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2013年10月26日土曜日

ドキドキ! プリキュア

マナ結婚!? 未来につなぐ希望のドレス

 通算一五作目のプリキュアの劇場版です。『ドキドキ!プリキュア』でシリーズ一〇周年だから、うちのムスメ(姉の方)と同い年ですよ。
 しかし妹(八歳)の方はまだ喜んでおりますが、お姉ちゃんの方は「劇場内にいるお子様たちが皆、自分よりずっと年下である」ことを気にし始めました(そりゃまぁねえ)。もうボチボチ、プリキュアの劇場鑑賞に連れてこられなくなるかも知れません。パパの楽しみが奪われそうだ。
 もう少しは妹につき合ってあげてよ(本当はパパにつき合わせていることは内緒だ)。

 今回はサブタイトルにあるとおり、未来に関するストーリーになっております。プリキュアのエピソードでタイムトラベルが絡んでくると云うのは初めてではなかろうか。色々と考えますねえ。
 両親の結婚とか、自分の結婚がストーリーに関わってくると云うと、なんか『ドラえもん』のようなエピソードになるのかとも想像しておりましたが、少し方向が違いましたですね。本作ではタイムパラドックスとかも扱われません(SF者としては残念)。

 冒頭、押入を整理しているとママのウェディングドレスが発見されるところから始まります。これはかつてお祖母さんが着たウェディングドレスであり、マナちゃん(生天目仁美)もこれが着たいと云いだしお父さんを驚かせております(まだ中学生なのに気が早いお父さんです)。
 マナちゃんがこれを着れば、母娘三代にわたるウェディングドレスとなり、新品のドレスよりも何倍も素敵なことであると云うのは良いことです。
 でもうちは貸衣装で済ませてしまいましたので、自分のムスメがマナちゃんと同じ事を云いだしても着せてあげることは出来ません(大体、自前のウェディングドレスで挙式する人はどれくらいいるのだろう)。
 「ママのウェディングドレス」と云うのも、ある種のファンタジーなのではなかろうか。

 もらい受けたドレスを枕元に吊して眠ると、自分が結婚式を挙げる未来の情景が夢に現れ、これがそのままオープニングになっております。大人になったプリキュアの面々が列席している様子が楽しいです。
 そしてお父さんに付き添われた花嫁のマナちゃんがヴァージンロードを進んでくる。女の子の夢ですねえ。うちのムスメらもワクワクして観ておりました。しかし新郎の方は一体誰かいな。
 顔が映らないなと思っていたら、実は新郎はイーラ(田中真弓)だったと云う夢オチでした。悪夢だ。

 実は本作に於けるジコチュー達の出番はここだけです。マーモ(田中敦子)もベール(山路和弘)もセリフ無し。勿論、キングジコチュー様(大塚芳忠)も登場しません。劇場版はTVシリーズとは独立したエピソードであるからですが、レジーナちゃん(渡辺久美子)も出番なしかッ。
 主人公の妄想結婚式がオープニングとは、『小鳥遊六花・改/中二病でも恋がしたい!』(2013年)と同じパターンですね。流行ってるのかしら。

 翌日、ウェディングドレスの件で盛り上がる皆さんですが、恋愛に疎いマナちゃんが結婚するのはまだまだ先のことのようです。TVシリーズにたまに登場するクラスメイトの男子、二階堂くんからも笑われておりますが、特にコレは伏線ではないようです。
 二階堂くんが将来の結婚相手という方向に進むのかと一瞬、期待しましたが『プリキュア』ではそこまでの恋愛展開にはなりませんね(そこが『セーラームーン』とはちょっと違う)。
 伏線なのは「お祖母さんから教わったおまじない」と「昔、マナちゃんが飼っていた白い犬」の方でした。本作はいつもの通り七〇分程度の尺しかありませんが、頑張って伏線を幾つか仕掛けております。

 さて、前振りが終わったところでおもむろに本編に突入ですが、今回の敵はジコチューではなく、人間に捨てられたモノであります。付喪神か。大友克洋監督の『SHORT PEACE』(2013年)の中のエピソードを彷彿といたします。
 劇中では、序盤に街の名画座が取り壊される場面があり、古いものが廃れていく時代の流れが強調されておりました。
 そして「捨てられたモノの恨みを晴らす」べく、オモイデの国なる世界から一人の男がやって来る。マシュー(谷原章介)と名乗る男がクラリネットを奏でると、物悲しいメロディに誘われて、廃品集積場から物品が次々に飛んできて合体していき、何やらクジラ型の空中戦艦が出来上がっていきます。

