第一作『ハンガー・ゲーム』(2012年)のときから、三部作の完全映画化が謳われておりましたが、本当に一年後に(少し時期がずれたものの)続編が公開されるとはちょっと驚きデス。
三部作が予定されながら、一本目で終わってしまうことはよくあることデスから(特にSFやファンタジーの映画には多いですよね)。
一作目公開時には原作小説の翻訳も終わっておりませんでしたが、今や三部作全ての翻訳が完了して書店に並んでおります(でも未読)。角川も頑張ってます。
この調子で完結編『ハンガー・ゲーム3/マネシカケスの少女』も映画化されるようですが、第三部は前後編に分けて、映画は四部作にするのだとか。そんなに制作費を注ぎ込んで大丈夫なのかと心配になります(制作のライオンズゲートは社運を賭けているのかしら)。
そんなに一般受けするストーリーには思えないのですけどねえ。SF者としては嬉しいことですが。
順調にいけば、この先も毎年『ハンガーゲーム』シリーズが公開されていくようです。
前作のゲイリー・ロス監督から、今度はフランシス・ローレンス監督に交代することは一作目公開の時点で報じられておりましたが、そのまま予定通りフランシス・ローレンスの監督となりました。そしてローレンス監督はそのまま三作目以降も監督続投の予定であるとか。
フランシス・ローレンス監督と云うと、SFアクション映画よりも、『恋人たちのパレード』(2011年)といった恋愛映画の方が出来が良いように思われますが、今回は割といい線いってます。
SFと云いつつも、全体的にロマンス色も強く見受けられますし、合っていたのでしょうか。
一方、監督は交代しましたが、ジェームズ・ニュートン・ハワードの劇伴はそのままですし、出演者もまた変わらないので、違和感はありませんデス。
実は出演者がまったく変わっていないのが、少しばかり驚きでしたが。
何と云っても主演のジェニファー・ローレンスが続投しております。主役を交代させるわけにはイカンとは云え、一作目の後には『世界にひとつのプレイブック』(2012年)でオスカー女優になっているのに引き続き出演してくれるとは、付き合いの良い女優さんです。
でも、ビッグになってもこの手のB級アクションものも忘れないとは素晴らしい。文芸作品や大作に出演しつつも、『ハンガー・ゲーム』や『X-MEN』のシリーズにも怠りなく出演してくれるとは嬉しいデス。
共演者にも変更なし。
ジョシュ・ハッチャーソン、リアム・ヘムズワース、ウディ・ハレルソン、スタンリー・トゥッチ、ドナルド・サザーランドと、皆さん前作と同じ役で登場してくれます。
一体全体、ただのラノベSF(だよねぇ)の映画化に、こうまで豪華な出演陣とはどうしたことか。全員が続編にも揃って出演とは律儀すぎる。
しかも第二部になって、更に新キャラが投入され、これがまたフィリップ・シーモア・ホフマンやら、ジェフリー・ライトといった面々ですよ。おかしい。そんな大作ではないと思っていたのに。
一応、原作がベストセラー小説ではありますから、それなりの出来ではあるようですし、本作もまた単なる殺人ゲームの描写だけでなく、未来社会で圧政を強いられた人々の革命の物語に、恋人達のロマンスも加味された展開が丁寧に描写されていきますので、B級SFという感じはあまりいたしません。
でも、キャピトル市民のサイケなブッ飛びファッションは実にB級ライクなのですが(笑)。
描写が丁寧、と云うのは上映時間が一四六分もあるところからも伺えますね。
前作でも、殺人ゲームが開始される前の状況説明に随分と尺を割いておりましたが、前作の一四二分を更に上回るとは。説明が丁寧すぎる。
おかげで、例によってゲームが開始される前に一時間くらいかかります。長い。
SFアクション映画を観に来たつもりだったのに、背景説明と人物関係の説明にそれほどかけるのも如何なものか。ちよっと眠くなりそうでした。
周到に伏線を敷いているのは判りますし、だんだんと登場人物達のキャラが立ってきたので、ただの脇役にならなくなってきたのも判りますが……。
お陰で今回は、前作でジェニファー達ハンガーゲーム出場者のコーディネーターとスタイリストとして登場したエリザベス・バンクスとレニー・クラヴィッツにもスポットが当たったりします。ただの脇役だと思っていたのに、それなりに台詞があって、自己主張し始めました。
この調子では第三作以降にも登場して活躍の場が与えられたりするのでしょうか(原作を読んでいないので判りませんデス)。
余談ですが、本作のエリザベス・バンクスは相変わらずキャピトル風のケバい化粧で登場してくれますが、『崖っぷちの男』(2012年)の女刑事役とはエラい違いです(と云うか、同一人物に見えませんでした)。
原作からして、描写が丁寧かつ重厚らしいので、そこに中堅以上の名のある俳優を配役していくとこうなるのか。単なる脇役と云えども侮れぬ存在感を放っております。
