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2013年4月28日日曜日

アイアンマン3

(Iron Man 3)

 マーベル・コミック原作の『アイアンマン』シリーズも本作で三作目。キリのいいところで三部作完結、キャッチコピーも「さらば、アイアンマン」なんぞと宣伝されておりますが、本当に完結するのかしら。
 なんせ映画はクロスオーバー前提で話が進んでおりますからね。『アベンジャーズ』(2012年)の続編が製作決定されている以上、アイアンマンも、ハルクも、マイティ・ソーも、キャプテン・アメリカも、この先もうしばらく続けざるを得ないでしょう(ただ、『アイアンマン』単体の作品は無いのかも)。
 クロスオーバーするマーベル・ユニバース関連作品としては、本作で通算七作目になります。
 できればこの先は、X-MENや、スパイダーマンなんかともコラボして戴きたいところです(せめてウルヴァリンだけでも……)。

 本作の監督は前二作のジョン・ファヴローに代わりまして、シェーン・ブラックです。ファヴローは降板したのかと思いきや、制作側に回っておりますし、俳優として劇中にも顔出ししてくれております(毎度お馴染みの、ちょっとヌケてる保安要員ハッピー・ホーガン役ね)。
 シェーン・ブラック監督も、ファヴローと同じく俳優出身の方ですね。『プレデター』(1987年)や、『ロボコップ3』(1993年)にも出演しており(何となく傾向は掴めるか)、監督としては『キスキス、バンバン』(2005年)に続いて本作で二作目。
 ちなみにシェーン・ブラック監督の次回作はハリウッド・リメイク版『デスノート』になるそうですが、大丈夫かいな。

 メインの配役は前作どおり。トニー役のロバート・ダウニー・Jr.と、ペッパー役のグウィネス・パルトロー。そしてロディ大佐役のドン・チードル。人工知能ジャービスの声もポール・ベタニーです。
 今回はサミュエル・L・ジャクソンを始め、〈シールド〉の連中はお休みです。
 代わりに恒例のオマケ・シーンには、超人ハルクことブルース・バナー博士(マーク・ラファロ)が顔見せして、大ボケかましてくれております。
 もうひとつ恒例なのは、原作者スタン・リー御大のカメオ出演ですね。今回はテネシーの美人コンテスト会場で鼻の下を伸ばして嬉しそうにしている審査員の役でした。もう嬉々として演じておられる(楽しそうだなぁ)。

 ゲストとなる敵役は、ベン・キングズレーとガイ・ピアースです。毎回、ゲストも豪華な顔触れです。
 特にベン・キングズレーは、原作コミックスの初期から登場している由緒ある敵「マンダリン」を演じております。しかし由緒あり過ぎて、イマドキの映画にマンダリンは似合わないのでは……と思っておりました。
 だってねえ、マンダリンって、モロに怪人フー・マンチューの系統に属する悪役でしょう。ビジュアルからしてアナクロ過ぎるし、ヘタすれば人種差別的表現になってしまうのでは。如何に名優ベン・キングズレーと云えど、これは難しいのでは思わざるを得ません。
 それにベン・キングズレーは、ハリウッド・リメイク版『サンダーバード』(2004年)でフッドを演じておりますので、なんかイメージがカブるような気がして、ちょっと心配でありました。

 でも、本作に於けるマンダリンの扱いは、ややヒネってあって、楽しいものになりました。面白い処理の仕方です。時代錯誤的なビジュアルも、これで納得できます。ベン・キングスレーが楽しそうに演じているのもイイですね。
 シリアスな敵なのは、ガイ・ピアースの方か。
 謎の科学者集団A.I.M.に属し、人間の脳の未使用領域を活用する「エクストリミス」なる技術を使った強化人間を生み出して、アイアンマンの前に立ちはだかる。
 驚異的身体能力に加えて、腕を切断されても瞬時に再生させたり、三〇〇〇度の高温で口から火を吹いたりします(それはもう人間じゃねー)。

 悪役でないゲストとして、「エクストリミス」の生みの親である女性科学者役としてレベッカ・ホールも出演しております。ウディ・アレン監督の『それでも恋するバルセロナ』(2008年)が有名ですが、残念ながらあまり出番がない。
 「純粋な理想から始まった科学的研究が、兵器として利用されてしまう」と云う展開に、科学者の悲哀が描かれておりますが、あまりクローズアップされなかったのが残念です。

 どちらかと云うと、他のゲスト俳優達の方が印象深い。
 大統領役がウィリアム・サドラーで、副大統領役がミゲル・フェラーでありました。個人的にツボにはまる配役デス。
 特にアイアンマン・スーツ──と云うか「ウォーマシン」ですが──を無理矢理に装着されたサドラー大統領の図が傑作でありました。
 せっかくウォーマシンを星条旗カラーに塗ったのだから──名前も「アイアン・パトリオット」に改名したし──、ウィリアム・サドラーが愛国戦士となってテロリスト共を薙ぎ倒す場面があるのかと期待してしまいましたが、それはなし。そもそもアイアン・パトリオット、活躍しないし。

