実は、毎月1日が「映画の日」なのをいいことに、本作を安く観ようと劇場に足を運んだら、本作はイベント上映なので割引適用外の特別料金(1,500円)でした。なんじゃそりゃー。
ちょっと割高(それでも定価よりは安いが)な上に、これがまた残念な出来だったので、残念な上にも残念。そんなこと判っていた筈だろうと云われれば一言もありませんが、まだ「第一章」の方がマシでしたかねえ。やはり最初はご祝儀的に好意的な評価にもなりますが、それはいつまでも続くものでは無いのですけど。
早くもシリーズの先行きに暗雲が立ちこめているような気がします。
ただ、映像のクォリティには問題ないのです。では、どこが残念かと云うと、押井守(と山邑圭)の脚本が残念。
第一話のオチも「爆発オチ」でしたが、第二話までも同じパターンでした。これは一話完結のコメディ(と云うか、ナンセンス・ギャグ)の特撮ものだったのか。それはソレで珍しいか。但し、「珍しい」のと「面白い」のは違いマスけど。
昔、三〇年以上前に『うる星やつら』で散々、酷評されていた「爆発オチ」を連続して堂々とやってのける度胸の方に感心します。すべてをウヤムヤの内に終わらせる爆発の後で、それまでのことを一切、無かったことにして次のエピソードが始まるので、余計に釈然としません。
こんな脚本では、頑張って撮影しているスタッフと演じている俳優の方が可哀想です。CGクリエイターにだって何の罪も無いだろうに。わざわざ実写でリメイクする意義があったのか疑問です。
第二話 「98式再起動せよ」 監督 : 辻本貴則
ある日、イングラム一号機の起動試験を行っていた特車二課は、調子に乗った泉野明(真野恵里菜)の無茶な操縦のためにイングラムを大破させてしまう。
間の悪いことに、警備部の装備総点検の日程が組まれてしまい、特車二課はイングラムを式典に出さざるを得なくなる。しかも警視総監の前でリボルバーカノンの礼砲まで撃たねばならず、修理もままならない状態から、五日間で大破したイングラムを稼働可能なまでに持っていかねばならない。
整備班員達の地獄の日々が始まった。
格納庫内で整備班員達がやたらと空手や拳法のレッスンをしている場面は前回にもありましたが、今回はイングラムに空手の型を演じさせようと云う趣向です。CGで動いているとは云え、頑張って実写合成しているのはお見事デス。
往年の名機とは云え、今ではポンコツと云う設定の筈ですが、実になめらかに動いております。イングラムが動く度に、間接部分のモーターやらアクチュエーターが唸りを上げる効果音もなかなかリアルです。
しかしだんだんと無茶な動作をし始め、油圧機構が悲鳴を上げ始めてもお構いなしとは、操縦担当も指揮担当もまだまだ未熟です(三代目ですから)。
結果、格納庫内で盛大に転倒し、大破。1号機の修理のために2号機から部品を調達したために、二機そろってしばらく動けなくなります。
そこへ降って湧いた装備総点検の日程。実はかねてから特車二課の廃止を目論む警視庁上層部の陰謀が進行していたのだった。
イングラム損壊の報せを受けた上での、嫌がらせも同然の装備総点検。些細な不備でもあろうものなら、特車二課は即廃止となることは目に見えている。
先代から受け継いだ特車二課を、自分の代で終わらせるわけにはいかんと、シバシゲオ(千葉繁)は整備班フル回転でイングラムの修理に取り組み始める。
ドラマとしては、出だしはそれなりに快調でした。不眠不休で修理に取り組む整備班員達が、次第にゾンビのようになりながら格納庫内を徘徊している様子も、まぁ面白いデス。
交換部品の調達にメーカーへ直談判に赴いたシバシゲオが、引退した篠原重工の内山工場長から部品を融通してもらう展開も、アニメ劇場版の設定を受け継いでおります。でも「内山さん」はセリフの上で名前が呼ばれるだけだったのが残念でしたが。
二足歩行ロボットは「ただ立たせておくだけでも大変な労力を必要とする」とか、リボルバーカノンの詳細な解説とか、それなりに理屈をこねながら見せていく演出も興味深い。やはり実物大のモデルを制作して撮影するので、リボルバーカノンの描写は重厚でした。
もはや「兵器」と呼べるレベルの代物なので、保管やら点検やらの演出も凝っております。
そしてどうにか稼働できそうな状況になると、陰謀を企む上層部の方が焦って総点検の式典まで待たずに、警視総監を伴って抜き打ちの視察にやって来る。
突如として総監が視察に来ると云うので、大騒ぎになる特車二課。果たして総監の視察が終わるまで、イングラムはちゃんと「立っている」ことが出来るのか。
ただ立つだけ動作が、実に緊張感を持って描かれ、スピーチする総監の背後で、ギシギシ嫌な音を立てながら揺れるイングラムの姿は実にスリリングでした。この緊張感溢れる演出はなかなか面白かったので、ここまでなら第二話に文句を付けるつもりは全くありませんデス。
総監のスピーチがどこかで聞いたような、「そして源義経は大陸に渡ってジンギスカンになるのであります云々」と云う台詞であるのも、まぁ良しとしましょう(楽屋落ちだなぁ)。
ここまでリアルに描いてきて、最後に「礼砲を撃ってみろ」と命じられ、やむなくリボルバーカノンを撃つわけですが……。
そこから先が台無しですねえ。
そもそも礼砲用の空砲は、マニアな整備員が仕上げた「特別な弾」だと断りを入れてはおりますものの。