 しかし廃品ばかりで作られているのかと思いきや、街中の各家庭からもピアノやら家具やらが引き寄せられていきます。
 だからマナちゃん宅からも「ママのウェディングドレス」が引き寄せられていこうとするのを、必死になって制止するワケですが、廃品でないものまで引き寄せてどうする。「捨てられたモノの怨み」ではないのか。なんか敵の趣旨がちょっとズレているような気がします(笑)。
 そして早々にマナちゃんはマシューと対峙するのですが、マシューの方はマナちゃんを見知っている素振りです。「迎えに来た」とも云っているあたり、過去に因縁があるらしい。

 マシューは街中の人々を次々に掠って「オモイデの世界」に閉じ込めていく。人間達を過去の世界に捕らえてしまうことが目的であるようですが……。
 ここで人々を捕らえるマシンが、映写機型をしております。序盤の「取り壊される名画座」の場面のイメージがそのまま使われているワケで、映写機からの光を浴びた人間が吸い込まれていきます(アブダクションですね)。
 だから人々の思い出とは、映画のフィルムを模した形式になっている。

 昔懐かしい映写機のカタカタ音と共に、セピア色の画面の中で、人々は「幸せだった頃の思い出に浸って未来に進まなくなる」と云う趣向です。
 空中戦艦の中には広大な映像アーカイブがあって、何列も並ぶスチールラックにずらりと映画のフィルム缶のようなものが納められている。ひとつひとつのフィルム缶が、掠った人間の思い出であるようで、缶のラベルにその人の名前が貼られています。
 人々はそのフィルムの中に閉じ込められているらしい。

 大人にしてみると非常に判り易い比喩表現ですが、小さなお子様にとってはどうなんでしょ。
 まず、「映画がフィルムで上映される」という概念に乏しいのではないか。うちのムスメらにしてみると、映画とは「ピカピカ光るディスクに納められている」のであって、決してフィルムではありません。そもそもビデオテープすら見たことはあるまい。
 どうやらフィルム缶が「分厚いDVD」のように思われていたらしい。なるほど人間の記憶を納めたディスクだから、あんなに分厚くなる……ワケあるかーッ。
 これも時代の流れか。大人と子供ではイメージを共有しづらくなっているのかしら。

 掠われた街の人々を取り返そうと戦いを挑むプリキュア達の前に、マシューが放つ怪人達が立ちはだかる。それぞれが人間に捨てられたモノから出来ており、廃車になったバイクから「パープルバギー(江川央生)」、古時計から「シルバークロック(稲葉実)」、捨てられたマネキン人形から「マネキンカーマイン(浅野真弓)」が誕生する。
 なんだか特撮番組の怪人のようです。ネーミングのルールが『人造人間キカイダー』の怪人ぽいですが、東映の作品だから仕方ないか。いっそ実写化して下さい(笑)。

 一度は敵に敗れ、プリキュア達も各自が「幸せだった子供時代」に囚われてしまうわけで、そこから脱出するまでが本作の見どころでありましょう。
 「亡くなった筈のお祖母さん」、「死んだ筈の愛犬」がまだ元気にしていた頃に戻って、再会の喜びに浸る余り、愛犬が交通事故で死んでしまうときから先に進めなくなってしまうマナちゃんです。未来へ進んでも哀しい思い出が待っているなら、フィルムを巻き戻してまた始めからやり直せばいい。

 ズルイと判っていても、どうしようもないと云うのが人情と云うものか。
 マナちゃんの他にも、真琴(宮本佳那子)は「トランプ王国が健在だった頃」の時間に囚われたりしております。各自がもっとも幸せだった頃なので、なかなか抜け出そうという気持ちになりません。
 かくしてプリキュア達はループする時間の中に閉じ込められてしまう。

 ここで各自のパートナーである妖精達が尽力します。それに協力する新キャラの妖精がベベル(杉山佳寿子)。マシューとは古い付き合いであり、マシューの過ちを正す為に来たと主張する、謎の妖精です。
 色々ありまして、まずはマナちゃん以外のメンバーが正気に返り、帰還の為に戦い始める。まずは六花(寿美菜子)とありす(渕上舞)のペアで共闘となるのですが、この組み合わせでは真琴は単独で脱出しなければならないことになり、これはチト苦しい。

