『アメイジング・スパイダーマン』(2012年)のラストで登場した「謎の男」が本作にもまた登場して、表面的な事件は一作毎に解決しても、根本的なところで陰謀は進行していくような流れになっております。
前作に引き続きアンドリュー・ガーフィールドがピーター・パーカー役となり、剽軽なヒーローを熱演しております。サム・ライミ版のトビー・マグワイアよりも、ちょっとノリが良すぎるところもあるので好みの分かれるところでしょうか(個人的にはトビーの方が……)。
恋人グウェン・ステイシー役も変わらずエマ・ストーンですし、メイおばさん役も変わらずサリー・フィールドです。亡くなったベンおじさんも、回想シーンでチラッとマーティン・シーンが顔見せしてくれます。
総じてメインの配役は変わりなしです。
スタン・リー御大のカメオ出演もお約束。今回は序盤でピーターとグウェンの高校の卒業式に列席しているゲストの役でした。
監督も同じだし、特に問題は無いのですが、音楽がハンス・ジマーになったのだけは解せませんです。ジェームズ・ホーナーで続けて戴きたかったところです。
別にハンス・ジマーが悪いワケではありませんが、近年のバットマンやらスーパーマンやらの映画もハンス・ジマーなので、もう少し差別化を図っても良さそうに思われました。
でも、アクション演出や映像の完成度には文句の付けどころもございません。本作もまた楽しめるエンタメ作品であります。3Dを活かしたカメラワークも強調されております。特にスパイダーマンが高所からダイブする場面は前作よりも効果的に感じられます。
ただ、しばらく観続けていると3Dであることを意識しなくなりますが、それはストーリーが面白いからと納得しましょう。
本作は前作よりも更に長くなって一四三分もありますが、ダレること無く観続けていられます。逆に、尺が長いくせに詰め込みすぎなのではと感じられるところもありまして。
本作では、ピーターの両親の死の真相が克明に描かれますし、併せて恋人グウェンとの関係、親友ハリーの登場と盛り沢山な内容の上に、スパイダーマンの敵になる悪役の人数も多いので、どうしても詰め込み過ぎになる印象は否めませんです。
本作における悪役は、もっぱら電撃魔人エレクトロです。これだけでも充分なのに、無理してグリーン・ゴブリンまで登場させているように思われました。更に、ライノに至っては……まぁ、これは扱いの小さな雑魚もいいところだし、かなり予告編詐欺な感じでした。
事前の予告編とかを見ていると、エレクトロだけでなく、グリーン・ゴブリンとライノも参戦して、スパイダーマンが一対三の不利な戦いを強いられる……ように思われたのですが、これは肩透かし。
エレクトロを演じているのは、名優ジェイミー・フォックスです。気の弱い電気技師の男で、スパイダーマンの(ちょっと偏執的な)ファンであるのに、エレクトロ化して性格が変わってしまう。影が薄く世間から見向きもされていなかった男が、強力なパワーを手に入れるあたりは、スパイダーマンと差して変わるところはありません。上手くいけばヒーローにもなれたろうに。
パワーの性質にもよるものでしょうが、偶然の出来事も手伝って、世間から怖れられ、また逆ギレもしてしまい、悪役になっていく過程が少し可哀想ではありました。
ジェイミー・フォックスの演技が若干オーバー気味でしたが、なかなか印象的な悪役です。
エレクトロに比べると、グリーン・ゴブリンの方は少し残念な扱いです。
サム・ライミ版では三部作を通じて、親子二代にわたる宿敵として描かれ、最後はまた親友同士で和解もすると云う胸熱なキャラクターだったのに、本作におけるグリーン・ゴブリンの扱いは、ちょっと手抜きのようで勿体ない感じがします。
正体は原作と同じく、ピーターの親友ハリー・オズボーンでありまして、演じるのはサム・ライミ版でのジェームズ・フランコに代わって、デイン・デハーンです。ジェームズ・フランコよりも陰のある病的な青年になりました。
マーク・ウェブ版でのオズボーン親子は本作で初めて登場するので、本作だけで基本設定の紹介からハリーのゴブリン化までを描く必要があります。しかもこれをエレクトロのエピソードと並行して描かねばならない。
如何に一四〇分越えの尺でも、これはちょっとキツい。
ハリーの父ノーマン・オズボーン役に、クリス・クーパーが登場してくれたときは驚きました。これはサム・ライミ版のウィレム・デフォー並みの怪演が期待できると思ったのデスが……。
マーク・ウェブ版ではノーマンはゴブリン化することなく、すぐにお亡くなりになって、いきなりハリーがゴブリンになります。基本的にオズコープ社が開発した強化服と機動マシンでゴブリンになるのはサム・ライミ版と同じです。
違うのはオズボーン家に遺伝子疾患が受け継がれているという設定で、マーク・ウェブ版ではこれが色々なところで影響しています。オズコープ社の生物学的研究開発はすべてオズボーン家の遺伝子疾患を治療するためのものだと云う設定。
人間のDNAに他の生物のDNAを組み込んで治療薬を開発し、併せて生物兵器の開発にも流用して儲けようという一石二鳥な計画。これがスパイダーマン誕生の背景にもあり、本作でのエレクトロ誕生の背景にもなっています。
