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2013年1月15日火曜日

宇宙戦艦ヤマト 2199

第四章 銀河辺境の攻防

 第三章『果てしなき航海』に続き、第四章は第一一話から第一四話まで。これでシリーズの半分を超えました。まだ半分か。もう半分か。
 上映するシネコンでは、前回までよりも収容人数の多いスクリーンでの上映でした。それでもほぼ満員。相変わらず盛況です(観客の平均年齢が高そうなのもいつもの通り)。

 本作で遂にヤマトは銀河系外縁部に到達しました。背後には天の川銀河の全景、行く手には大マゼラン銀河。だがイスカンダルまでは、まだあと一三万光年余。
 今回からOP主題歌もアップテンポなバージョンとなりました。
 また、第四章は旧作のネタをふんだんに駆使しながらも、オリジナルな展開が見受けられ、かなりサプライズの連続であります。アレンジの仕方が見事というか、「ここでそのネタかッ」と唸ることしきりです。

 まずはドメル将軍が満を持しての登場。もう始まる前から私の心の中ではドメル・コールが鳴り響いておりました。 ♪どーめーる、どーめーる♪。
 そこでまたしても意表を突かれたのが、ガミラスの各方面の戦線がちゃんと描かれていると云う描写です。旧作でも帝国版図防衛の為に、ガミラスは割とあっちこっちで戦争をしているようだとは察せられましたが、どこでどんな敵と戦っているのか判らず仕舞い。
 それが今度はちゃんと敵がいる。しかも戦争している相手の戦艦に見覚えありあり。
 なんとガミラスが白色彗星帝国と戦っているッ。劇伴もちゃんと合わせているのが嬉しい。

 考えてみれば、旧シリーズではガミラス以後も強大な敵が次から次へ現れてくれましたが、正直、後付け設定に過ぎない感じなのは否めないところでした。それが今作では、どうやら白色彗星帝国も、暗黒星団帝国も、ボラー連邦も、ちゃんと同時に存在しており、ガミラス帝国はそれらと戦っているらしい。
 旧作で呼ばれた各戦線に、ちゃんと相手が付けられているようです。
 そしてドメル将軍(大塚明夫だった!)が指揮しているのは、小マゼラン銀河での戦線。今まで何となく雑魚メカ的扱い(失礼)だったガミラス戦闘艦がドメル将軍の号令一下、一糸乱れぬ見事な艦隊運動を展開し、白色彗星帝国の艦隊を撃破していく。
 さすがは〈宇宙の狼〉。旧作を知る者には、ここは感涙ものの場面でしょう。
 してみるとヤマトが乗り出した大宇宙は、様々な異星文明が互いに覇を唱え、群雄割拠する戦国時代的宇宙と云うことになるわけで、弱小な地球文明は太刀打ちできるのでしょうか。

 戦闘が一段落付いた後で、ドメル将軍に特一級デスラー十字章授与の為の帰還命令が出る。政治パフォーマンスに過ぎないと知りつつ、戦線を離れるドメル。
 前章に引き続き帝都バレラスの様子も描かれます(今回は結構、長いです)。
 ドメルは上級大将に昇進し、大衆から圧倒的歓呼で迎えられるが、それを快く思わぬ者も幕僚の中にはいるらしい。ディッツ艦隊司令とタラン(兄)から忠告を受けるも、政治に興味の無いドメルは我関せず。
 中でもゼーリック総監(若本規夫)が腹に一物ありそうなのが判り易いです。
 しかしヒス副総統の影が薄い。「副総統はお飾りだ」そうですし、出番少ないですねえ。

 興味深いのは、デスラー総統が帝国の遷都を考えているらしいことです。
 ますます今般のリメイクでは、旧シリーズ全体を統合しようとする意図があることが伺えます。旧シリーズでも『ヤマト3』になってから、いつの間にやら「ガルマン・ガミラス帝国」なんぞが成立しておりましたし、その設定も取り込むつもりなのでしょうか。
 総統は銀河を股に掛けたガルマン人との民族統一を目論んでいるように思われます。

 また、気になるのはイスカンダルの扱い。今回、初めてデスラーがホットラインを使用する場面がありましたが、相手の声は聞こえず総統の言葉だけが手掛かりというちょっとミステリアスな演出です。
 ホットラインの相手は恐らくスターシャであろうに、本人は姿を見せません。今般のスターシャは序盤のメッセージ映像の中のイメージのみです。このあたりにも何かありそうな気もします。
 デスラーは「君は我が国の心の支えなのだよ」と云っておりますが……。
 旧作の劇場版では「スターシャは既に死亡していた」と云う設定もありましたが、果たして今般のスターシャはどうなっているのでしょうか。

