2010年12月23日木曜日

トロン : レガシー (3D)

(TRON : LEGACY)

 ビジュアルが素晴らしいデス。もう実にクール!
 以上。解説おしまい。

 ──と云うワケにも行かぬか。もうチョイ続けましょう。

 オリジナル版から二七年で、まさかのリメイク発表。気でも違ったのかディズニー。一体、誰のアイデアなのか。
 予告編を観たときから期待とイヤな予感が半々で困りました。
 つまり「ライトサイクルがリアルになって超カッコイイ」けど「直角に曲がりそうにない」というのがねえ。ライトサイクルが直角に曲がるのがオリジナル版の素晴らしい部分だったはずなのに。

 とは云え今、オリジナル版のDVDを観返すと、CGのあまりのチャチさに愕然とします。実にのどかに走るライトサイクル。一九八二年公開という時代を感じます。
 この頃は、ゲームと云えばアーケードの大型筐体がメインだったねえ。セガもプレステも無かった時代ですよ。任天堂の初代ファミコンの発売が一九八三年。
 いやはや。

 そんな時代には画期的だったのかも知れぬが、ソラリゼーションをかけてコントラストを強調しただけの映像で電脳空間を表現しようとした美術スタッフの工夫には感心します。
 が、リメイク版ではその手法は最早使えませぬな(笑)。

 素晴らしいのは目の肥えた二一世紀のSFファンをも納得させるだけの映像をちゃんと作り出しているところでしょう。あのシド・ミードのデザインをきちんとリニューアルしている美術スタッフは実にいい仕事しています。

 唯一、映像にクレームを付けるとすれば、「わざわざ3Dにする必要無かったんじゃね?」というところでしょうかね(笑)。
 あんまり飛び出しているように見えなかったが……。

 音楽もダフト・パンクのサウンドトラックは聴いてるだけでゾクゾクしますな。

 さて、映像にも音楽にも文句の付けどころなど無い。俳優もオリジナル版のジェフ・ブリッジスやブルース・ボックスレイトナーを再度、出演させたりしてこだわりが感じられる。
 問題は脚本である。もうそれに尽きる。

 『トロン』なのにトロンの出番がほとんどないッ!
 オリジナル版でも、電脳世界で擬人化されたプログラムはSEと同じ顔という設定だったので、ジェフ・ブリッジスはフリン役とクルー役の二役。ブルース・ボックスレイトナーもアラン役とトロン役の二役を演じていた。
 今回は叛乱を起こしたクルーと創造主であるフリンの相克がテーマとなっているのはいいが……。

 わざわざCGを駆使して、ジェフ・ブリッジスの顔を若返らせ、歳を取らないクルーを作り出しているのに……。トロンの方は手抜きも甚だしいッ。
 設定的に、クルーが「トロンのプログラムを書き替えて」しまっているというのは燃える設定だったのになあ。

 仮面を被った凄腕の敵の戦士が、実はかつての仲間であるトロンだったという男燃え必至の設定が全然、活かされてない。なんじゃこりゃ。
 大体、トロン抜きでも物語が成立するのが哀しい。
 ラストでトロンが正気に返る場面──まったく唐突に──にも必然が感じられん。ドラマがちっとも盛り上がらん。

 新しい設定である〈アイソー〉という電脳生命体の設定も中途半端である。なんか設定だけして放置したという感じが漂いまくり。
 どうも更に続編を製作したいが為のネタ振りだけしている感じがしますな。

 新キャラを投入するのは結構ですが、せっかくマイケル・シーンを起用しているのに、あんな役だとは……。

 総じて、ビジュアルは見事ですが各キャラ同士の関係が希薄です。
 ほとんどが単に物語を進行させる為だけのキャラであるのが哀しい。

 特に、軍隊を組織して電脳世界から現実世界への侵攻を計画するなんぞという、古くさい設定の脚本には大いに疑問を感じる。世界を救うとか侵略を食い止めるとか大ネタばかりが先行して、キャラの関係を大切にしていないのでちっとも盛り上がらん。
 オリジナル版のビジュアルや設定をリニューアルして用意しているのに、脚本がそれを活かしていない。ただ画面に登場させるだけなら出すなよ。期待しちゃうじゃないか(泣)。

 ホントにもうビジュアルだけの残念な映画でした(最近、多いなこういうの)。

 あちこちに過去のSF映画へのオマージュというか、似たようなビジュアルがあるのは御愛敬か。
 電脳空間内に於いて発光するレインコートを着て傘を差すファッションがあって──何故に電脳空間内で雨が降るのか(笑)──これが実に『ブレードランナー』ぽい。
 ジェフ・ブリッジスの隠れ家の、真っ白な調度品と室内装飾は『二〇〇一年宇宙の旅』かな。
 主人公が超高層タワーの天辺から、都会の夜景を俯瞰しながら身を投げる(実はスカイダイビング)のは、もろに『攻殻機動隊』ですね(これをウェズリー・スナイプスの『ドロップ・ゾーン』とか云うのはひねくれたマニアだけか)。
 まぁ、他にも色々。
 個人的にはサンライズのSFアニメ『ゼーガペイン』を観たでしょうとツッ込みたい場面が幾つか……。

 この手のイメージの貸し借りをいちいちパクリだなんだと云うのは野暮というものでしょう。逆に巧く引用できるセンスがあれば、別に問題ないと思うのですが。

 多分、費やした制作費を回収できるほどには大ヒットしないだろうから、更なる続編というのは無理なんじゃないかなあ。うーむ。
 また三〇年くらいしてから、完全CGのジェフ・ブリッジスを作って演じさせるか(笑)。

●余談
 ところで今作でデビューしたコジンスキー監督の次回作は、同じく大コケしたディズニー製作のSF映画『ブラックホール』のリメイクだそうな。
 また無駄にカッコいい宇宙船〈シグナス号〉とか、無駄にリニューアルされたロボットの〈マクシミリアン〉とか登場させるのであろうか。
 そもそも新人監督に敗戦処理ばかりさせるというのは如何なものか。




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