映画版の唯一の不満は、主演がショーン・ビーンではなかったことですけど(ゲームでは父親が主人公だったのに)。
本作はその続編です。出来のよかったホラー映画の続編は楽しみな反面、心配なことも多くて、不安でありました。
何と云っても、監督が交代しているのが一番、不安。前作のクリストフ・ガンズ監督から、今度はマイケル・J・バセット監督に。バセット監督は本作の脚本も書いておられる(前作はロジャー・エイヴァリーでした)。
うーむ。ますます不安になる……。
配役を観る限り、前作と同じくショーン・ビーンや、ラダ・ミッチェルが登場するようで、今度こそ日本刀をゲットしたショーン・ビーンが灰の降る街で異形の者共をブッた斬ってくれる展開に……なりませんね。ゲームではそういうことも出来たのですが。
どうにも主人公が父親(ショーン・ビーン)ではなく、母親(ラダ・ミッチェル)でもなく、成長した娘である、と云うのも如何なものかと思うところでして。
前作では娘役は、超絶可愛いジョデル・フェルランドちゃんでしたが、本作ではアデレイド・クレメンスさん。『華麗なるギャツビー』(2013年)にも出演されておりましたが、やはりジョデルちゃんとは雰囲気違いますねえ。
他にも、前作と同じくデボラ・カーラ・アンガーが出演しておりますが、出番は少ないです。
代わってキャリー=アン・モス、マルコム・マクダウェルといった個性派の役者さんが出演しておられます。
それにしてもキャリー=アン・モスをお見かけするのも、久しぶりです。『マトリックス』(1999年)で一躍有名になったものの、あとはイマイチ印象に残る出演作がない。『ゾンビーノ』(2007年)に出演していたのを観たのが最後でした。サミュエル・L・ジャクソン主演の『4デイズ』(2010年)は未見でして……。
今回はカルト教団の教母の役です。なんかイロモノな役が多くないデスカ。
今回はゲーム版の第三作『サイレントヒル3』に基づく映画化であるそうで、そうなるともうゲーム版との比較が出来ません。私が知っているのは一作目だけでして……。
だから前作にも登場したレッド・ピラミッドも、『サイレントヒル2』からのクリーチャーなのですが、このへんはもう知らなくても構わないでしょう。『バイオハザード』の映画版も、後期のクリーチャーとか登場しますが、もう「そういうものだ」で納得するしかない。
まぁ、お馴染みのサイレンの音が鳴り響くと、異世界が現実を侵食していくと云う描写は健在ですから、雰囲気は維持されております。
さて、前作に於いて掠われた我が子を救おうと奮闘した母ローズ(ラダ・ミッチェル)ですが、続編では若干設定が変わっています。娘は助け出したものの、母は「あの街」に囚われてしまったことになっている。
夫ハリー(ショーン・ビーン)が鏡を見ると、妻の姿がそこに映り、危険が迫っている旨の警告を発し、娘を託すと云う描写が入りますが、実はラダ・ミッチェルの出番はこれしかありません。前作を観た者へのファンサービスなのでしょうが、ちょっと物足りないです。
そういえば、主人公になる娘の名前も変わっています。幾つもの偽名を名乗っていると云う設定だから、そこはいいか。本名である「シャロン」と名乗ってはいけないようで、本作では「ヘザー」で通しています。これがアデレイド・クレメンス。
主人公は父ハリーと共に、ひとつ所に落ち着かない流浪の生活を送っています。まるで何かから逃げ続けているような生活です。
毎夜のように不気味な街で得体の知れない男達に追われ、血まみれ、火だるまになる悪夢に悩まされている。高校に転校してもクラスに馴染めず、どうせまたすぐに転校するのだからと、友達付き合いもしない。極めて無愛想な少女です。
精神的に追い詰められているようで、ややもすると非現実的な悪夢の中に引き込まれてしまう。気がつくと、得体の知れない場所に居て、不気味な刺客が襲いかかってくる。
このあたりの現実と夢の境界が曖昧になっていく描写は、『エルム街の悪夢』のようです。この序盤の演出はなかなか見事でした。
不気味な刺客も、前作を観た者なら容易く予想は付きます。父と娘はサイレントヒルのカルト教団から逃げ続けていたのだ。
しかしこのあたりに続編であることの制約がつきまとっています。
新規に新しいストーリーには出来ないのも判りますし、前作の設定をどこかでおさらいしなければならないと云うのも判りますが……。
やたらと説明台詞を連発して語ってしまうと云うのも如何なものか。本作のマズいところは、中盤までに「何故、追われているのか」とか、「自分の身の上」といった事情を、かなりの部分、言葉で説明してしまうところでしょう。続編としては悪い作り方と云わざるを得ません。
ビジュアル面での文句は無いのですが、どうにも説明台詞が多すぎます。