撃った瞬間に格納庫が吹っ飛び、大爆発は半球状の火球となって埋め立て地全域を覆い尽くし、やがて煙が晴れると、瓦礫の中に特車二課のメンバーやら警視総監や警備部長やらが無言のまま立ち尽くしている。着衣はボロボロ、髪型は滅茶苦茶、顔中ススだらけ……と云うのはギャグとしては面白いデスが、これでは特車二課廃止は確定なのでは。
「やりすぎだ……」と口から煙を吐きながら倒れる後藤田隊長(筧利夫)。本作はギャグアニメを実写でやろうと云う企画だったのでしょうか。
しかも、廃墟と化した格納庫内に奇蹟的にイングラムが残っているワケですが……。
1号機は、首なしとなって、右腕を真上に伸ばしてリボルバーカノンを天に向けて仁王立ちしております。2号機は、膝を立てて座り込んで、頭部を膝の上に載せて擱座しております。
各々がサンライズ制作の某有名ロボット・アニメのパロディですね。
申し訳ありませんが、笑えませんでした(劇場内でも苦笑というか失笑が漏れておりました)。
第三話 「鉄拳アキラ」 監督 : 湯浅弘章
そんな楽屋落ちの第二話のラストから、間髪入れずに第三話が始まってしまうのが一番、納得いかんです。破壊された格納庫は元通り、イングラムも元通り、警視総監の前で大失態を演じてしまったことも「全て無かったこと」になっていて、いつもの特車二課の日常が描かれております。
実写映像化するからと云って、リアルなドラマを期待した方が間違っていたのでしょうか。
随所にアニメ風の演出が入るところは許容できるのですが──聞き耳を立てると耳がCGで巨大になるとか──、ストーリーが全部リセットされてしまうことには納得いかんです。
せめて次のエピソードには支障を来さないようなオチであってもらいたかった……。
退屈な待機任務から、特車二課メンバーはほぼ全員がネット中毒、重度のゲーム・オタクである。中でも泉野明はコアな格闘ゲームのマニアであった。
待機任務が終わると、近所のゲーセンに出かけていき、格闘ゲームに興じる日々です。
格闘ゲーム好きが高じて、ゲームのキャラクターになり切る白昼夢まで見ます。
私、格闘ゲームにはあまり詳しくありませぬが、ここで真野恵里菜と太田莉菜が『鉄拳』のキャラクターになり切って実写で戦う場面は、かなり再現度が高いように思われました。
衣装も見事に再現され、ワイヤーアクションも気合いが入っております。特に太田莉菜のアクションは実に凛々しい。他のエピソードでも披露されますが、太田莉菜は香貫花……じゃなくてカーシャの立ち居振る舞いから、ロシア語の弾丸トーク(かなりネイティブな発音)まで、見事に演じておられます。
太田莉菜が特車二課のメンバーの中で、一番気合いの入ったキャラクターに感じられます。カーシャが主役の方が良かっ(げふんげふん)。
ある日、明はゲーセンで向かうところ敵なしのオヤジ・ゲーマー(竹中直人)に出会う。どんなゲーマーが挑戦しても敵わない。明も挑戦するが、小銭が尽きるまで対戦しても、一勝も上げられず。
竹中直人は「ただの強いオヤジさ」と名乗ることなく去って行く。
この時から、あのオヤジと再戦して勝利することが明の目標になるのだった。
竹中直人は劇場版の『機動警察パトレイバー』にも声優として出演しておりましたが、付き合いのいい人ですねえ。謎めいた男を実にカッコよく演じております。
このエピソードでは、押井守の他の作品にも出てくる「プロのゲーマー」が扱われております。定職に就くことなく、ゲームや立ち食いだけで生活すると云うのは『アヴァロン』(2001年)や『真・女立喰師列伝』(2007年)にも見受けられる設定です。それ以前に『うる星やつら』の頃からありましたっけ。
押井守は「プロのゲーマー」とか「プロの立ち食い師」とか云う設定が余程、好きなようで。
「お前には勝つための思想がない」と云い放ち、禅問答のような言動で真野恵里菜を翻弄する竹中直人です。寺山修司を引用したりもしております。
それでも、何とか一週間後の再挑戦を承諾させ、特訓に励む明。
ゲームの腕を磨くために、生身での格闘訓練、果てはイングラムを操縦しながらの訓練に励みます。
一話完結だし、突っ込んでも詮無きこととは云いながら、ポンコツだとか、立たせておくのがやっととか云われる一方で、このエピソードではゲームに勝つために「イングラムに搭乗して川沿いの土手をランニングする」なんてこともやっているのが釈然といたしません。
もう、設定の整合性について考えるのは止めた方がいいのかしら。
そうやってドラマで盛り上げるところまでは普通ですが、拍子抜けするオチになってしまうのが、本シリーズのパターンのようです。
期待させて盛り上げておきながら、最後は謎めいたオヤジに煙に巻かれて、おしまいです。まぁ、多分、そんなことだろうとは思いましたが(学習の成果ですね)、だからどうした的な結末。
結局、竹中直人が何者だったのかは、遂に判らず仕舞い。カッコ付けて去って行きますが、単に再戦を避けて逃げ出しただけなんじゃ……。
どのあたりが『機動警察パトレイバー』だったのか、観ている側も煙に巻かれて終わってしまいました。
多分、この実写版『パトレイバー』は全編、こんな感じの不条理なギャグアニメ調のドラマになるのでしょう。期待せずに一話完結のエピソードを笑って観るのが正しい鑑賞法なのか。でも私の期待したドラマとは違ったなあ。
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