スタンリー・トゥッチもハンガーゲームの司会者として再登場し、相変わらずハイテンションなトークをぶちかましてくれますし。
ドナルド・サザーランドの大統領も、単なる顔見せのラスボス的扱いだった前作に比べて、格段に出番が増えました。当初はあっと云う間に革命を起こされて倒されるヤラレ役かと思っていたのに、随分と周到に悪巧みをする場面があって、なかなか一筋縄ではいかない悪役になってきました。
まぁ、最初からこうするつもりでないと、ドナルド・サザーランドを配したりはしませんか(チョイ役でも風格ありますけど)。
前作でその年のハンガーゲームに優勝し、何やら体制批判の象徴に担ぎ上げられそうなジェニファー・ローレンスを始末しようと画策する悪の独裁者サザーランド大統領ですが、一度ゲームに勝利してしまったプレイヤーを粗末に扱うわけにも行かず、苦慮しております。
そこへ登場するのが、ゲームデザイナーのフィリップ・シーモア・ホフマン。前作には登場しなかったくせに、さも「前から存在していましたが、ナニカ」的に大きな顔をしているのはサスガです。
ドナルド・サザーランドとフィリップ・シーモア・ホフマンが対面で策を練る場面が、悪いヤツらが悪いことを企んでいる図にぴったりでちょっと笑えました。台詞が無くても、絶対に良い事を考えているように見えません(笑)。
そしてフィリップ・シーモア・ホフマンがひねり出したのが、一度勝利したプレイヤーを合法的に始末する妙案。
たまたま翌年はパネム建国の節目に当たる、第七五回ハンガーゲームが開催される年だった、と云うところから「三回目の四半世紀」には、歴代優勝者達を集めた特別なゲームを開催すると大統領の宣言が出される。
一〇〇周年ならまだキリがいいのに、七五周年と云うのがビミョーに半端で、こじつけぽいです(事実、こじつけですが)。
ジェニファー達の第一二区には、ジェニファーとジョシュ・ハッチャーソン以外にも、先代優勝者であるウディ・ハレルソンがいますが、ジェニファー&ジョッシュのペアで出場しなければ画にならないし、視聴者が許しませんわな(観ているこちらもですが)。
経験豊富なウディとしては、歴代優勝者同士のゲームが死闘になることは明かで、他のプレイヤーと同盟を組まねばすぐに餌食にされてしまうと忠告します。問題はどのチームと同盟を組むのか。
前作同様、ゲーム開始前のセレモニーや、トレーニングの場面を介して、今回のゲームの出場者達が紹介されていきます。ジェフリー・ライトもここで登場し、エレクトロニクスの仕掛けで優勝した頭脳派プレイヤーだと紹介される。
制作費がアップしたのか、前作よりもCG合成が派手でビジュアルが凝っています。
また、ハンガーゲームのフィールドも亜熱帯のジャングルと設定され(ハワイでロケされた)、前作よりも手の込んだ仕掛けが用意されています。
すべてはゲームデザイナーのフィリップ・シーモア・ホフマンのアイデアらしいですが、前作よりも予期せぬトラップがなかなかSFぽく、また隠された規則性に気付いた者に生存のチャンスがあるというミステリ的味付けがなかなか面白かったです。
とは云え、ハナシは終わらないんですけどね。
互いに命を奪い合うゲームなのに、捨て身でジェニファーを助けてくれるプレイヤーがいたりするのが不可解でしたが、すべてはゲーム開始当初から、ジェニファーには知らされていない密約が存在していたのだ──と云うところで、ゲーム自体が反体制派の仕掛けた策略だったのだと明かされる。
フィリップ・シーモア・ホフマンも実は……。
すべては大統領を欺く為の策だったのだと正体を明かし、いきなり善人になったぞ、この人。さすが名優を配役するだけのことはありますわ。印象がガラリと変わるのがお見事デス。
そしてグダグダになったハンガーゲームのフィールドから、ジェニファー達を救出し、革命派が集結しているらしい謎めいた「第一三区」に向かうところで、次回につづく。
劇中では、序盤から独裁国家パネムはキャピトルと一二の地方から成ると云われながら、一三番目の区は核により破壊されたなどと伏線が張られておりました。果たして第一三区とはどんなところなのか。
そして反旗を翻したことが明らかになり、ジェニファーの故郷、第一二区は爆撃されたとも云われ、家族の安否も判らぬまま、ジェニファー、ジョシュ、リアム・ヘムズワースの三角関係も持ち越しです(と云うか、今回もまたリアムの出番が少ないッ)。
このまま第三作の公開まで放置するのか。前作のようなキリのいいところで終わったりしないのが、連作中盤のツラいところです。きっと次もそうなるのでしょうねえ(四部作ですから)。
当初の予想に反してフランシス・ローレンス監督が頑張っているのが意外でしたが(もっとB級になるのかと思ってました)、頑張って完結させて戴きたいです。
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