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2012年10月15日月曜日

宇宙戦艦ヤマト 2199

第三章 果てしなき航海

 恒例の限定イベント上映の第三回目です。製作も順調に進行しているようで大変、嬉しいです。
 さて、今回は第七話から第十話まで。『第二章 太陽圏の死闘』に於いてガミラスの冥王星基地を壊滅させたヤマトが、いよいよ太陽系の境界を越えるところから始まり、近隣恒星系をワープしながら銀河外縁部を目指して人類未踏の宙域を航海していく部分が描かれます。
 旧作で云うところの「さらば太陽圏!銀河より愛をこめて!!」から「必死の逃亡!!異次元のヤマト」あたりまででしょうか。

 今回は一本の映画のような連続したエピソードではなく、独立した四つのエピソードの詰め合わせ的内容です。少し本筋から外れたり、以降の展開に向けたネタの仕込みが見受けられ、これはこれでバラエティに富んだ楽しい内容でした。
 個人的に真田副長のエピソードを期待したのですが、今回はそこはスルーでした。

 まずは数少ない戦闘抜きのエピソード。
 太陽系に別れを告げるヤマトが、地球との通信限界点を越える際に、乗組員希望者に家族との最後の交信を許可するエピソード。併せて伝統に則り、赤道祭も執り行おうという企画(二二世紀でも航海の安全を祈念する儀式は廃れていないようで)。
 旧作よりもにぎやかで華やかな艦内パーティです。やはり女性乗組員が多数乗り込んでいる描写があるといいですねえ。
 「赤道祭では仮装が伝統である」と云う太田のホラを真に受けた原田真琴ちゃんがメイド・コスプレを披露してくれます(太田、グッジョブ)。ついでに加藤隊長の生真面目なところも伺えます。しかし坊主の袈裟はコスプレなのか。
 各キャラの関係も次第に深まっていくのが見受けられ、加藤・原田ペアは公認間近か。非モテ代表の藪くんとの明暗が哀しいデス。

 太田のホラが広まり、赤道祭が艦内コスプレ大会の様相を呈してくるのが笑えます。あの衣装はどうやって艦内に持ち込まれたのでしょうか。
 これで同人誌即売会とアニメの上映会までやったら『機動戦艦ナデシコ』ですが、さすがにそこまではやらんですね。

 旧作では地球との交信を望まぬ者は古代と沖田艦長だけでしたが、本作では特にそのようなことはなく、近親者が死亡している者はザラにいて、交信は希望者のみとなっている。当然そうでしょう。
 ここで「家族は誰もおらず、近しい兄も亡くなった」という状況が古代と山本に共通していて、似たもの同士で通じあったり、それを眺めてナニやら勘違いしていそうな森雪の様子が楽しいです。着々と伏線が敷かれていきますね。
 ついでに南部くんの失恋確定路線もますます強固なものになりつつあります。

 所在なげに艦内をうろつく沖田艦長の図は旧作のままですが、今回は艦長は厨房には立ち寄りません。機関室やら情報解析室に立ち寄りますが、厨房に入ろうとして咎められる場面はなし(それに平田さんが主計長ですし)。
 改めて「今作のヤマトには厨房など無い」のだと確信しました(科学の勝利ですものね)。

 新しい設定で感心したのは、艦内ラジオ放送企画です。
 岬百合亜ちゃんがパーソナリティとなって、リクエストの楽曲を流す過程で、懐かしの名曲「真っ赤なスカーフ」を流してくれます。曲の使い方が巧いです。
 旧作では最後に沖田艦長と古代が艦長室で地球に別れを告げる場面になりますが、本作では人間関係がもう少しリアルです。
 艦長室を訪れるのは古代ではなく、徳川機関長。長い付き合いの老人同士が酒を酌み交わす場面はなかなかしんみりしていて本作の描写の方が好きです。
 代わって展望デッキで地球に別れを告げる古代の傍らには森雪。
 ささきいさおの「真っ赤なスカーフ」がこの場面に流れ、素晴らしい効果を上げていました。

 続いて冥王星を脱出したシュルツの最期と、デスラーが仕掛けたゲームの顛末を描くエピソード。旧作の幾つかのネタが統合され、取捨選択された結果、「アステロイド・リングによる防御」とか「宇宙機雷原を人力で掃海する」エピソードは消えてしまいました。
 代わって「ガス生命体と恒星のフレアでヤマトを挟撃する」作戦がシュルツの最後の任務となり、併せてガミラス本星での建国記念祭と総統御前祝賀会の様子も描かれます。

 いつもながらエピソードの取捨選択と圧縮の手際が見事です。
 ここでガミラス側の幕僚がズラリと並ぶわけですが、旧作では後付けで登場する将軍達が最初から並んでいます。
 ヒス副総統は当然として、タラン将軍が兄弟で登場している。やはりタランは二人いたのか。旧作のツッコミに対するフォローが感じられます。
 幕僚の一人ゼーリック総監役が若本規夫。もはや若本規夫は声優界の高倉健かジョン・ウェインですね(つまり何を演じても役者本人にしか見えず、でもそこがイイ)。
 色々と取捨選択が行われておりますが、「ガミラスに下品な男は不要だ」は残りました。やはり削れないネタか。

 SF的設定が強調され、「八光年離れると、ガミラスに汚染される前の青い地球が見える」と云う、当然な描写が嬉しいです。
 天文データを駆使して、実在の恒星系グリーゼ581を登場させるのもリアルです。
 ヤマトの窮地自体は旧作のとおり、ガス生命体に喰われるか、フレアに灼かれるか、二つに一つ。そうか、テラン人は焼身自殺の途を選んだか。
 そして波動砲でフレアを吹き飛ばし、追撃していたシュルツ艦は耐熱限界を超えて散華。シュルツと運命を共にするガンツら部下の忠誠に漢泣きです。