 そして帝都での式典終了後、ドメルの妻エリーサ(たかはし智秋)が登場。ドメルが妻帯者であることは、特に不自然ではありませぬが、やたらと憂いのある美人妻です。
 今般のリメイクに於いては、松本零士の名前はクレジットされていないのに、至るところに製作スタッフによる松本零士リスペクトな演出が炸裂しており、実に楽しい。
 前章の〈戦場まんが〉ライクなエピソードもそうでしたが、ここで登場するドメルの奥さんがモロに『銀河鉄道999』のメーテルみたいでした。その上、ロック鳥までも。
 愛する妻に「今度は銀河系方面へ赴任することになった」旨を告げる場面は、戦争映画の一場面のようでした。

 一方、ヤマトの方では、前回から居候しているメルダ少尉(伊藤静)のメディカルチェックにより、ガミラス人は地球人とDNAレベルまで一致していると判明する。また身体のみならず、精神面でも同一であることに少なからずショックを受ける乗組員。
 しかしヤマト艦内でフツーに呼吸し生存しているメルダ少尉を見ると、ガミラスが地球を有毒環境に改造していることが謎に思われます。移住するつもりではないのか。

 更に今回はガミラスと地球の戦争について、秘密が明かされる。実はファースト・コンタクトでの先制攻撃は地球側からだった。なんと非は地球側に。
 しかも攻撃は最初の戦死者となった島の父親が指揮する艦によるものだったと判明し、動揺を隠せない島。メルダへの尋問の過程で信頼関係を築いていく古代を見て、やさぐれていく島の様子がやるせない。
 本作では古代よりも島の方がアグレッシブです。遂には親友同士の喧嘩に発展し、艦長に一喝されて罰当番を命じられる有様。

 ヤマト艦内の人間関係も大分進展してきました。ついでに森雪と山本の入浴シーンなんぞと云うサービスカットもあったりします。
 今回はハードな展開のドラマを和らげようと、随所に妙にエロい女体の作画が挿入されています。ストーリーと関係なく、何度も雪のヒップラインが強調されたり、真琴ちゃんはあられもない格好で寝乱れてくれます。
 台詞の方でも雪の発言がキワドい。船務長に他意はない筈なのに……「スッキリしましょう」とか「家族は新しく作れる」とか。
 いや、これは聞いているこちらの性根がやましい所為だ(汗)。

 私としてはメルダにはそのままヤマトに居着いてもらいたかったのですが、沖田艦長の判断により、航路上のガミラス前哨基地で捕虜解放とあいなりました。互いに理解しあえる存在であることを確認し、握手を交わす古代とメルダ。
 メルダはいずれまた再登場してくれることと信じております。

 さて後半に入ると、メルダと入れ替わり、別の一団がヤマトと因縁を結びに登場です。
 ドメル将軍の命を受けて放たれた〈特務艦UX-01〉がヤマトを補足。
 ステルス艦との戦闘と云うのは『スタートレック』にもありますが、これは『宇宙戦艦ヤマト』ですからね。クローキング・デバイスで透明擬装なんてしませんデスよ。
 ヤマトでのステルス描写と云えば、次元潜行。前章が伏線となる演出も巧いです。
 しかしここで次元潜航艦とは予想外。しかもフラーケン艦長まで一緒に登場です(中田譲治がシブい!)。
 同じガミラス軍人でも、潜水艦の乗組員はひと味違う。ほとんど独立愚連隊の如き荒くれ共を率いるフラーケン艦長との、『眼下の敵』さながらの戦闘です。このエピソードは戦争映画の〈潜水艦もの〉のフォーマットに乗っ取った展開なのが嬉しい。
 同時に沖田艦長の不調も描かれ、佐渡先生による緊急手術と、真田副長指揮による対潜戦闘の同時進行という緊迫した演出でした。

 第四章では「軍人でも誤った命令には反するべきか」について何度か言及されます。良心に反する、信義に反する、或いは明白に間違っていると判っていれば、「立ち止まり、自分を貫く勇気を持つべき」なのか。
 今般のリメイクでは旧作には無かったかなり難しいテーマも盛り込まれています。それを体現するように、第四章では何人ものキャラクターが、それぞれに「命令違反を犯す」シチュエーションが繰り返されます。
 己の信ずるところを行うのはイイが、そんなに連続して皆が命令違反してエエんかいな。若いモンは仕方ないとしても、山崎さんや榎本さんまで……。
 でもおかげで遠山くんにも見せ場が回ってきて、個人的には嬉しいですが。

 次元潜航艦との戦闘は今回限りではないのが嬉しいデスね。まずは挨拶代わりの軽い戦闘だけで、いずれ再戦することが明白な展開です。
 命令を無視した古代の機転で危機を脱したヤマトは、ワープで遁走。
 「獲物が賢いほど狩りは楽しいものだ」と見送るフラーケン艦長の余裕の態度が素敵デス。ドメル将軍にフラーケン艦長と、魅力的な敵役がどんどん増えてきました。

