的大富豪にしてセキュリティ業界の大物プラムック(ニルット・シリチャンヤー)。プラムニックの美人秘書ミス・ヴィー(ラター・ポーガーム)なんてキャラもいたりして、妙にタイに偏っているような気がします。
 まぁ、後半の舞台はタイに固定され、クライマックスは〈ザ・ワークス〉から奪われたお宝を巡って、プラムックが誇る難攻不落の要塞〈ジ・アーク〉にルパン達がアタックすると云う、至極真っ当な「泥棒映画」の展開になってくれたのが嬉しいです。
 目当てのお宝が「クリムゾン・ハート・オブ・クレオパトラ」と呼ばれる巨大な真紅のルビー(が填まったネックレス)なんて秘宝であるのも、あまりにもベタな設定ですが、目くじら立てるほどではないか。大事なのは秘宝そのものではなくて、それを奪取しようとする手際と段取りの方ですからね。
 ハイテクの限りを尽くしたセキュリティの要塞に、最後の最後で超絶アナクロな古典的金庫破りのシチュエーションを持ってくるのも面白い。原作コミックスにもそんなエピソードがありましたっけ。
 本作にはあちこちに、原作のコミックスやアニメ版を連想させる場面やシチュエーションが散りばめられております。

 そして事前の準備と、その場のアドリブで数々の難関をクリアし、それぞれの理由からプラムックに戦いを挑むルパンとマイケル。二人のライバル関係と、男の友情を描くのがドラマ上のメインのようですが、ちょっとドラマのネタが盛り沢山すぎて印象が散漫になったきらいがします。
 一方、プラムニック配下の三人の手下と、次元、不二子、五右衛門がそれぞれ対決することになる筋立てはバランスが取れていると思うのですが、やっぱりピエールとヨーゼフは余計でしたかねえ。
 アクション演出もそつなくこなし、布袋寅泰の演奏するメインテーマ「TRICK ATTACK」も軽快で(昔のチャーリー・コーセイのテーマの方に近いでしょうか)、なかなかノリのいい映画ではありましたが、やっぱりもうちょいキャラクターを整理して戴きたかったデス。
 多分、続編ではもう少し考慮して戴けるのではないかと期待したいところです。

 ツッコミ処のある脚本なのは御愛敬ですが、個人的には「〈ジ・アーク〉前の地雷原を堂々と行進してくるタイ陸軍兵士の皆さんの図」が一番ツボでありました。もう少し細かい部分に気を配ってもらわないと、アクションは面白くても大味な印象は否めませんデス。




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