 今回は監督が交代した所為もあってか、前二作とは少し雰囲気が変わっております。
 中盤にアイアンマンの活躍がほとんど入りません。代わりにロバート・ダウニー・Jr.の生身のアクションが強調され、これはこれでなかなか面白いのですが、特撮好きにはチト物足りなかったでしょうか。
 その代わり、クライマックスでは壮観でド派手なんですけどね。

 中盤が地味なのは、主人公の内面を掘り下げる描写が入る所為か。
 でも、自信家で楽天的だったトニー・スタークが、『アベンジャーズ』以来、不安に苛まれていると云う状況に、どうにもピンと来ませんでした。そんなに精細な人でしたっけ。
 宇宙人の大軍団を目にしたことから、「アレが再び攻めてきたら」と考え始めると夜も眠れない。不安に駆られてアイアンマン・スーツの改良を止められなくなり、遂に一年間で三〇体以上も新作スーツを試作している。もはやアイアンマン依存症か。

 本作は新たな敵の出現と共に、依存症を克服するトニーの様子も描こうという趣向でありますので、スーツに頼らずある程度は活躍してくれないと困るのは理解できますが。
 スーツなしで戦うトニー・スタークの図と云うのは、何となく『冒険野郎マクガイバー』ぽく見えました。だってホームセンターで買い込んだ日用品を組み合わせて、ヘンテコな武器をいっぱい作りますし。手作り感溢れる秘密兵器が、最初の〈マーク1〉時代みたいで、初心に返ると云う効果もあったのでしょうか。
 いや、マクガイバーと云うよりは、某セガールのケイシー・ライバックみたいか(でも合気道ナシ)。
 あるいは、ロバート・ダウニー・Jr.が単身で手掛かりを追って、敵のアジトの場所を突き止めようとする展開が、何やらシャーロック・ホームズ(の子孫)ぽく見えたりして。

 一方、ガイ・ピアースの方は、「米国を狙うテロリストの脅威」を演出して、エクストリミス技術を政府に売りつけようとする。
 裏で副大統領を操りながら、サドラー大統領を誘拐して公開処刑を企みます。
 ミゲル・フェラーの副大統領は、あまり目立ちませんが、愛娘の足が不自由であると云う描写が然り気なく挿入されており、エクストリミス技術の四肢再生能力をエサに懐柔されてしまったことを暗黙の内に説明する演出が巧いです。

 更にガイは、トニーの愛するペッパー(グウィネス・パルトロー)をも誘拐し、強制的にエクストリミス強化人間の実験台にしてしまう。果たしてトニーはペッパーを救出し、大統領の公開処刑を阻止できるのか。
 と、云うところでロバート・ダウニー・Jr.のアクションシーンから、いよいよクライマックスのメカ戦に突入です。このメカ戦は実に複雑で長いシークエンスになっており、派手な演出と共に、段取りの組立が見事で感心してしまいました。

 劇中では、過去のアイアンマンスーツが片端から爆破されていくシーンがあり、もはや稼働するスーツはトニーの手許に残った一体だけか……と思わせておいて、実は地下格納庫に無傷の三〇体以上が温存されていたという御都合展開。
 しかも今回から、スーツは遠隔操作でも動くことになりましたので、トニーが装着していなくても、人工知能のジャービスが着ぐるみを操作しております。
 したがって最終決戦ではアイアンマン軍団が駆けつけ、縦横に飛び回るド派手な戦闘シーン。ここでトニーが次から次へと、様々なバージョンのスーツを装着しながら戦い続ける演出がスピーディで見事でした。

 なんせ、敵は生身でもアイアンマンを撃破できる程、強力ですから、トニーの方もスーツがダメージを受ける度に、着脱を繰り返していく。色々なバージョンのアイアンマンが次々に現れ、目を楽しませてくれます(個人的には、両腕にパイルバンカーを装備した重量級スーツが気に入りました)。
 もう湯水のように使い捨てられていくアイアンマン・スーツ。ヒーローはトニーであって、スーツは消耗品と云う方針が貫かれております(金持ちやなぁ)。

 そして最後はガイ・ピアースとロバート・ダウニー・Jr.の一騎打ち……になるかと思いきや、グウィネス・パルトローの一人勝ちという展開に笑わせてもらいました。野郎同士でガツンガツン激突していると、強化人間となったグウィネスが乱入してきて、一撃でガイをノックダウン。アイアンマンも瞬殺するパワーです。そんなアホな。
 〈シールド〉は直ちに彼女をスカウトするべきである。アベンジャーズの主戦力となること間違い無し。

 一件落着後、心の平安を取り戻したトニーが、心機一転して新たな人生を歩み始めるところでエンドです。もうスーツは必要無いのか(いや、そんなことはあるまい)。
 エンドクレジットはシリーズ三作のハイライト・シーンを集めてコラージュした、実にスタイリッシュでカッコいいエンディングになっております。ブライアン・タイラーのテーマ曲が燃えます。
 ある意味、本作で一番の見どころかも。

 エンドクレジット終了後のオマケでオチを付けた後に、早速に次回作の予告が入ります。もう東映の特撮映画並みですね。
 次は『マイティ・ソー』(2011年)の続編、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』。更に『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』と続くそうで、楽しみは尽きませんわ。




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