 伏線の仕込みも怠りなく、沖田艦長の体調不良が既に描かれており、佐渡先生もいつになくシリアスです。
 また、ヤマトの波動砲を見たタランが、ガミラスも同様の兵器を開発中であることに言及する。これがデスラー砲ですね。
 作戦は失敗したものの、余裕のデスラーは、最後まで退くことなく戦ったシュルツらを二階級特進として、遺族らを名誉ガミラス臣民とするよう命じる。
 さすが総統、太っ腹。しかし自分の作戦が失敗したことをちょっと誤魔化してませんか(笑)。

 続いて完全オリジナルのエピソード。前章で鹵獲したガミラス製のアンドロイドとアナライザーの機械同士の交流を描こうという趣向。
 併せてヤマト艦内にあるミステリアスな「自動航法室」の謎も御紹介。イスカンダルまでの航路はどのように決まるのか。旧作では軽く流した設定に、何やら今般は仕掛けが施されているようです。

 脱走アンドロイド捕獲の為に、保安要員が出動すると云う、新たな部署の設定もきちんと描かれます。見た目はクールでちょっと策士的な伊東が、実は真面目に保安出動している様子が意外でした。
 旧作ではビーメラ星のエピソードに代わるものとして、アナライザーの孤独が描かれているのもナイスです。

 また、艦内ラジオ番組で紹介される短編小説『観測員9号の心』の劇中劇が、脱走アンドロイド騒動の顛末とオーバーラップする演出がお見事です。
 このエピソードだけ、ドラマが細かいパートに分かれ、それぞれに古いSF者が喜ぶ古典の題名が付けられているのが楽しいです。まぁ「アンドロイド」と云えば「電気羊」と応えるのは、今や常識ですね(笑)。

 そして最後は、ワープの異常によりヤマトが次元断層に囚われるエピソードです。大宇宙のサルガッソーとも云うべき異常な空間には、かつて遭難した異星の宇宙船がぞろぞろ浮かんでいる。
 古いSF者なので『キャプテン・フューチャー』の一場面を思い出します。
 そしてヤマトは、まだ生存者のいるガミラス艦と遭遇する。
 敵と味方が協力し合わないと脱出は不可能だが、相手をどこまで信じることが出来るのか、と云うのは戦争映画などで見受けられるシチュエーションですね。

 そして人類は初めてガミラス星人と直接コンタクトする。ガミラス艦から乗り込んできた使者は、青い肌の超絶美少女だった。
 うーむ。本シリーズの新キャラにはありがちとは云え、よもやガミラス人にもアホ毛が生えていようとはッ。
 しかもこの使者、メルダ少尉はディッツ家の御令嬢とな。先の総統御前祝賀会に列席していたガル・ディッツ艦隊総司令が父親らしいです。シュルツの愛娘ヒルデちゃんといい、このメルダといい、どうしてあんなオヤジ共にこんなに可愛い娘がいるのか。
 さすがに美少女相手では、古代も旧作のように逆上して切り殺そうとはしませんでしたね。

 ガミラス艦の艦長もシュルツと同じく二等臣民だが誠実な軍人という描かれ方です。同乗しているガミラス人親衛隊高官の方が卑怯者。このあたりはやはり第二次大戦時のドイツ軍を彷彿としますね。
 メルダ少尉は戦闘機乗りで、山本のライバルになりそうな描かれ方です。
 山本が火星移民の生き残りで、瞳の色が赤かったり、亡き兄の形見もルビーであったりと、「山本のカラーは赤」であると印象づけ、対するメルダは肌の青いガミラス人で「青は高貴な色だ」と言い放つ。イメージカラーでも二人が対照的になるよう考慮されている演出が巧いです。

 どうでもいいが回想シーンに登場した山本(兄)はエラい美形でしたが、強度のブラコン修正がかけられていたのか。
 個人的には美形な山本(兄)よりも、チョイ役の甲板員で〈裸の大将〉似の遠山くんが気に入っております。今後も出番があると嬉しいです。

 戦場に於ける敵と味方に奇妙な信頼と友情が芽生えるという描写は、松本零士の〈戦場マンガ〉シリーズに通じるものを感じます。
 古代とメルダ、メルダと山本、更にガミラス艦の艦長と沖田。
 「漢と漢の約束だ」と古風な物言いの沖田艦長が渋い。

 二等臣民の方が名誉を重んじるガミラス軍人らしいと云うのも皮肉です。そして功を焦るゲールの介入により、絶体絶命に陥ったヤマトを救ったのは、協力し合ったガミラス艦だった。
 ヤマトを守る盾となって味方の艦隊に撃沈される姿に、漢泣きを禁じ得ません。ラング艦長は、出番は少ないが立派なガミラス軍人でした。
 おかげで今回はゲールの小物っぷりが遺憾なく発揮されております。清々しいまでに小心な卑怯者です。

 ゲールを退け、航海を続けるヤマト。帰る場所を失ったメルダを乗せたままです。このままヤマトに居着いてくれると嬉しいのですが。
 さて、予告によりますと、次回の公開は二〇一三年一月。
 『第四章 銀河辺境の攻防』では、遂に銀河系を脱しようと云うヤマトと、それを阻止せんとするガミラスの戦いが描かれるようです。いよいよドメル将軍も登場ですね。実に楽しみです。


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