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2008年12月24日水曜日

K-20

 怪人二十面相・伝

 今年観た邦画──とりあえず純国産かつ、非アニメ作品──の中では、お薦めできる出来る作品です。まぁ、好みは分かれるでしょうが。
 肩の凝らないエンターテイメントを観たいなら、間違いなし。

 ビルの屋上からヘリの垂らす縄ばしごに片手で捉まり、サーチライトに照らされながら、見上げて地団駄を踏む警官隊に高笑いを浴びせつつ飛び去る怪盗の図──と云う世界観を良しとする方にはお薦めします。
 非常にアナクロと云うか、懐かしい構図。怪盗もののお約束(笑)。

 お約束の最たるものは、二十面相が変装を解いて正体を現す場面ですね。
 被っていたマスクを剥ぎ取る、だけではなく、ばさァっといきなり黒マントに仮面をつけた〈二十面相〉スタイルに!
 そのマントはどこから出したのッ。さっきまで着ていた衣装はどこ行ったのッ。
 脱ぎ捨てたマスクはどう見ても作り物のゴムマスクで、リアルさの欠片もない。
 そんなツッコミは百も承知の上で堂々と映像化してみせる度胸に感服いたしました。
 かつて少年時代に観た白黒アニメ『わんぱく探偵団』のまんまだなあ(笑)。

 原作は江戸川乱歩の『怪人二十面相』ではなく、北村想の『怪人二十面相・伝』なので、ちょっと心配ではありましたが、しっかりと乱歩の世界観を映像化しているように感じられました。
 これでようやくビートたけしと田村正和の『明智小五郎対怪人二十面相』を忘れることが出来ます(笑)。やはり舞台は「帝都東京」でなくてはイカンじゃろう。

 ツッコミどころは色々──特にSF的パラレルワールドな世界観とか──ですが、大筋では面白いです。
 特に金城武、松たか子、仲村トオルがそれぞれにいい味出してます。
 助演の國村隼や鹿賀丈史も。

 個人的には明智小五郎役の仲村トオルと、二十面相役の鹿賀丈史がいい。
 まあ、鹿賀丈史は二十面相の正体ではなく、仮の姿の一つに過ぎないのですが、そのまま本当に二十面相でいてもらいたかった。
 何と云っても、黒装束に黒マントを翻し、ワハハハと高笑いする鹿賀丈史の勇姿は異様に似合っていた(笑)。

 そう。鹿賀丈史が二十面相の正体ではない、と云うのが唯一の不満な点。
 背景設定なんかの御都合主義はむしろ気にはなりませんが、コレだけは。

 そもそも「二十面相に間違えられたサーカス芸人が、指名手配されながらも泥棒修行を積んで、自ら二十面相を捕らえて汚名を晴らそうとする」という物語なわけで、明智小五郎は脇役なのである。
 個人的には明智小五郎にはもっと頑張って貰いたかったのですが……。

 でね、二十面相のマスクの下には鹿賀丈史の顔があって、でもそれすらも変装に過ぎず、真の正体が隠されて──なんぞという展開はなあ。
 オチが容易に予想できてしまい、大当たりしたので興が削がれてしまいました。
 安易だ。
 こんなことなら鹿賀丈史のままでいてくれた方がよほど良かったのに。

 アクション・シーンや、特撮には文句ないのでお薦めなのですが。
 『ALWAYS 三丁目の夕日』ぽい、クサい人情話が紛れ込んでも、我慢できる範囲内です。
 でも一般的な観客は、まさかラストで「アッ」と驚いたのだろうか。
 まさかそんな。
 それとも、これはミステリずれしたマニアだけの失望なのだろうか。

● 余談
 この映画のおかげで、ポプラ社の少年探偵シリーズが、昔のカバー表紙のまま復刊したのは実に目出度い。
 かつてかなり読んでいた記憶があるのですが、当時の本はボロボロでかなり昔に処分してしまったのだった。
 うーむ。また買ってしまおうかしら。

 とりあえず『怪人二十面相』と『少年探偵団』と『大金塊』だけでも……。




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