CGとかは見事でして──ゲームのムービーみたいな場面もありますがオマージュだと思いたい──、3D上映を計算して作っているような構図も見受けられました(私が観たのは2D上映版でしたが、特に不都合はありませんでした)。
そしてカルト教団の魔の手は父の身に及び、まず父が拉致されてしまう。帰宅した主人公が目にしたものは、荒らされた室内と「サイレントヒルに来い」と云う壁に書かれたメッセージ。
主人公は意を決して、父を救う為にかつて逃げ出した「あの街」に帰ることを決意する。
実はショーン・ビーンの出番もここまででして、あとはひたすらアデレイドさんの冒険が語られます。ラストでもう一度、ショーン・ビーンは登場しますが、まったく活躍しないとはどういうことか。ゲームでは父ハリーはあんなに活躍するのに。
『白雪姫と鏡の女王』(2012年)並みにショーン・ビーンの出番が少ないのも、マイナス査定の一因です。
紆余曲折ありまして、再び呪われた街に足を踏み入れた主人公を、様々なクリーチャー達が襲って来ます。それはいいのですが……。
ここから先は、完全にお手軽なゲームのように進行します。目指すべきゴールはカルト教団の本部(そこに父が囚われている)。かつては街の教会の地下にあったが、今は移転して別の場所にある。
そこへ行くまでに、必要なアイテムを入手しなければならない。それを所持している者は、街のとある場所に幽閉されている。
事前に色々とオリエンテーションがありまして、スタートです。うーむ。あまり怖くないです。
序盤の悪夢のシーンの方が怖かったくらいです。サイレントヒルに到着してからは、驚くことはあれども、恐怖で先に進めないとか、不安になるような要素はありません。謎解きもナシ。
腹を括ったら、突撃あるのみ。
前作にも登場したダークなナースの皆さんも再登場してくれますが、やはり一度登場したクリーチャーは驚きがないので、あまり怖くないです。どちらかと云うと、新登場の合体マネキン人形クリーチャーの方が不気味でした。
劇中では、うっかりサイレントヒルに迷い込んでしまった一般人の犠牲者達とかも登場するのですが、誰一人として助けにならないと云うか、登場したらクリーチャーに襲われて御退場と云う、完全に「クリーチャー紹介要員」な扱いであります。もう少し、主人公と関わり合いにならないのか。
基本的に主人公一人だけの冒険行であると云うのはゲームの流れ的には正しいのでしょうが、あっさりし過ぎな感じがしました。
そして、まずは必要なアイテム所有者であるマルコム・マクダウェルの元へ。
さすがに個性派俳優は存在感がありますねえ。但し、この方も出番が少ない。アイテムの受け渡しが済むと、御退場です。
マルコム・マクダウェルなのにッ。なんか勿体ない。
そして異彩を放つのがレッド・ピラミッド。赤い三角兜の巨漢が、今回もまた大鉈を振るいまくりで人間をばっさばっさと切り刻んでくれるます。このデザインは好きデス。
でも、今回はちょっと扱いが違います。
そもそも意思疎通できず、正体不明で、発見されたら理由も判らず、ただ襲われると云うシチュエーションが怖かったのに、今回はレッド・ピラミッドが主人公の守護者になってしまいます。無敵のターミネーターも、味方になると頼もしいですが、それでいいのかと疑問に思わざるを得ません。
そりゃまあ、主人公の身の上はね、クリーチャーにしてみれば殺してしまうわけにはいかない設定ではありますが、これもまた本作から恐怖を減じてしまう一因になってしまいました。
やはり娘自身を主人公にするよりも、父ハリーが主役の方が良かったのに。
最後にカルト教団の本部である地下の聖地に突入し、教母キャリー=アン・モスと対決です。
最終決戦でラスボスが異形化すると云う、お約束な展開。キャリー=アン・モスが変身するという描写がちょっと驚きでした。しかも結構、エゲツないデザインに変身しちゃう。
そしてクライマックスは、キャリー=アン・モス対レッド・ピラミッドの怪獣対決。ホラー映画じゃないですねえ。別の意味で面白いからいいのですけど。
死闘の末、敵を倒し(ピラミッド頑張ったね)、カルト教団は滅び、サイレントヒルは解放される。降り続いていた灰は止み、閉ざされていた街は外界へとつながって……。
しかし助けられた父は同行しません。この街の何処かに妻がいるのだから、当然でしょう。娘だけを先に帰し、パパは単身でママを探しに行ってしまう。第三作確定な終わり方ですねえ。
また、主人公がサイレントヒルから脱出するのと入れ違いに、パトカーと囚人護送車らしき車列とすれ違うという描写も思わせぶりです。次なる災難は彼らが被ることになるのか。
いずれにせよ、次こそはショーン・ビーンが大活躍してくれるストーリーにして下さい。もうホラーでなくていいですから。
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