 論理よりも直感を信じる古代の行動に「血は争えないわね」と評する新見さんですが、どうも言動から察するに、古代の兄を良く見知っていたようです。当所、真田副長と新見さんのロマンスを想定しておりましたが、そうではないらしい。
 古代守と真田、新見は同窓だったのか。新見さんは古代守に片思いだったような。
 次第に人間関係が明らかになってくる展開も楽しいデスが、今般のリメイクではヤマト側の新規キャラはほぼ全員が何らかの秘密を持っているように思われます。裏表がないのは真琴ちゃんくらいなのでは。
 保安部の伊東さんも、細い目で艦内のあちこちを見張っていますし。

 中でも一番重大な秘密を抱えていそうなのが、岬百合亜ちゃん。
 当所の〈森雪=ユリーシャ疑惑〉を遥かに超える秘密があるように見受けられ、それが描かれるのが第一四話。旧作ではボツになった「ヤマトに敵の破壊工作員が潜入する」エピソードをアレンジしております。
 併せてバラン星に遺された銀河先史文明アケーリアスの遺跡と、アケーリアスの末裔であるジゼル星人についても紹介される。
 とうとう『完結編』のネタまで持ってきましたか。総動員ですね。

 実はガミラスのバラン鎮守府は、先史文明の遺跡の上に建っているらしい(鎮守府自体が遺跡なのか)。そしてガミラスの宣伝情報相ミーゼラ(茅原実里)は、その遺跡を操作できる数少ないアケーリアスの末裔〈ジゼルの魔女〉であるとな。
 松本零士のファンで「ジゼル」と云われてピンと来るのは、年寄りのSF者だけでしょう。C・L・ムーアの著作なんて、もはやハヤカワSF文庫の中でも絶版状態なのでは……。
 この遺跡、何万光年離れていても意識を投射できる凄まじい代物らしく、ミーゼラの部下であるミレーネル(岡村明美)がヤマトに精神攻撃を仕掛けます。

 たまたま哨戒任務でヤマトを離れていた古代と雪が帰還すると、ヤマトは乗組員の消失した幽霊船と化していた。
 ここで幽霊船状態のヤマトが無音でグルグル回転している演出に笑ってしまいました。さっき『眼下の敵』にオマージュ捧げたと思ったら、今度はクラークの『2010年』か。
 回転の同期を取って接舷し、ワイヤーを伝ってヤマトに乗り移る描写が、実に『2010年』ライクなSF描写でした。
 今回はやたらと色々な映画へのオマージュが随所に見受けられますが、佐渡先生が乗組員に「トランキらいざぁ」を処方するネタはちょっとヤリスギなのでは(千葉繁だし)。
 もっとヤリスギなのは、ガミラス語での秒読みです。ガミラス語の「点火」を「バルス」と云っているように聞こえましたが、ソラミミかしら。

 さて、ヤマトに乗り込んだ途端にミレーネルの幻覚を喰らって、懐かしい家族に再会する古代。死んでしまった兄や両親に会い、少年時代と現在の混じり合ったシュールな夢を見ますが、「西暦二一九〇年代の日本にテレカ式の緑色の公衆電話がある」と云う描写は時代考証的に正しいのですかね。夢なんだから構わないのか。
 一方、雪が見る幻覚の方では〈森雪=ユリーシャ疑惑〉の一端が明かされます。どうも当所考えていた単純なものではないようです。ミスリードが巧みですわ。

 ある意味、ヤマト最大のピンチとなるワケですが、雪の精神の中でミレーネルは思ってもいなかったものを見てしまう。雪が二人いるのは判ります。森雪とユリーシャね。
 しかし幻覚の中には岬百合亜まで現れる。「何故、お前がここに」と驚愕するミレーネルですが、これはユリーシャと百合亜のどちらに向けて放たれた言葉なのか。ユリーシャと百合亜と云うのもなんか似た名前ですが……。
 あわやと云うところで我に返った古代がミレーネルを退ける。乗組員は幻覚から解放され、精神を破壊されたミレーネルはバラン星上で絶命。同胞を失った失意のミーゼラが哀れです。
 しかし果たして〈ジゼルの魔女〉は「これでもう私一人になってしまった」のかどうか。思わぬ生き残りがヤマトに乗っているように思われてなりません。

 ところで今回は出番の少なかったゼーリック総監ですが、最後は豪快に若本節を炸裂させてくれました。邪魔な奴らは皆、ヤマトに夢中。おおぅ、頃合いであるなァ。
 こちらは何やら非常に判り易い悪巧みをしておられるようですが、どうなりますか。
 次回、第五章『望郷の銀河間空間』は四月公開です。ヤマトの前に立ちはだかるドメル将軍の超弩級戦艦の図にワクワクです。実に侮りがたい(笑)。
 本作はTBS系列で、この四月からの放送が決定したと報じられておりますが、意外と早く放送開始となりますね。イベント上映が途中で追い越されないか、ちょっと心配デス。


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