まぁ、ヒトのDNAに蜘蛛やらトカゲやら電気鰻やらのDNAを掛け合わし、細胞の治療薬が開発できるものなのか甚だ怪しいと云わざるを得ませんが、とりあえず共通の背景があるので統一感は出ていますね。何もかもオズコープ社の所為か。
ハリーは父と同じく発症し、父と同じ道を辿るのだと恐怖する。唯一、治療薬として期待できる蜘蛛のDNAを組み込んだ成功例がスパイダーマン。
そしてスパイダーマンの血を輸血すれば自分は助かるものと盲目的に信じ込んでしまう。
懐疑的なピーターに拒絶されて逆恨みし、是が非でもスパイダーマンを捕らえて血液を戴こうとするハリーがエレクトロを利用して共闘するのはいいのですが、ハリーのゴブリン化は次回作まで待った方が良かったのにと思います。
結局、スパイダー血清は役に立たず(ピーターにだけ適合したのにはちゃんと理由がある)、ハリーは肉体的にも精神的にも異常を来してグリーン・ゴブリンとなるのですが……。
このエピソードはもっとじっくりと尺をかけて描けば良いのに、ジェイミー・フォックスのエレクトロが強烈な印象なだけに、グリーン・ゴブリンの方が霞んでしまいました。
一応、原作に則った有名な展開ではありますが、「恋人グウェン・ステイシーがグリーン・ゴブリンによって殺害される」ところまでも含めようという欲張りすぎた脚本にしてしまった為に、ちょっと後半のバランスが崩れた感じがします。
死闘の末、エレクトロを倒した直後にグリーン・ゴブリンが現れ、そこからまた第二ラウンドが始まる。
映像的にも音響的にも迫力ありますし、スピード感溢れるバトルをスローモーションも駆使しながら、高所からの落下を3Dで強調して描く演出は巧いのですが、やはりエレクトロに尺を取られすぎたのが不味かったでしょうか。
ちょっと取って付けた感が漂ってしまったのが残念でした。
恋人の死によってスパイダーマンを廃業するピーター。ヒーロー不在のまま、季節が移り変わっていく場面が泣けます。
そしてある日、ピーターは生前のグウェンが残した卒業式でのスピーチを目にする。ヒーロー復活にちゃんと伏線を張ってあるのがお見事でした。
サム・ライミ版でも第二作にはスパイダーマン廃業の危機が描かれておりましたが、本作もまた同様のエピソードを盛り込もうとしております。経緯は異なれど、ちゃんと消化しなければならないポイントがあるわけですね。
本作にはデイリー・ビューグル社の編集長が登場しない分、恋人の死が大きく扱われていて、これはこれでスパイダーマンの物語としては印象的です。
サム・ライミ版ではグウェンは登場せず、いきなりキルステン・ダンスト演じるメリー・ジェーンとの関係が始まっておりましたが、マーク・ウェブ版ではこのあたりの段取りはきちんと踏襲するつもりのようです。
多分、第三作ではメリー・ジェーンが登場してくれるのでしょう。
そして、最後の最後にライノの登場です。予告編での大きな扱いに比べて本編での小さすぎる扱いに泣けます。
しかもライノを演じているのは、まさかのポール・ジアマッティ。仕事を選ばない人ですね。
実は本作の冒頭には前座のアクションとして、プルトニウム強奪犯が輸送車を暴走させてNY市街で激烈カーチェイスする場面があります。この強奪犯がポール・ジアマッティ。
前座らしくアッサリとスパイダーマンに片付けられて(それなりにカーチェイスは頑張りましたが)、それっきり本編には影も形も登場しない。
すっかり忘れてしまった後になって、刑務所に収監されていた筈のポール・ジアマッティがサイ型の装甲強化服を着込んでリベンジに現れる。
本作はいわば、ポール・ジアマッティに始まり、ポール・ジアマッティに終わる形式になっていて、ある意味、ジェイミー・フォックスよりも印象的かも知れません。ちょっとマヌケな凶悪犯をポール・ジアマッティが楽しそうに演じております。
恋人の死を乗り越え、ヒーロー稼業に復帰したスパイダーマンがライノの前に立ちはだかり、これからと云うところでエンドです。もはや倒されるところまで描いてもらえないとは(笑)。
それともライノは次回作にも登場してくれるのでしょうか(それはないと思うが)。
ところで、エレクトロは盛大に爆死しましたが、実はグリーン・ゴブリン化したハリーは本作ではまだ生きて刑務所に収監されております。この辺はバットマンの〈ダークナイト〉三部作と似た設定ですね。
前作のラストにも登場した「謎の男」が登場し、何やら陰謀を進めておりますが、スパイダーマンへの復讐を誓うハリーはこれに協力してオズコープ社が開発した機動兵器を提供することに。ポール・ジアマッティが着込んだ装甲服もそのひとつで、画面の中にはどこかで見たようなタコ型マニピュレータも登場してくれます。
果たして裏では如何なる陰謀が進行しているのか、第三作では少しくらいは明らかにしてもらいたいものですし、グリーン・ゴブリンの本格的な活躍にも期待したいところです。
マーク・ウェブ版スパイダーマンがマーベル・コミックスの他のヒーロー達とコラボするのかも、今のところは不明です。せっかくサム・ライミ版からリブートしているので、『X-MEN』や『アベンジャーズ』ともクロスオーバーしてくれないものでしょうか。
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