 実は本作では、亜久里ちゃん(釘宮理恵)に出番が無いまま、ここまで来ております。このまま当初の四人のメンバーで進行するのかと思いきや、ここで物凄く唐突に亜久里ちゃんとアイちゃん(今井由香)の登場です。きゅぴらっぱ。
 あまりに唐突に、しかもいきなり真琴の思い出の世界の中に救援に現れるのが、強引すぎて笑ってしまいました。「どうしてここに?」とは観ている側も尋ねたい。
 でも「愛は時空を越えるもの」だけでは答えになってませんですよ。
 尺が短いのは判りますが、もう少し辻褄を合わせて戴きたい。

 脱出の為に戦い続ける友達の声に応えたい。お祖母さんとの別れは辛いが、かつて教えてもらったおまじないに絆を確認し、遂にマナちゃんも帰還を決意する。
 お前の名前のマナは「愛」と書くのよ。愛は困った人に手を差し伸べること。そして愛は受け継がれていくものでもある。お前も愛を未来へつなぎなさい。
 なかなか感動的なお祖母さんの説教に、うちのウムメもホロホロと涙しておりました。泣きの強烈さでは、前作の『スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』(2012年)の方が強烈でしたが、本作もまた結構、イイコト云っております。

 そして現実世界に帰還し、マシューと対決するプリキュア達。ここでマシューの意外な正体が明かされ、更にマシューをそそのかす黒幕まで登場です。
 マシューの正体については、薄々読めておりましたが、まさか更に黒幕がいて、それがマシューの吹いていたクラリネットであったとは意表を突かれました。
 改心するマシューに向かって、いきなりクラリネットが池田勝ボイスで「裏切るのかッ」などと喋り始める。これは付喪神と化したクラリネットなのです(笑ってはイカン)。

 更に正体を現したクラリネットは、「お前達からも未来を奪ってやる」と時空を越えて行ってしまう。追跡する為には伝説のプリキュアのパワーで時空を越える他ないが、今の自分達にはパワーが足りません。
 そこでいきなり亜久里ちゃんがカメラ目線でスクリーンの向こうから、ミラクルブーケライトでプリキュアに力を送ってとお願いします。いや、これは強引ですね。
 今回はいつになく強引な展開が目立っております。やはり過去の思い出話に尺を取り過ぎた所為でしょうか。

 お子様達がピカピカと場内でライトを打ち振り、時空を越えるプリキュア。キュアハートもエンゲージモードに進化いたします。ウェディングドレスを思わせる衣装はなかなか美しいですが、また主人公一人だけが進化してしまうのは如何なものか。
 おまけに、どうにもウェディングドレスと云うアイテムの扱いが軽く、イメージが取って付けたように感じられます。本作は未来のエピソードと云うよりも、過去に囚われる方に比重が置かれています。
 せっかく未来に到着し、それがまた冒頭の夢の場面と同じ「自分の結婚式」の場面であると云うのに、イマイチそれが活かされておりません。結局、本物の新郎の顔は映りませんし。

 ラスボスのクラリネットも「人々に忘れられるモノがある限り、私は不死身だあ」などとパターンな台詞を吐いて御退場。このクラリネットにもそれなりの背景を描いて戴きたかった。
 きっと音楽家の持ち主と演奏していた感動的な過去があった……ハズなのでは。七〇分の尺には納まりきれない展開でしたかねえ。

 囚われていた街の人々は解放され、思い出の中のイメージ達も妖精ベベルに率いられてオモイデの国に帰っていく。人が記憶として憶えている限り、絆は決して失われない。いつでも「また会える」のだと云うのは実に前向きな考えです。
 ここでひとつ種明かし。
 実はお祖母さんの声も杉山佳寿子であると云うのが仕掛けのひとつでありまして、可愛らしい妖精ボイスと、優しいお祖母さんの声を巧みに使い分けるベテランの名人芸を堪能いたしました。こういうのはムスメ達にはまだ味わえないですねえ。

 そしていつものエンディング主題歌「ラブリンク」を歌って終了です。劇場版用にちょっとグレードアップした作画になっております。でもエンゲージモードになるのがキュアハートだけなのが残念でした。
 そのまま恒例の次回作告知も怠りなし。来年の春は『プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』とな。「NewStage」シリーズも、これにてファイナルであるそうな。
 果たしてうちのムスメは次もパパにつき合ってくれるのでしょうか(お姉ちゃんの方はかなり無理っぽい)。




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